「お、お願いします!わ、私はどうなってもかまいません。ですが、む、息子だけには……ひい!」 邪悪な魔導師に対し、縛られながらも息子の助命を願い出る母親。しかし魔導師――エロルはまったく慈悲を見せず、彼女の眼を隠すようにその頭を鷲掴みにする。 恐怖にひきつる母親。 母親の旋律を無視してエロルは呼吸を整える。 己の“波紋”と女の“波紋”を同調させる。 大事なのは女の魂を自らの肉体に吸い取るようなイメージだ。 捕った! 己が肉体に生ずる波紋、それが女の肉体にも波紋を生じ、二つの波紋がひとつになり、より大きな波紋となる。 ここで恐怖に凍りついていた、母親の様子が変わった。 瞳が焦点を失い、顔が紅潮する。乾いた唇を何度もなめる。 「あん、ああん、はん」 悩ましげな声をあげ、身をくねらせる。 波紋すなわち、肉欲を生じさせる魔力が、子宮を、神経を、脳を蹂躙し、快感の火で焼き尽くしているのだ。 もっと、もっとだ、もっと燃えろ! 念じるエロル。しかし自分の性魔術では、これ以上の効果を上げるには力不足のようだ。 (やむをえん) 女の衣服をはぎ無理やり犯す。 「!いい!ひいのう!」 もはや“母”ではなく“メス”となった女がよがりだす。 エロルは憎悪と復讐心からくる強力な自制心で、自分の肉体と呼吸を制御する。 性器の結合により、先ほどより大きな波紋が生じる。 「あひ!あん!いいの!」 息子の前でもだえ始める女。 もう少しだ。 女が絶頂に達した。白目をむいてのけぞる。ひときわ大きな波紋が生ずる。 「〜〜〜〜〜〜!」 その波紋を自らの肉体に吸いこもうとするエロル。 「くう」 荒れ狂う熱を飲み込む。 「よ、よし、もうお前は俺の、このエロルのものだ」 飲み込んだ熱を逆に女の中に注ぎ込む。 この辺の感覚は“魔物支配”の術を魔物にかけるのによく似ている。修業は無駄ではなかったといっていいだろう。 「あひいいいいいいいい!」 再び白目をむいて気絶する女。 荒い呼吸を落ちつけ、気絶した女を強引に目覚めさせる。 体を揺さぶられて女が眼をひらく。欲情に潤んだ、しかしうつろな目があらわになる。 「ああん、すごいの、こんなのはじめて」 エロルに甘えたようにしだれかかる女。その体を突き放す。 「いや、おねがい、もっとして、ほしいの」 その言葉を無視して、女の後ろを指さす。けだるげに振り向く女。 そこには女の、先ほどまで命に代えても守りたいと思った息子が、天井から鎖でつながれていた。下半身は既に裸に向かれている。その男根が、まるで自分が一人前だというように、その存在をめいっぱい主張していた。 「おまえの息子ももう大人になりかけだな」 「ええ」 とろんとした声で答える女。頭が正常に働いていない。ただただ、息子の男根をよだれを垂らしながら見ている。 「おまえの手で一人前にしてやれ」 「それは」 「男にしてやれということだ」 「!」 ぱっと顔を輝かせる女。 「ラルと、ラルとSEXしていいのですか」 「ああ、思う存分精を絞ってやれ」 「ああ!」 股間からしぶきを上げる女。背徳の行為を示唆され、軽いエクスタシーを感じたらしい。 よろめきながら、息子に歩み寄り、猿轡を外す。 「か、かあさ…うぐ!」 あらわになった息子の口を、食らいつくように貪る女。同時に右手が股間に伸びる。 「うー!」 息子が射精した。 「まあ」 嬉しそうに手に付いた息子の精液をなめる女。 「ラルもいつの間にか大人になってたのね、かあさん嬉しいわ」 「か、かあさん、やめてよぅ」 甘えたように哀願する息子。 「うふふ、だいじょうぶ、かあさんに任せときなさい」 子供を安心させるように微笑みかけてひざまずく。その顔には、性に狂った雌の顔と、わが子をいとおしむ母親の顔が同居している。 「うふふ、まだまだ元気、ここはお父さんに似てるのね」 そう言って息子の男根を口に含む。 「ひい!おかあぁさぁん、やめてぇ!」 そのまま力いっぱい吸う。 「やだ、だめえ、おかあさんにたべられる、わあっ」 痙攣する息子。母親の口から白い粘液が漏れる。 うっとりした顔で息子の顔を見上げる母。精液で汚れた唇を息子の唇に押しつける。 「ん!むぐぐ!んん!」 息子の口から舌を抜く。唾液の糸が伸びる。 「うふふ、私の可愛いラル」 ラルの剛直を握り、自らの股間に導く。 「かあさんが男にしてあげる」 そのまま豊かな尻を振って息子を犯し始める。 「うわあ!かあさん!やめてえ!気が変になるよう!」 「いいのよ!いい!ああ!ラル!可愛いラル!」 抵抗していた少年もやがて快楽におぼれはじめる。 「ああ!いい!でる!またでちゃう!」 「いいのよ!出して!母さんにラルの赤ちゃん頂戴!」 二人の動きが激しくなると同時に、二人の気が強い波動を放ちだす。 その波動が部屋に刻まれた六芒星の魔方陣を通してエロルの体に吸収されてゆく。 「でるぅ!」 「ああ〜!あつい〜!」 そして二人が絶頂に達したとき、エロルは自らに強い魔力が宿るのを実感していた。 (これが北の魔女ゼノビアの魔力の秘密か) 六芒星の魔方陣は陰と陽の和合の象徴である。 すなわち男女の交わりのシンボルでもあるのだ。 その魔方陣を通して、男女の肉欲、快感によって生ずる気の波動を魔力として取り込む。 これによってゼノビアは強大な魔力を得て、北の魔女の威名を轟かせていたのだ。 (ふふふ、この力、早く試してみたいものだ) エロルがこのようなことをしていた理由は二つ。 性魔術による精神支配の訓練と、来るべき女騎士及び少年魔導師迎撃のためである。 (あの女を徹底的に汚してやる、おとしめてやる。あの小僧の眼の前でな。) いつになく闘志を燃やしているエロル。 騎士の姿の貴族の娘、その忠実なる従者の少年。 それは、かつてのエロルの夢の残骸そのものであった。 それゆえの闘志である。憎悪である。嫉妬であった。 再び体をからませ合う母子を横目に、黒い笑いのエロル。 舌なめずりをしながら獲物を待つ獣の様である。 いや獣ではない。 ここまで悪意を溜めこめる生き物は獣などではありえない。 知らせが飛び込んできたのはそれからすぐだ。 「エロル様!女とガキの二人連れです!」 「来たか!丁重に出迎えてやれ」 報告に来たレッドソニアに余裕の返事をするエロル。 しかしその余裕もすぐに消し飛んだ。 「第一防衛線から、第三まで一気に抜かれました!」 「なにい!」 目をむくエロル。 第一防衛線はゴブリンによる迎撃部隊である。 しかしこれは侵入者を抹殺するためというよりも、油断させ奥に誘い込むための部隊である。 だからこれが抜かれるのは最初から想定の範囲内である。 しかし第二、第三防衛線を担うのは、オーガーとスケルトンの部隊である。 エロルの戦力として主力ともいえる戦力だ。 それが抜かれたとなると切り札とも言える、レッドソニアやアイシャ、レニやデュラハンを投入するしかない。 しかも敵の侵攻速度からいって、彼らも無事で済むかどうか。 (しかしあの女、牛の話ではただのじゃじゃ馬で剣の達人とかには程遠いはず…ええい、まずは情報だ) 全裸で机に座り、水晶玉に敵の姿を映しだそうとするエロル。 しかしそこに映っていたのは、間抜けにも落とし穴にはまった女騎士の姿であった。 大広間は野戦病院と化していた。 「ひどいな、これは」 手当を手伝わせるために、サリとプリスまで引き連れてきたエロル。 「ああ、なんということでしょう!ミランダがこんなひどいことを!」 膝をつき祈り始めるプリス。頭に付けたベール以外いっそまとわぬ姿で、その巨大な乳房を周りに見せつけている。 「ああ、ミランダ、なぜこのようなことを、こんな野蛮なことするぐらいなら、ポールと愛し合うべきなのに」 「やかましい!」 異常なことを口走るプリスにいらつき、どなりつけるエロル。 「そんなこと言ってる場合か!大体…」 「そこに異性がいれば、即セックス。それが当然ですわ!」 「〜〜〜〜!」 「この世の真理は愛!色即セックスですわ!」 一つ突っ込みを入れたら、さらに突っ込むべき返事が返ってきた。 (ううう、失敗、大失敗だ〜) 侵攻と肉欲の板挟みになった尼僧を貶めて楽しもうと考えたエロルであったが、その対象であるプリスに対し必要以上に「やりすぎて」壊してしまった。 もはやまともに会話も通じない。 口を開けば怪しげというより、正気と思えない「神の教え」しか出てこない。 「わかった、もういい、それよりあの女の剣の腕は大したことなかったんじゃないのか」 自制心を総動員して尋ねるエロル。 「はい、少し修業をしたそうですが、本職の騎士には到底及びません。おそらくポールが彼女に力を貸しているのでしょう。」 「さっきも言っていたが、ポールとはあの小僧のことか」 「はい彼は下級騎士の三男だったのですが、ミランダのお父様の援助でラニエスの魔法学院に行き、そこで付与魔術科を首席で卒業したそうです。おお、かわいそうなポール、セックスも知らずに勉強を…」 エロルの自制心が限界に達した。 「だー!もういい!さっさと手当しろ!貴様の大事な信者だろ!」 「そうでしたわ、みなさーん!すぐに治してあげますから、治ったらまた愛し合いましょう」 こめかみを押さえるエロル。 ゴブリンやオーガー達のストレス解消にプリスをあてがったところ、幾度もの輪姦、大乱交のすえ、いつのまにか彼らはプリスの信者となっていた。 雑兵の統制に役に立っているのが、何とも悔しい。 全く役に立たないならさっさと殺すのだが。 「どう思う?レニ」 プリスのことを視界に入れないようにして、レニに尋ねる。 「死んだ連中の傷から見て、余り腕のいい剣士じゃありませんね、ただやたらよく切れる剣を持っていただけという風に見えます」 「なるほど」 傷口から判断するとは、さすがに暗殺者である。 「あんな間抜けな罠にかかるのも無理はないでしょう」 「かかるやつがいるとは思わんかった…」 エロルの言葉をただ聞いただけでは、なぜそんな無駄な罠を?と疑問に思われるだろうがこれにはわけがある。 問題の落とし穴はある程度掘ったところで硬い岩盤にぶち当たり、それ以上掘ることができなくなった。 そこでエロルはこの落とし穴をおとりとして、すぐ奥に別の罠を仕掛けたのだ。 下の落とし穴に気を取られると、上から槍がおちてくる仕掛けだ。 そのため、少し注意して見れば落とし穴と分かるようになっていたのだ。 その時背後で奇妙な魔力を感じた。 振り返ったエロルは目を疑った。 「…牛、お前、魔法を」 そこでエロルが見たものは治癒魔法でオーガーをいやすプリスの姿だったのだ。 「神はいつも私たちを見ておられます。正しき信徒が祈ればこうしてお力をお貸しくださるのです」 「馬鹿な!」 いわゆる神聖魔法、神の力を借りる魔法は堕落した人間には絶対使えない。 そう、肉欲で堕落したプリスに使えるはずないのである。 これは長いこと信じられてきた真理である。 エロルの中で常識が崩れ落ちようとしていた。 牡牛の月 22の日 例の二人組が来た。 スケルトン4体全壊、オーガー2匹戦死、1匹軽傷、ゴブリン7匹戦死、5匹重傷、3匹軽傷。 総力戦を覚悟して、ソニア、レニ、アイシャ、デュラハン、ついでにハッチポッチを投入しようとしたが、その前に敵が落とし穴に落ちて負傷、撤退。 追撃をかけるべきだったが、気が抜けてしまい見逃してしまった。 我にかえった時はすでに遅し。 余りにあっさりかかったもので、水晶玉見てて、思わず椅子から転げ落ちたよ、まったく。 罠の専門家でないにしても、実力の割に間が抜けている。 疑問に思って牛に確認したところ、あの魔導師の小僧はラニエスの魔法学院で付与魔術科を首席で卒業したエリートらしい。 つまりあの女の武勇は本人の実力ではなく、あの小僧の手による武具のたまものらしい。 所詮は貴族のお嬢様か。 とはいうものの次来る時はさらにパーティーを充実させてくるだろう。 戦力を強化しなければ。 幸い牛が回復魔法を使えたので、死ななかったやつはいずれ戦線復帰するだろう。 しかしわからないのはなぜ牛が神の力による魔法を使えたかだ。 あそこまで堕落したなら、とっくに神に見放されているだろうに。 とはいうものの牛に話を聞いても頭痛がするだけだからな、しばらく観察することにしよう。 牡牛の月 23の日 戦力強化のため新たな魔物狩りに行きたいところだが、あの二人がいつ来るかわからない、迷宮から目を放すことができなくなった。 次善の策として、まず魔物たちの武器の強化を考える。 ソニアやレニはいいが、ゴブリンの武器なんて刃こぼれに錆が著しい。 新品の武器に替えたら少しはましかと思うが、調達するすべがないことに気付く。 武器は結構高いうえに、数をそろえると怪しまれる。 何より所詮ゴブリンだし。 一応原始的な弓を使えるんで弓隊の訓練をしてみるか。 狭い通路に並べて、よけることのできない敵に対し多数の矢を放つ。 いいかもしれない。 とはいうものの、魔物狩りに行けない状況を何とかすべきであろう。 その他レニに命じて罠を強化する。 さすが暗殺者だ、えげつないことばかり考える。 牡牛の月 24の日 昨日考えた弓隊。やっぱりだめだ。 戦士の盾に隠れていた魔法使いの呪文で一掃されてしまう可能性が高い。 オーガーの死体から新たにクリーチャー・オブ・フランケンシュタインを作ることにする。 二匹を一体にしよう。 四本の腕にそれぞれ武器を持たせれば、二本腕のオーガーよりは強いだろう。 ゴブリンの死体は、とっくにオーガーの餌だ。 本当に使えん。 別荘にソニアとアイシャを向かわせる。 何か捕まえてくればいいが。 牡牛の月 25の日 ソニアたちが巨大蟹を捕まえてきた。 美味かった。 甲羅は鎧とかに使えそうだ。 ニコイチオーガーに使おう。 フィルタースライムの新種開発中。 コンセプトは二つ。 擬態能力と金属質。 < 続く >
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