後半ロスタイム、田中明のゴールが決まり、抱き合って喜ぶ澤(中)、川澄(右)らINAC神戸イレブン=NACK5スタジアム大宮で
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◇皇后杯<決勝> INAC神戸1−0千葉
サッカーの第34回皇后杯全日本女子選手権は24日、さいたま市のNACK5スタジアム大宮で決勝を行い、INAC神戸が千葉を1−0で下して3大会連続3度目の優勝を飾った。白熱した展開が続いたが、後半ロスタイムにMF澤穂希(34)の折り返しからの混戦でDF田中明日菜(24)が押し込んで決勝点を挙げた。INAC神戸は今大会から授与されることになった皇后杯を手にした。
後半ロスタイム。おそらくラストプレーとなるCKを前に、MF澤は田中明に耳打ちした。「絶対にここで決めるよ。決めろ!」。胸の内には嫌な予感があった。「最悪のことも、PK戦も頭によぎった」と言う。女王の直感。だから執念でボールをつないだ。
中島の左CKは相手DFの頭に当たったが、ファーサイドにいた澤の元へとボールは届いた。澤がなんとか中央へと折り返す。待ち受けた高瀬のシュートははね返されたが、そこを押し込んだのが田中明だった。ロスタイムの目安2分終了まで残り13秒でのゴール。澤もわれを忘れ、歓喜の輪に飛び込んだ。
皇后杯はフルメンバーで戦えない中、激闘が続いた。「1年の疲労がすごくある。最後は全身、足にきていた。この1週間くらいは(疲労の)蓄積があった」。そこに千葉のこれまでにない激しいプレスが加わり、試合中は体が悲鳴を上げていた。
激動の一年だった。年明け早々に右ふくらはぎ肉離れ。さらにサッカー人生最大級のピンチとなる「良性発作性頭位めまい症」を患った。しかし、その後は驚異的回復を見せ、ロンドン五輪での銀メダルに貢献。カップ戦こそ逃したが、リーグ連覇、今大会も3連覇し、初の皇后杯も手にした。
去りゆく星川監督へも「いいクリスマスプレゼントになったな」という今年の有終勝利に、“有終アシスト”。「最後にこうやって優勝できて本当にいい1年でした」。イブの日に、澤が最高の笑顔で1年を締めくくった。 (島田明)
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