卓上四季
アベノミクス
一万円札の肖像が聖徳太子から福沢諭吉に切り替わったのは1984年。30年近く前になる。そのころからだろうか。給料が銀行振り込みになり、お札を拝む機会が減ってきたのは▼不況の昨今は収入の目減りでますます縁遠い。あす首相に返り咲く安倍晋三さんはそんな時代の救世主になれるのか。選挙前の街頭演説で、デフレ対策について「(日銀の)輪転機をぐるぐる回してお札を刷るということです」と威勢よく語っていた▼実はお札の印刷は日銀ではなく国立印刷局の仕事。「日銀の輪転機」は言葉のあやとして、2%のインフレ実現を目標に日銀に金融緩和させ、出回るお札を増やす。併せて公共事業も積極的に進め、景気を回復させる考えのようだ▼安倍さんの経済政策「アベノミクス」を好感し株式市場は活気づく。でも眉につばを付けることもお忘れなく。物価が2%上がり消費税増税も重なる。収入が増える保証はない。生活がどうなるかは明らかだろう▼そもそもこの国には今、80兆円を超えるお札が出回っている。それでも景気が悪いのは、庶民や中小企業にお金が十分行き渡っていないからではないか。いくらお札を刷っても、そこが変わらない限り効果は乏しい▼「日本を、取り戻す」と訴え、政権を取り戻した安倍さん。聞こえませんか。「普通の暮らしを取り戻したい」という国民の声なき声が。2012・12・25
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