秋田県がクマ牧場を新設　３億超を全額補助に「税金のむだ遣い」批判も

秋田八幡平クマ牧場にいたヒグマ

　２０１２年も残りあと６日。オウム逃走犯逮捕、連続不審死事件など様々な事件がニュースとして流れた。今年４月には、秋田県の八幡平クマ牧場で、脱走したヒグマに襲われた女性従業員２人が死亡する事件が起きた。一時はクマの殺処分も検討されたが、このほど、県が３億４８００万円を全額補助して個人経営の牧場内にクマを観察できる新施設を建設することが決まった。この状況に「税金の無駄遣い」との声が噴出している。

　都内でも豪邸が建つ金額を投じるクマ牧場に入るのは、女性２人の死亡事故が起きた鹿角市の秋田八幡平クマ牧場（廃業）に残るヒグマ２０頭。殺処分も検討されたが、県内外から寄せられた意見の９割は動物愛護の観点からの反対の声だった。県がたどり着いた結論が、多額の県費投入だ。

　死亡事故が起きた八幡平クマ牧場は、クマが十分な餌を与えられず、劣悪な環境にあったことも事故につながる要因だったとの指摘もあった。脱走した６頭は射殺されたが、牧場にはやせ細った２０頭以上のクマが取り残されたままになっていた。引受先を探そうと、県は全国のクマ牧場や動物園に呼び掛けたが難航した。

　８月に北秋田市が全頭引き受けを表明。津谷永光市長は「殺処分は残酷。観光に力を入れる県のイメージダウンにもなる」と話した。県が計画するのは樹木を生かし、自然に近い環境のクマを地上５メートルの遊歩道から観察できる施設だ。北秋田市所有の阿仁（あに）熊牧場内に新しく建設する予定だ。

　１９９０年にオープンした阿仁熊牧場の建設費は１億８０００万円。東北地方唯一のクマ牧場で、ツキノワグマ７５頭とヒグマ１頭がいる。受け入れは、県の支援で新しい施設を造る条件付き。来年夏に着工し、冬前には全頭を移動させる計画だ。

　東海林洋県議は１２月の議会で「なぜ国費ではなく県民負担で施設を造らなければならないのか」と疑問を投げかけたが、予算は可決された。佐竹敬久知事は「国に財政支援を要望しているが実現は難しい」「動物を大切にする秋田県というメッセージ発信により、県のイメージアップにつながる」と釈明した。

　だが、地元で製造業を営む北秋田市商工会長の伊藤公夫さん（６３）は「クマの生態調査や研究なら価値があるかもしれないが。観光振興や地域活性化につながるとは思えない」と首をひねる。反対の声をあげた東海林県議も「観光客が来ないからと言って、さらに手を入れるためにお金を投入することになったらまさに本末転倒になります」と懸念している。

（2012年12月25日06時03分スポーツ報知）