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いろいろお騒がせしましたが改めましてよろしくお願いします
プロローグ
修行という目的で遺跡に入ったオレは全力で逃げていた。理由は後ろからおびただしい数の魔物が追ってきているからだ。


「死ぬ! 死ぬ! マジで死ぬ!」


 オレにはあんな数の魔物を殺せる魔法など使えないし、その魔法が使える奴は


「逃げるな、カイト! あんな魔物ぐらい倒せなくてどうするのよ!」


 担ぎ上げられてくせに説教をかましてきやがった。このままこいつ魔物の群れに投げてやろうかと思ったが、絶対生き残って復讐されるからやめた。つーかこの程度じゃ傷一つつかないような気がしてならない。


「いや、無理だろ! あんな大群相手にできねえって!」


 一対一や二、三の勝負なら勝つ自信はあるがそれ以上になったら普通は負ける。それこそ滅多にいない凄腕の魔法士でもない限り普通はそうだ。


 その限りなく少ない魔法士の一人は偉そうに人の肩の上でふんぞり返っていた。


「情けないわね。昔はもっとたくましくて、その、かっこよかったのに……」
「あ!? なんか言ったか?」


 後ろの魔物達の吠える声で声がかき消され最後の方が聞こえなかった。


「な、なんでもない。馬鹿!」
「いって!」


 よくわからないがどうやら怒っているらしくいきなり殴られた。わけがわからない。まあ、こいつがこんな感じなのはいつものことだが。


「そんなことよりアイリス、お前の魔法でさっさとこいつら倒せよ! それが一番手っ取り早いだろうが!」
「女の私に頼るの、あんたは?なんて情けない」
「いいからさっさとしろ! 行き止まりだ!」


 オレ達はいつの間にか行き止まりに追い詰められていた。まあ、遺跡の中を場所も確認せず走り回ればいずれはこうなるのはわかっていたが。


「このままじゃオレ達魔物共に喰われて終わりだ! 何とかしろ! いや、してください!」
「まったく、仕方ないわね。御柱の火炎(ピラーフレイム)


 そうアイリスが呟くと、地面から凄まじい勢いで炎の柱が幾つも湧き上がり、次々に魔物達を呑みこんでいった。しばらくして魔物達はあらかた燃やし尽くされ、数少ない生き残った魔物もおびえた様子で逃げて行った。


「ふう、助かっブフ!」


 もちろんこれは言いたくて言った言葉じゃない。安心の声を上げている途中で肩の上の奴にいきなりぶん殴られたのだ。しかも先程より強く。


「いってーな!何すんだよ!」
「あんたは少し強くなるように努力したらどうなのよ! この程度の魔物に学園の生徒で手こずるのはあんたくらいよ! 恥を知りなさい!」
「んなこと知るか! オレは入りたくて学園に入学したわけじゃねえんだよ! 無理矢理入れられただけで頑張る必要なんかねえ! ここにだってお前が修行だって無理矢理連れてきたんじゃねえか!」


 オレこと、カイト・カイはほとんど魔法を使えないしその才能もない、少なくても今までの十五年のところは。それなのに帝国中から魔法士としてエリートの卵ばかり集められる魔法学校に何故か合格したのだ。受けてもいないのに。


 もちろん最初は断った。場違いなことも重々承知していたし何より魔法士に興味もないしなるつもりもないのだ。

 学園を卒業した者は今のところ百パーセントの確率で魔法士かそれに準ずる仕事に就いている。何度も言うがカイトとしては普通の一般人として生きていくつもりはないが、少なくとも魔法士の仕事に就くつもりは毛頭ない。それなのに


「そもそもお前が院長に無理言うから入学する羽目になったんじゃねえか」


 アイリスも孤児で、同じ孤児院で育った仲だ。十五年の今までも人生のほとんどを一緒に過ごしてきた。アイリスは魔術師として優秀で自力で学園に合格していたのだ。だが、一人で遠いこの地に行くのは寂しいと駄々をこね、それを見かねた孤児院の院長が言った、


「あの子のために学園に入学してやりなさい。学費も全額免除だし学園に行っても別に他の道に進むことはできるだろ。それにあんたは監視する奴がいないと何をしでかすかわからないし丁度いいさ。反論は聞かないよ」


 という鶴の一声でカイトの運命は決まってしまった。この扱いの違いは男と女の差だそうだが、不公平極まりないと思うのはカイトだけだろうか。

 ちなみに後で聞いてみればこの院長が学校にえらい奴と知り合いであり、しかもこの話が出る前に受かっていたのも院長が勝手にその人に頼んで合格にさせたというのだからひどい話である。


「それは……もういいでしょ! 過ぎたことを掘り返すな! 男らしくない」


 そう言ってまた殴られた。こいつマジで理不尽だ。


「最初にこの話をし始めたのはお前の方だろ! つーかいい加減、人の肩から降りろよ。いつまで乗っているつもりだ」


 屈むと肩の上にいるアイリスを地面に降ろす。いくら細くて小さいからと言って人一人担ぐのはかなり疲れるのだ。ましてや全力で走ったし、その他の手荷物もすべてオレが持っているのだから。


 アイリスは不満そうだったが無視した。そもそも何でアイリスを担がなければならないのか。あちらの方が魔法の才もあり、危険なのはオレの方なのに負担が多いというのも今一納得できなかった。


 まあ、言ってもどうせその倍の小言が返ってくるから言わないが。


「たく、お前も何でオレをパートナーに選ぼうとするかね。オレなんかがパートナーじゃせっかく学園で成功できるチャンスを棒に振るぜ。もっと他に適当な奴がいるだろうに」


 魔法学校では入学して最初な三か月は自分のパートナーを決めるとこから始める。


 学校からの課題には個人、ペア、パーティの三種類がある。個人は自分だけで、ペアはパートナーと、パーティは五人から十人の間で組んだものを指し、それに応じた課題が出される。これらをこなさないと進級できないし、成績が悪いものは下手すれば退学処分もありえる。


 基本、強制ではないがほとんどの場合、一度決めたパートナーとペアの課題は行う。課題と言っても今回の用意命の危険に晒される場合も当然出てくるし、実際死人が出たこともあるらしい。そうでなくても優秀なパートナーを得られれば先は安泰である。その為パートナー選びも今後の学園生活を送る上で非常に重要になってくるのだ。


 当然オレのような落ちこぼれに声をかけるのはほとんどいない。


その唯一の例外がこのアイリスである。物好きを通り越してバカ以外の名の物でもない。


「カイト、今、心の中で私のことを馬鹿にしなかったか?」
「し、してねえよ。何言っていんだ」
「……」


 アイリスはじっと怪しむように見てくる。何で心の中のことまでわかるんだ、こいつは。そんなにオレの表情は読みやすいのだろうか。


「ま、まあ、まだ完全にパートナーになったわけじゃないし、期間までにもっといいやつ見つけろよ」


 現在学園生活始まって二週間、決定はまだまだ先の話だ。
 話題を変えるつもりはで言ったのだが、アイリスは不機嫌そうに眉を顰める。


「ふん! あんたが誰もパートナーがいないだろうと思って親切にしてやったのにそんな態度をとるの。やっぱりあんたなんかと組むのは間違いだったわね」
「だろ。だから早く他のパートナーを見つけろよ。お前だったらいくらでも良いやつが見つかるさ」
 

 オレは親切心でこう言ったのだ。アイリスは新入生の中でもかなり優秀な方で結構な数の奴からパートナー申請が来ているらしい。もちろんそいつらはオレよりずっと魔法が使える。
 

 オレ達はとりあえず相性やお互いの実力を確認し合っている、いわば仮パートナーなのだ。ちなみにこの仮パートナーは期限までの間だったら結構いるもので、別段珍しいものではない。なので、今から別のパートナーを探すこともできるのだ。だと言うのに


「……ふん!バカカイト!」


 アイリスは何が不満なのか、またオレを殴るとさっさと先に進んでいく。明らかに怒っていた。


「はあー、わけわからん。何なのだ、あいつ」


 大きく溜め息を吐きオレはアイリスの後を追った。


 この後も不機嫌なアイリスに何度も殴られ、魔物にも追われ疲労困憊になって寮に帰るはめになった。散々です。
行間、あけ忘れたのでなおしました。
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