
夕張炭田のCBM採掘現場。何もないこの土地の下に、世界有数の資源が眠っている
北海道夕張市。かつては炭鉱の街として栄えたが、安い海外炭との競争や石油へのエネルギー転換の影響で次第に衰退し、’90年にすべての炭鉱が閉山。基幹産業を失った市は、’07年に財政破綻した。
そんな「終わった」はずの炭鉱に、世界から注目されている資源が眠っているという。北海道大学大学院工学研究科で資源システムを研究する大賀光太郎助教は次のように説明する。
「その資源とは、炭層メタン(CBM=コール・ベッド・メタン)です。石炭は、木材から亜炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、無煙炭と石炭化が進行していく過程でメタンガスを生成します。石炭には無数の小さな穴があり、その中にメタンガスが詰まっています。昔はよく炭坑内で爆発がありましたが、それは石炭の中に詰まったメタンガスが原因でした。このやっかいなガスを、資源として取り出す技術が確立されているのです」
現在、日本国内には275億t、北海道だけでも140億t以上の石炭が存在するという。これは日本の年間石炭輸入量の100倍以上だ。この石炭層を目がけて縦に坑井を掘削し、鋼鉄パイプを通してガスを噴出させる。経済的な面で石炭採掘が難しくなった鉱床でも、この方法で天然ガスが採取できるというのだ。

CBMを取り出すポンプ。二酸化炭素を送り込むことで効率がアップする
「もともとこの技術は、炭鉱での爆発事故を防ぐための『ガス抜き』から始まったものです。かつての日本は、このガス抜き利用で世界のトップを走っていたのです。私の調査では、夕張炭鉱を含む石狩炭田だけで、約400億~800億m3ものCBMがあると推定されます。しかも、1t当たりのガス包蔵量が、オーストラリアなどCBM先進国の炭層の1.3~2.5倍。非常に有望な炭田なんです。米国やオーストらリアでは、すでに採掘・利用技術が確立しています。CBMはシェールガスよりも浅い層で採掘でき、環境破壊も少ない資源です。外国のCBM研究者からは『日本ではなぜ国を挙げて採掘しないのか』と不思議がられています」
中国も’15年までに年採掘量を210億m3にすると表明している。現在、日本国内で生産している天然ガスは年間37億m3。石狩炭田だけでも11~22年分を賄えるということになる。
「CBM利用には、さらに利点があります。まず、在来型ガス田が通常数千mを掘らなければならないのに対し、CBMは300~1000mと浅いため、掘削が容易であること。そして、燃焼時の二酸化炭素や窒素酸化物排出量が石油・石炭よりも少なく、硫黄酸化物はまったく出さないということです。そのうえ、排出された二酸化炭素を炭層に注入して固定化できる。温暖化対策にもなるのです」
CBMはガスとしてそのまま使えるほか、発電にも使える。CBMを燃焼させて発電し、排出された二酸化炭素に圧力をかけて炭層に送ることで、取り出されるCBMの量もより多くなる。送り込まれた二酸化炭素は炭層に吸着し、固定化される。つまり、現地に天然ガス発電所を造ってしまえば、二酸化炭素を排出しない火力発電が可能となるのだ。夕張市のような基幹産業を失ってしまった自治体にとっても、雇用や税収を生み出す救世主となる。
⇒【図解】はこちら http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=357617
週刊SPA!12/25発売号「2013年日本は資源国になる!!」では、CBM以外にも実用化目前の海水から取り出すマグネシウムを利用した発電まで、化石燃料以外にも世界的に注目を集める”資源”をクローズアップ。日本の環境でこそ得られる「資源」について紹介している。 <取材・文/樫田秀樹 志葉玲 北村土龍>