中学1年の時に受けたいじめが原因で高校2年の高橋美桜子(みおこ)さん(当時16歳)が自殺したとして、母典子さん(54)=愛知県刈谷市=が学校法人市邨(いちむら)学園(名古屋市瑞穂区)などを相手取り、慰謝料など約4250万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が25日、名古屋高裁(林道春裁判長)であった。林裁判長は、いじめと自殺の因果関係を認めて学園側に約1491万円の支払いを命じた1審の名古屋地裁判決を変更、約619万円に減額した。
1審判決は「学校側は、いじめを放置すれば自殺を招く恐れがあることを予見できた」としたが、林裁判長は美桜子さんが中学1年修了時に転校し、3年5カ月後に自殺していることから、「その間にさまざまな出来事や人間関係があった。高校の同級生とのトラブルや教諭との人間関係、進級問題による精神的ストレスが、自殺の原因と推認される」と判断した。
美桜子さんは解離性障害などと診断されており、林裁判長は1審同様、いじめと障害の因果関係は認定。そのうえで、自殺当時の症状について「中学で受けたいじめと似た状況になった時に、過剰に反応する程度に過ぎなかった」として、障害が自殺の原因とはならないと指摘した。
美桜子さんは02年4月、同学園が運営する名古屋経済大市邨中に入学。同級生から靴に画びょうを入れられたり、暴言を浴びせられたりするなどのいじめを受け、03年3月に転校した。06年8月、住んでいたマンションから飛び降りて死亡した。
市邨学園は「判決を重く受け止め、真摯(しんし)に対応する。生徒間のトラブル発見、防止に努める」とのコメントを出した。
◇母「1審判決から後退し残念」
高裁の判決後に高橋さんは記者会見し、「1審判決から後退したという気持ちで、残念」と、目を潤ませながら話した。
高橋さんは、判決が学校側がいじめを放置した責任に言及したことは評価しながらも「いじめがなければ娘が亡くなることはなかった。娘の声が高裁に届かなかった」と悔しさをにじませた。
現在は国や愛知県に対し、美桜子さんへのいじめの実態を解明する第三者調査委員会の設置を求めているという。高橋さんは、私立学校への行政側の指導が不足していることが問題と指摘し、「私立でも公立でも、子どもに救いの手がさしのべられる仕組みを作ってほしい」と訴えた。【山口知】