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■「安くて良い品を 激戦区! 老舗スーパーの“チラシ”」 2012/09/07 放送

 日々の暮らしの中で、安くて良い品を求めて買い物をするスーパーマーケット。

 その舞台裏では、連日、生き残りをかけた熾烈な戦いが繰り広げられています。

 同業者が立ち並ぶ激戦区で、この夏、全面改装に踏み切ったある老舗スーパー。

 こだわったのは、1枚の折り込みチラシでした。




 ひとたび売り場に入れば、この男の視線はより鋭さを増す。

 今井史男。

 各店舗の運営を取り仕切る、30年のベテランだ。

 <「いそかわ」店舗運営部 今井史男さん)
 「整理整頓!」
 「サンマないよ」
 <従業員>
 「足します!」

 創業52年のスーパー「いそかわ」。

 奈良と京都に11店舗を展開し、特に魚や肉など食料品の新鮮さをウリにしている。

 

 <客>
 「品揃えもたくさんあるし、野菜がいつもキレイ」
 <客>
 「来れば何かが安い」

 だが最近、今井の表情は冴えない。

 思うように、売上げが伸びないからだ。

 <今井史男さん>
 「きょう、ちょっと厳しいね」

 この日も、店長から耳の痛い報告。

 その理由は…

 実はこの「押熊店」、周辺はスーパーの激戦区なのだ。

 大手や安さに特化した店など、徒歩数分圏内に3店舗。

 さらに車で5分程度の場所なら、合わせて8つのライバル店がひしめきあっている。

 

 <今井史男さん>
 「ここ(大手スーパーの建設現場)ですわ、『なんでくるんやー』って感じですねえ」

 来年には、新たに大手スーパーが進出してくる。

 <今井史男さん>
 「厳しいですよ、非常に厳しいです。勝つか負けるかですからね」

 このままでは、生き残れないかもしれない…

 募る危機感。

 <部長>
 「それぞれ、部門の顔をつくりたい」

 最終的に、「押熊店」をリニューアルすることが決まった。

 リニューアルの肝に据えたのは、売り場の大掛かりな配置転換。

 スーパーの改装を、いくつも手がけてきたデザイン会社に知恵を借り、弱点を洗い出していく。

 「押熊店」の売り場の見取り図。

 入り口を入ってすぐ、1番目立つ場所に野菜。

 その左に惣菜スペースが並ぶ。

 続いて、朝、水揚げされたばかりの水産コーナーに・・・

 肉・・・ 酒ときて、中央に乳製品や日用品が並ぶ。

 中でも苦戦していたのが、惣菜だ。

 <今井史男さん>
 「実は惣菜の売り上げが他店舗より低いんですよ、この店。大きい店なのに・・・」
 <プログレスデザイン 西川隆さん>
 「果物のにおいと惣菜の油のにおいが、だぶってしまってる。いいもの(強い商品)が2つ並ぶとお客は見逃してしまう」

 どうやら購入の優先度が高い「野菜」に負けて、「惣菜」の存在が見落とされてしまっているようだ。

 さらに…

 <今井史男さん>
 「ちょっとここまで足を伸ばしてもらう、という機会がなかなか少ない」

 肉コーナーを見た客は、そのままレジへ向かってしまうため、酒や乳製品の売り場には客が流れていかないのだという。

 


 こうした弱点をどう克服するのか。

 1か月の改装期間に入った。

 リニューアルオープンまで15日。

 <今井史男さん>
 「壁の色がつくと、またガラッと雰囲気、変わると思います」

 店内は解体され、床の張り替えなどが始まる。

 これまでなかった魚の対面販売スペースなど、売り場の原型が少しずつ見えてきた。

 リニューアルオープンまで7日。

 そして、リニューアルのもう1つの要がチラシ。

 この地域はファミリー世帯が多く、折り込みチラシが抜群の効果を発揮するという。

 チラシのポイントはとにかく見やすく、見た人が商品をイメージできること。

 <今井史男さん>
 「25日、鰹のたたきの写真って、もうちょっと・・・ キレイなのに代えてほしいな」
 「『トマト約700グラム』というのをやめて、5〜6個に」

 国産ブランド志向の客を見据えて…。

 <今井史男さん>
 「変えます?」
 <部長>
 「これ上下、逆にしようか」

 豚肉は、78円のカナダ産と98円の国産を入れ替えることに。

 

 人の目線と関心は、左上から右下へ流れるという法則があるからだという。

 <「いそかわ」 部長>
 「『押熊店』の改装オープンチラシなんで。(所得が)上の方の人も多いんで、国産重視の方がいいんではないかな、と」

 ターゲットごとに練られた緻密な戦略。

 チラシが完成した。

 色が気になった鰹の切り身は、鮮やかな赤に。

 トマトは、個数で表示した。

 そして豚肉は、国産を求める客の目にとまる位置に変えられた。

 果たしてチラシ戦略は功を奏するのか。
 
 新装開店の日が近づいてきた。


 リニューアルオープンを目前に控え、店の運営を取り仕切る今井の仕事も、佳境を迎えていた。

 この2か月、ほぼ休みなし。

 ここまで成功にこだわるのには、ある過去のつらい経験があった。

 「いそかわ」は7年前、50億円の負債を抱えて破綻した。

 中堅スーパーの子会社として再建の道を歩み始めているが、家族を抱え、苦悩した記憶が「2度と繰り返すまい」と今井を仕事に駆り立てる。

 <今井史男さん>
 「売り上げも伸ばして、収益も上げて。存続には成長が絶対必要だと思いますね。今回のリニューアルも、そのためのリニューアル」


 

 そんな今井を支えているのが、かつて、「いそかわ」で働いていた妻のとのよさんだ。

 <妻 今井とのよさん>
 「仕事中心というか・・・ 本気で成功させるために、がんばってるんやなーということは感じましたけど」


 いよいよ、リニューアル当日。

 <従業員たちに挨拶する今井史男さん>
 ますます発展させて、大きな『押熊店』となるようがんばっていきたいと思いますので、よろしくお願いします」
 <従業員たち>
 「よろしくお願いします」

 店の外には、開店を待ちわびる長蛇の列。

 そして、その時が来た。

 活気づく店内。

 改装で店はどう変わったのか。

 がらりと変わった外装は…

 少し上質な雰囲気に。

 野菜に押されていた惣菜は…

 別の場所に新たにコーナーが設けられ、ゆったり選べるようになった。

 その結果、オープンから2週間、売り上げは改装前の1.5倍に跳ね上がったという。

 

 また野菜コーナーも地場野菜や常時20種類以上のトマトをそろえるなど、旬の果物とともに人気を集めている。

 問題の人けがなかった、最終エリアは…

 奥に惣菜コーナーが入ったことで人の流れが復活し、店全体を見て回る環境が整った。

 <客>
 「なんか雰囲気が変わりました。すごっく買いやすくて見やすくなりました」
 <客>
 「お魚が1匹ずつ並んでいて、すごいなと思って」

 と、上々の手応え。

 中でも多かったのが・・・

 <客>
 「広くなったような気がしましたけど」
 <客>
 「なんか広くなったんですかね」

 それどころか、逆に売り場面積は10坪も狭くなっているのだ。

 開店から2週間、売り上げは3割増しと目標を大幅に上回っている。

 <今井史男さん>
 「心配してたけど、たくさんのお客様にいらして頂いて、うれしくて。ほっとしてます」

 時代の空気を読み、いかに客のニーズにこたえるのか。

 戦国時代を迎えたスーパー業界。

 成功への険しい道のりが続いていく。




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