自分の被爆体験を元にした漫画「はだしのゲン」で有名な漫画家・中沢啓治(なかざわけいじ)さんが19日、肺がんのため、広島市内の病院で死去した。73歳だった。葬儀は本人の意向で行わなかった。
中沢さんは広島市出身。6歳の時、爆心地から1.3キロの同市内の国民学校前で被爆。父と姉、弟を失い、直後に生まれた妹もまもなく亡くなった。中学卒業後、漫画家を志して上京。1963年のデビュー当初は原爆体験を秘していたが、66年の母の死への憤りをきっかけに、初めて原爆を題材にした作品「黒い雨にうたれて」を発表した。
73年に、週刊少年ジャンプ(集英社)に連載を始めた自伝的作品「はだしのゲン」は単行本だけで650万部を超すベストセラーになり、10カ国語以上に翻訳された。2009年には「ゲン」を含む全作品の原画を広島平和記念資料館に寄贈。近年は白内障で漫画の筆を折ったが、被爆体験を語る講演に精力的に取り組んでいた。