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くらし☆解説 「男らしく、女らしくは時代遅れ?」2012年12月25日 (火)
出石 直 解説委員
生放送でお伝えしている「くらし☆解説」岩渕梢です。きょうのタイトルは「男らしく、女らしくは時代遅れ?」、担当は出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1、郷ひろみさんの懐かしい曲が流れてきましたが、「男らしく、女らしくはもう時代遅れ」って、どういうことなのでしょうか?
A1、昔、流行ったこの歌詞も「時代遅れ」と言われてしまうかも知れないというお話しです。
こちら、スウェーデンのおもちゃ販売会社が、ことしのクリスマス向けに作成したカタログなのです。ことしからある変更が行われました。どんな変更だと思いますか?
Q2、・・・???
A2、変更前と変更後のカタログと較べてみましょう。
Q3、モデルガンを構えているのがこちらは男の子ですが、変更後は女の子になっていますね。
A3、その通りです。それからこちらの写真も、女の子の服の色がピンクから水色に変わっています。
Q4、なぜこんな変更をしたのですか?
A4、「モデルガンで遊ぶのは男の子、女の子の服はピンクという考え方はもう古い」というのです。このカタログを作成した会社では、ことしのカタログから「男の子向け、女の子向け」といった区別をしないことを決めたのです。
他のページをめくってみますと、赤ちゃんにミルクをあげる男の子、女の子と一緒に台所に立つ男の子、こちらはスパイでしょうか、変更前は男の子だったのが新しいカタログでは女の子になっています。こちら美容師さんのおもちゃでは、逆に変更前のバージョンにはない男の子が加わっています。
150ページ足らずのカタログで10の変更点がみつかりました。
Q5、確かに男性の美容師さんもたくさんいますし、男の子も女の子も同じに扱おうという訳ですね。
A5、この会社では、「男女の役割についての扱いが保守的過ぎる」という指摘を外部から受けたそうです。社内で検討した結果、男の子向けのおもちゃ、女の子向けのおもちゃというのは、社会の実態に即していないという結論に達したということです。「おままごと遊びをしたい男の子もいるはずだ」というのです。
「どちらが正しいとか、こうすべきだということではなく、実際の社会で男女の差がなくなっているので、社会の実態に合わせてカタログの編集方針を見直しただけだと」と説明しています。
Q6、なかなか思い切った決断ですが、反響はどうだったのでしょうか。
A6、発表から一か月間で、およそ100件の反響や問い合わせが寄せられたそうです。
会社に寄せられた意見の中には「男女に違いがないと本当に思っているのか」「極端なフェミニズムには反対だ」といった否定的な反応もあったそうですが、「うちの娘はいつも男の子向けのおもちゃで遊んでいます」「英断に感謝します」といった肯定的な意見が7割ほどだったということです。
ちなみに日本のカタログには「男の子向け」「女の子向け」といった記載がありますが、メーカーに聞いたところ「あくまでもお客さんが買い物をする時の参考にしてもらうための記載で、もちろん男の子向けは男の子しか駄目という意味ではない」とのことでした。
Q7、日本とスウェーデンとではお国柄も違いますしね。
A7、スウェーデンは、世界でもっとも女性の社会進出が進んでいる国のひとつです。
最近、発表された「男女平等ランキング」ではアイスランド、フィンランド、ノルウェーに次いで世界4位、ちなみに日本は101位でした。(出典:世界経済フォーラム「男女格差報告2012」)
女性が働きやすい環境、制度も整っています。
例えば育児休暇を取得する場合、収入の8割が1年半近くにわたって公費で保障されます。女性の8割近くが働いています。(生産年齢労働力率「国際労働比較2012」スウェーデン76.7%、日本は63.0%)
349人いる国会議員のうち150人、43%は女性、閣僚に至っては24人のうち13人、半数以上が女性で占められています。
Q8、女性が働くことがまったく珍しくないというわけですね。
A8、職場でも家庭でも、男性だから、女性だからといった役割の違いがない、そこで社会の実態に合わせておもちゃのカタログも見直したということなのです。
Q9、スウェーデンに較べると日本は遅れているという印象も受けますが。
A9、遅れているという表現が適切かどうかわかりませんが、例えば最近発表された内閣府の調査を見ますと、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方に半数以上(51.6%)が「賛成」「どちらかと言えば賛成」、「反対」「どちらかと言えば反対」と答えた人は半分以下(45.1%)でした。(「男女共同参画社会に関する世論調査」内閣府2012)
男女の役割分担の意識という点では、日本とスウェーデンとではかなりの違いがあるようです。
Q10、ただ日本でも少しずつ変わってきていますよね。
A10、そうだと思います。一昔前までは、トラックやバスの運転手さんはほとんど男性でしたが、今では女性のドライバーも珍しくありません。男の職場、女の仕事という区別は、以前に比べれば少なくなってきたように思います。
仕事だけではありません。私が子供の頃は、サッカーをする女の子はいませんでした。
もしいたら「おてんば」とか「男勝り」と言われていたでしょう。しかし今やナデシコジャパンは、日本の英雄です。
ちょっと調べてみたのですが、ことしのロンドンオリンピックと20年前のバルセロナオリンピック、水泳の岩崎恭子さんが金メダル、マラソンで有森裕子さんが銀メダルを取った大会ですが、この2つの大会を較べてみますと、競技数はロンドン大会が26、バルセロナ大会が25でほとんど同じです。ただバルセロナ大会では、女子が出場できない競技が6つもありました。ボクシング、サッカー、ウエイトリフティング、レスリング、近代5種、野球の6つです。しかしロンドン大会ではゼロ。スポーツの世界でも、男のスポーツ、女のスポーツという区別はなくなってきています。
Q11、日本でも最近、育メンとか、育児休暇を取る男性も増えてきましたよね。
A11、スウェーデンほどではないにしても、日本の社会も変化してきているのだと思います。個人的には、男は男らしく、女は女らしく、という思いもあるのですが、もしかしたら「そんな考えはもう古い」という時代が意外に早くやってくるかも知れませんね。