衆院選の投開票から一夜明けた１７日、自民党の安倍晋三総裁は政権移行作業を本格化させた。１７日午前、党本部で石破茂幹事長ら幹部と協議。２５日に党役員人事を行ったうえで、首相指名選挙を行う特別国会を２６日に開き、同日中に組閣する日程を確認した。閣僚人事では、内閣の要となる官房長官に菅義偉（すがよしひで）幹事長代行の起用を検討。麻生太郎元首相を副総理に起用するほか、党役員人事では石破氏の留任が固まった。安倍氏は１８日に公明党の山口那津男代表と会談し連立協議を進める。【野口武則、鈴木美穂】

　自民党の獲得議席は２９４で、連立を組む公明党と合わせると３２５。参院で否決された法案を再可決できる３分の２（３２０議席）を上回った。安倍氏は１７日午前、党本部で記者団に「予想以上の議席を得ることができたので、それだけ責任が重いと思う」と語り、表情を引き締めた。同日午後、記者会見し、政権移行へ向けた考え方を説明する。

　連立協議は消費増税の前提となる経済対策が中心となる見通し。大規模な１２年度補正予算案と１３年度予算案の編成方針などを合意文書にまとめる。自民党が衆院選公約に掲げた憲法への「国防軍」明記や集団的自衛権の行使容認については、公明党が反発しているため、連立合意には盛り込まない方向だ。

　石破氏は１７日午前のＮＨＫの番組で「まず景気対策だ。経済をどうやって成長軌道に乗せるかに全力を尽くすことから始める」と強調した。公明党の山口代表は党本部で記者会見し「憲法の問題も含めて自公で国民の期待に応える議論をしていくことが重要だ。優先順位を間違えないようにやるべきだ」と「安倍カラー」の封印を求めた。

　自公両党で再可決可能な議席を得たとはいえ、野党が多数を占める「ねじれ国会」が続く。政権運営を安定させるため民主党や日本維新の会などと政策ごとに協力する部分（パーシャル）連合を模索する方針。菅氏は横浜市で記者団に「私たちの考え方に同意していただけるところであれば、どことでも連携するべきだ」と語った。山口氏も「いろんな政党、会派の理解を得られるような努力が大事だ」と述べた。

　０９年衆院選で３０８議席を得た民主党が１０年参院選で大敗した例もあり、安倍氏らは来夏の参院選までは安全運転に徹する構えだ。