こうした動きを受けて、ゼネコン株もじわりと値を上げている。当のゼネコン各社は、「どの程度の復興需要があるのか、まだわからない」として、復興関連は業績予想に盛り込んでいないが、ひと足先に市場のほうが反応し始めたかたちだ。
原発関連工事も巨額に
長期工事で潤う業界
本格的な処理に動き始めた宮城・岩手両県と比べ、がれき処理そのものが遅れているのが福島県だ。原発事故による放射能汚染問題を抱えているためだ。
しかし、原発処理にもゼネコンが深く関与している。原発敷地内のがれきを集めたり、放射性物質の飛散を防ぐ建屋カバーを設置したりといった特殊な技術を要する工事を数多く受注しているのだ。
ただ、被害の拡大に伴って一刻を争う状況だったため、きちんとした契約書も交わさぬまま工事が進められており、これまでの工事費もいまだに支払われていない。
11月にも支払われるとの観測が流れているが、本当に満額支払われるのか。「もし減額されたら困る」との声も漏れてくる。
こうした原発関連工事は今後も続きそう。当面、大きなものとなりそうなのが、放射性物質が漏れるのを防ぐ遮水壁建設だ。東京電力に指名されて技術提案を行っているゼネコンは6社。「500億~1000億円規模の工事になる」(関係者)といわれている。
最終的には、廃炉まで工事は続くことになり、一説には、こちらも1兆円近い金額になるのではないかとささやかれる。
国の公共事業関連費は、1998年度の14兆9000億円をピークに、現在は半減し、ゼネコン各社の業績を直撃した。
ゼネコンは、民間企業の建設需要や海外進出にシフトするなどさまざまな打開策を講じているが、いずれも成功したとは言いがたい。需要が伸びない国内では、過当競争を繰り広げるよりほかなく、疲労感は高まるばかりだった。
そこへ降ってわいたのが震災に伴う復興需要。多くの犠牲者の上に立つ特需だけに、声高に「儲かる」とは言いにくい。
だが、がれき処理や原発関連工事はほんの走りにすぎず、道路や港湾の復旧、そして街の再建など、今後、5~10年以上もの長いスパンで公共工事は発生し続ける。
長期間にわたる工事になるため、業績のV字回復には結び付かないと見られるが、それでもしばらくのあいだ、業界を潤すことだけは間違いない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)