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ここに注目! 「原発大国フランスの廃炉」2012年12月19日 (水)
広瀬 公巳 解説委員
続いてここに注目です。
日本よりも多い58基の原子炉があるフランスで、
今後のエネルギー政策を決める「国民的議論」が進められています。
広瀬解説委員です。
Q フランスでは何が議論されているのでしょうか。
原子力への依存度を下げていく具体的な方策です。
フランスは原発大国なのですが、
今焦点の一つになっているのは原子力発電所の閉鎖、廃炉です。
オランド大統領はドイツとの国境近くにあるフェッセンハイムの二基の原子炉を
2016年の末までに廃炉にすることにしました。
Q どうして廃炉にしようとしているんですか。
老朽化の影響が心配されるので、環境政党の主張を取り入れました。
しかし、この原発。古くても大丈夫だという指摘もあるんです。
フランスの原子力安全規制当局は、耐震補強など手当を行うことで、
さらに今後10年間、運転できるという判断を示しています。
なぜ廃炉にしなければいけないのか。
電力会社や労働組合側から疑問の声があがっています。
Q 実際に廃炉にするとなると様々な意見が出てくるんですね。
こうしたエネルギー政策はフランスでも微妙に意見が分かれます。
そこでオランド大統領は、電力業界、労働組合、環境団体、消費者など
様々な立場の人が参加する討論会をスタートさせました。
廃炉を含むエネルギー政策についての合意をまとめる考えです。
先週、二回目の代表者会合があり、
年明けからは全国規模の討論や地域の市民フォーラムなどの場で
段階的に議論を重ね来年中に法案にまとめる予定です。
Q 議論が過熱して意見の対立が深まることにならないのですか。
フランスではこれまでにもエネルギーや環境関連の重要法案が
同じような「国民的議論」を踏まえたうえで成立しています。
時間をかけて冷静に、電力業界の専門家の意見もよく聞くという方法で
新しいアイデアも生まれています。
たとえば今回の廃炉については大統領自身が
今後の国際的な廃炉ビジネスにつなげたいという提案を行っています。
フランスは、日本より地震が少なく、陸続きの隣国に電気を売ることができるなど、
日本と違った事情がありますが、
議論の結果を合意にしていくノウハウも、日本とちょっと違うところかもしれません。