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「先生、何でしょうか?私に用事って……」
「ごめんなさいね、一人だけ残ってもらって。あなたにちょっとお話があるの」
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「実は……とても信じられないことなんだけど、あなたがクラスの子たちに催眠術をかけて……その……危険なことをさせてるって」
「そんな……あたし、そんなことやっていません」
(やっぱりバレてたのか。でも誰だろ?チクったやつ……有香?あかり?それとも……記憶は完璧に消去したはずだったのに。あたしの腕もまだまだ未熟だわ)
「そ、そうよね。いくら何でも……でも……」
「……先生、あたしのこと信じてもらえないんですか?」
「そ、そんなことは」
「あたしの目を見てください」
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「これが嘘をついている目に見えますか?」
「じっと見てください……そう、じーっと見つめれば私の本心がわかるはずです……」
「……じっと……」
「そう、じっと……じいいいっと……」 |
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「ほうらもう目をそらせない……目を見て……もっとよおく……もっともっとあたしの目の奥をじーっと見て……」
「え……あ……」
「ほうら吸い込まれていく。先生はあたしの目の中に吸い込まれていく……どんどんどんどん吸い込まれていく」
「まさか……あなた私に……」
「静かに……リラックスして先生……あたしの目だけを見て、あたしの声だけを聞いて……」 |
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「そおら、体からすっかり力が抜けた。とってもゆったりとしてリラックスしているわ」
「私……わたしは……」
「ふふっ、まだ少し抵抗があるようね。いいわ先生、あたしのこの手をよーく見て……手がゆっくりと動くよ。ほら目で追って……ゆっくりと円を描くように、ほおら見て。ゆっくりと回る。」
「目を離そうとしても無駄よ。先生の視線はあたしの手に磁石のように引きつけられて離れない……そおら、くるうり、くるうり……だんだん早くなってくるよ」
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「ぐるぐる、ぐるぐる……回る回る、頭の中がぐるぐる回って何も考えられない。頭の中がどんどん空っぽになっていく、なっていく、そうら、そうら」
「うう……うううう」
「回りながら落ちていく……先生は落ちていく……深い、ふかああああい闇の中に落ちていく」 |
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「先生、先生は今とっても素直な気持ちになってるわ……私の言うことは何でも信じる素直な気持ちに……ねえ、そうでしょう?」
「……はい……」
「私は先生にとってとても良い生徒……何の問題もない……だから先生は安心して良いの……」
「何も問題は起こっていない……何も心配はいらない……わかったわね」
「……はい、何も起こらない……何も心配ない……心配ない」
(そう、心配はいらないわ。先生にとっても、あたしにとってもね。だってこれからはいつでも、どこでも先生があたしの味方になってくれるんだもの。先生にはこれからあたしの素敵な計画のお手伝いをしてもらうわ。ずっと……そう、これからずっとね。うふふふふっ) |