歓喜　失望　怒り…２０１２年グラ「１０大ニュース」

　充実の陣容でタイトルを狙いながら失速した名古屋グランパスの２０１２年。歓喜、失望、怒り…。今季を彩った名シーンを、「１０大ニュース」と題して振り返る。

　（１）３年ぶり「無冠」

　これほど負けるとは、ほとんどの人が予想できなかっただろう。Ｊリーグでは１０年優勝、１１年も勝ち点１差の２位。タレントをそろえた今季も開幕前は優勝候補最右翼の呼び声高かったものの、故障者の続出や大一番での勝負弱さが響いて秋口には優勝争いから脱落。終わってみれば７位に沈んだ。

　アジア・チャンピオンズリーグ（ＡＣＬ）、ナビスコカップ、天皇杯でも早々に敗退し、３年ぶり無冠（昨季は富士ゼロックス・スーパーカップ優勝）の屈辱。来シーズンはタイトル奪回が最重要テーマになる。

　（２）永井がロンドンで大ブレーク

　和製スピードスター、永井が世界を驚かせた。ロンドン五輪では初戦スペイン戦で相手を退場に追い込むなどして金星奪取の原動力になり、続くモロッコ戦では８強入りを決める決勝ゴール。日本を４位に導いた。

　グランパスでも一皮むけた活躍を見せた。６月１６日の鹿島戦からは４試合連続で６ゴールを挙げる離れ業。チームトップの１０得点をマークし、新エースへ名乗りを上げた。

　（３）楢崎が５００試合出場の金字塔

　楢崎が名実ともにレジェンドの域に到達した。１１月１７日の磐田戦で、Ｊ１通算５００試合出場を達成。甲府の伊東輝悦（５１１試合）に続く、史上２人目の快挙だ。

　７月に左ひざを手術するなど酷使してきた体はボロボロだが、３６歳になってもプレーの安定感はリーグ随一。試合後はチームメートから胴上げされ、「みんなが喜んでくれたのがうれしかった」と照れ笑いした。

　（４）２０周年記念試合で赤っ恥

　クラブが「２０周年記念試合」と銘打ち、黒の限定ユニホームを着けて臨んだ８月１８日のＧ大阪戦が、今季のワーストゲームになった。０−５。５点差以上の負けは０８年のストイコビッチ監督就任以来初めて。最多３万３５４人で埋まった豊田スタジアムに大ブーイングが鳴り響いた。

　（５）闘莉王がＦＷで大爆発

　８月４日の神戸戦は「闘莉王劇場」と化した。頭、右足、左足−。ＤＦにもかかわらず、慣れないＦＷで起用されて４得点。並外れたサッカーセンスを見せつけた。闘莉王は秋以降、ＦＷに定着。ゴール数はチーム２位の「９」に達した。ケネディ欠場にともなう苦肉の策だったが、苦しいチームを救った。

　（６）新星・田口が台頭

　昨季までＪ１出場４試合にすぎなかった４年目の田口が、今季最大の成長株になった。中村、磯村ら実績のあるボランチの故障離脱を受け、５月１９日の仙台戦でプロ初先発。その後スタメンに定着した。ミスの少ないパスさばきは、ストイコビッチ監督から「シャビ（バルセロナ）だ」と絶賛されている。

　（７）ピクシーが札幌で退席処分

　２０１２年最大のターニングポイントは７月２８日の札幌戦だった。最下位を独走する相手に、後半ロスタイムの被弾で敗れた。後半４４分にはオフサイドの判定をめぐって猛抗議したストイコビッチ監督が退席処分を言い渡されていた。ピクシーがピッチを去った直後に悲劇が起き、そして追撃ムードがしぼんだ。

　（８）大学ナンバーワンＤＦ牟田を獲得

　８月３１日、福岡大のＤＦ牟田から入団を希望する連絡を受けると、久米ＧＭが喜びで声を震わせた。「牟田君は日本の宝だ」。柏、磐田などと大争奪戦を繰り広げた末のグランパス入りだった。技術の高さに加え、リーダーシップも発揮できる。将来のチームリーダーとして期待できる逸材だ。

　（９）仙台でサポーター暴走

　杜（もり）の都でサポーターの堪忍袋の緒が切れた。５月１９日の仙台戦に０−４で大敗すると、約３０人がスタジアム出口を封鎖。グランパスの選手バスを事実上“監禁”する異例の事態に。関係者の懸命の説得でようやく騒ぎは沈静化した。今季は４点差以上での敗戦が３度。ふがいない試合も目立った。

　（１０）グラ一筋１１年の吉村退団

　スタンドからの「ケイジ」コールに、寡黙な仕事人の涙腺が緩んだ。０２年の入団以来、グランパス一筋で１１年間プレー。契約満了に伴い退団が決まった吉村が１２月２３日の天皇杯・横浜Ｍ戦でサポーターに最後の勇姿を見せた。「１１年間支えてもらい、本当に幸せでした」と感謝の言葉を残した。