自分の被爆体験を元にした漫画「はだしのゲン」で知られ、原爆の恐ろしさを伝え続けた漫画家・中沢啓治(なかざわ・けいじ)さんが19日、肺がんのため広島市内の病院で死去した。73歳だった。21日に家族葬を執り行った。
広島市出身。6歳の時、爆心地から1.3キロの同市内の国民学校前で被爆。父と姉、弟を失い、直後に生まれた妹もまもなく亡くなった。中学卒業後、漫画家を志して上京。1963年のデビュー当初は原爆体験を秘していたが、66年の母の死への憤りをきっかけに、初めて原爆を題材にした作品「黒い雨にうたれて」を68年に発表した。
73年に、週刊少年ジャンプ(集英社)に連載を始めた自伝的作品「はだしのゲン」は、絵本なども含めて1千万部を超すベストセラーになり、18カ国語に翻訳された。今年度からは、広島市の平和教育の教材に使われている。