中国人民解放軍の戦略ミサイル軍である第二砲兵隊が保有する弾道ミサイルである「東風21型」と長距離巡航ミサイルである「東海10型」ならびに「長剣10型」は、全て日本全土を射程圏に収めている。それらのミサイルは、満州東部地域あるいは山東省の沿海地域に展開する移動式地上発射装置(TEL)から発射される。東風21型はおよそ100基、東海10型・長剣10型は合わせておよそ600基が配備されており、それらの数は急増しつつある。
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第二砲兵隊だけでなく、中国空軍は満州東部地域上空や上海沖上空のミサイル爆撃機から発射する「長剣10A型」やその改良型の長距離巡航ミサイルで日本全土を攻撃することができる。同様に、渤海湾や山東半島沿岸海域や上海沖など中国海軍にとって安全な海域に位置する駆逐艦からも、艦上発射バージョンの「東海10型」で日本全土を射程圏に収めている。さらに、中国海軍の最新鋭攻撃原子力潜水艦は、西太平洋に進出して日本列島を太平洋側から長距離巡航ミサイルで攻撃する能力を持っている。
北朝鮮の対日攻撃用弾道ミサイルと違い、中国の対日攻撃用弾道ミサイル・長距離巡航ミサイルの性能は格段に優れている。それらの命中精度だけを見ても東風21型(最新のDF-21C)のCEPは30~40メートルであり、東海10型や長剣10型といった長距離巡航ミサイルのCEPは10メートルと推定されている(ちなみにアメリカ軍やイギリス軍が配備しているトマホーク長距離巡航ミサイルのCEPは10メートルである)。
したがって、中国軍は長射程ミサイルを用いて攻撃目標に対する精密攻撃を実施することが可能であり、例えば原発の制御施設、重要変電所、石油精製所のタンク、防衛省本庁舎A棟、首相官邸などをピンポイントで攻撃することが可能である。
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「戦わずして勝つ」ための最適のツールが長射程ミサイル
北朝鮮と違い日本は中国とは国交もあるし、貿易や文化交流もより盛んに行われてはいるが、国家間武力紛争の最大の要因となり得る領土・領海問題を抱えている。そして、民主党政権による誤った外交的対応のために、尖閣紛争解決のために中国共産党政府が軍事力を何らかの形で用いかねないレベルへと緊張度は高まっている。
軍事力を用いるといっても、軍事攻撃が即座に開始されるわけではない。軍事力の行使と戦闘を、そして戦争と戦闘を混同してはならない。軍事力を恫喝の道具として用いて日本政府や国民を脅迫し、中国政府の要求を日本側に無理やり受諾させるのも、軍事力の行使である。
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