「いじめの実態を調査してほしいと市邨中学にお願いしたのですが、聞き入れてくれませんでした。学校はいじめを認めるどころか、『線香を上げに行けば学校がいじめを認めたことになる』と謝罪すらしないんです。話し合いは、平行線を辿ってしまいました」
自殺の民事訴訟の時効が迫り切羽詰った典子さんは、時効直前の '09年8月11日、市邨学園、理事長、校長、担任、そして加害生徒8名と保護者15名に対し、損害賠償を請求する民事訴訟を名古屋地裁に起こした。
典子さんが起こした裁判は、いじめが4年も前に遡るため、事実認定が困難と思われた。だが裁判では、加害者の実名が記されたノートがあり、専門医による美桜子さんの診断書や証言、また、生前に典子さんが何度も担任や学校に相談している事実など、母が集めた数多くの証拠が功を奏した。
「'11年5月20日に裁判の結果が出て、名古屋地裁はいじめの事実と自殺の因果関係、さらには自殺予見可能性を認め、学校側の被告全員に責任があるという判決が下されました。いじめから4年も経った自殺に因果関係を認めるのは、『画期的な判決』だったと担当の弁護士の方も喜んでいました。判決を聞いた時は、本当に嬉しくて涙がこぼれました・・・・・・」(典子さん)
母の執念が勝ち取った勝訴だった。
しかし、安心したのも束の間。判決はこれで確定とはならなかった。校長、担任を含む学校側は一審の判決を不服として即日、名古屋高等裁判所に控訴したのだ。加害生徒と保護者とは裁判の終盤で金銭による和解が成立していた。つまり、和解により加害生徒たちは実質いじめを認めたということにほかならないが、学校はその事実を正面から受け止めようとしなかったのだ。
見てみぬふりしないで
市邨中学校を始め名古屋経済大学など幼稚園から大学院までを経営する、市邨学園グループの責任者・末岡熙章理事長は、本誌の取材に対し辟易したような顔でこう言い放った。
「(美桜子さんは)うちの生徒ではなくなっているし、(加害)生徒たちはいじめではないと証言していますから、謝罪と言われてもね。いじめというよりいたずらです。(一審)判決が(いじめを)認め敗訴しても私たちとしては(いじめは)なかったとしか言えない」
あくまでも理事長は、いじめがあった事実を認めず、頑なに学校に非はないと繰り返した。
南山国際高校1年の時美桜子さんは、中学時代に受けたいじめを振り返り『自分との戦い』と題する作文を書き残している。
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