(1)この投稿は、「外国人献金問題の本質と落とし穴」の「その2」である。

その1」では、政治資金規正法が2006年末に改悪され、株式を5年以上上場している外資50%超の企業の政治献金が合法化されてしまい、国家主権(国家の独立)の侵害の危険性が生じていることを紹介した。

また、一般に知られていないが、外国人や外国法人などの寄付を受け取った側は罰則を予定しているが、当該寄付をした外国人については、罰則が予定されていないことも紹介した。

(2)以下では、実際にマスコミで問題視された外国人等の寄付問題を取り上げるが、一言だけ書いておく。

ブログやツイッターで、しばしば見かけるのは、「政治とカネ」問題(特に在日外国人献金問題)について問題になった政治家本人に対する好き嫌いや当該政治家のイデオロギー及び所属政党に対する評価で、この種の問題を論評するものがある。

しかし、私は、そのような立場をとらない。
当該評価とは別に、あくまでも「政治とカネ」の法的・政治的問題の視点で、以下、私見を述べるし、マスコミの取材にも応答している。
あらかじめ了解していただきたい。


2.前原誠司外務大臣(当時)の政治団体の他人名義による政治資金パーティー券購入事件

(1)まず、前原誠司外務大臣(当時)の政治団体の「政治とカネ」問題を取り上げるが、当時私が知った問題は、在日外国人の寄付の問題ではなかった。

前原誠司氏の政治団体「まえはら誠司東京後援会」の2009年分の政治資金収支報告書のパーティー券50万円の購入者の欄に、名前がよく似た全く別の2つの会社の「住所」と「社長名」が組み合わされて記載されているとして、私は、今年2月末ごろ、「週刊文春」の記者から電話取材を受けていた。

(2)私が取材を受けた記者の説明を前提にすると、その問題は、政治資金規正法上、政治団体の「記載ミス」という問題ではなく、ある人物がパーティー券を他人名義(あるいは匿名)で購入したという問題だった(『週刊文春』2011年3月10日号)。

(3)政治資金パーティー券を他人名義で買うことやそれを承知で売ることは、他人名義での寄付やその受領と同じように政治資金規正法に違反し、違反者は「3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」に処せられる(第22条の6第1項・第3項、第22条の8第4項、第26条の2)。

また、他人名義での寄付は国庫に帰属することになる(22条の6第4項)が、他人名義でのパーティー券購入代金(あるいは経費を控除した残りの分)もそれと同様に国庫に帰属することになる、と解される。

(4)ところが、「TBS」が「週刊文春」の発売直前の3月1日に、当該政治団体の会計責任者は「間違いがあることがわかり、訂正することになっている。経緯はわからない、当事者には謝罪する」としています、と報じた(TBS3月1日16:36「前原外相、政治資金報告書に記載ミス」)。

(5)また、前原大臣(当時)は同月(3月)3日、記者会見し、「実際に政治資金パーティー券を購入したのは脱税事件で有罪となった男性が会長を務めていた企業であった」こと、報告書の内容を同日訂正したことを明らかにした上で、「道義的責任をもって全額返却したい」と述べた。

( 6)しかし、当該政治団体が購入者につき2つの会社の「住所」と「社長名」をあえて組み合わせて「記載ミス」するというのは、普通考えられない。

むしろ購入者と相談して、意図的にその組み合わせによる記載をしたとしか考えられない。
金額は多くないものの、その点では悪質だ。

また、この事件は「他人名義によるパーティー券購入」事件なのですから、国庫に帰属するものを勝手に「返却」することも許されないはずである。


3.前原大臣の政治団体の在日外国人からの寄付受領と大臣辞任理由の是非

(1)ところが、自民党議員が同月(3月)4日の参議院予算委員会で激しく追及したのは、上記の事件ではなく、前原外務大臣の政治団体が京都府内の在日韓国人の女性から、2005年から4年間で計20万円の献金を受けていたというものだった。
朝日新聞2011年3月5日3時20分
前原外相に進退論 外国人から献金受領 4年で20万円

 前原誠司外相は4日の参院予算委員会で、京都市内の在日韓国人の女性から政治献金を受け取っていたことを明らかにした。政治資金規正法は外国人からの寄付を禁じており、献金を受けた経緯や前原氏側の認識次第では同法違反の罰則にも問われかねない。自民、公明両党は外相辞任を要求し、民主党内からも辞任論が出はじめた。進退問題に発展する可能性もある。
 前原氏は党内で自らのグループを率いながら民主党政権の要職を務めてきた。「ポスト菅」候補の一人でもある。外相辞任の事態となれば、菅直人首相の政権運営がさらに追い込まれることは必至だ。
 4日の参院予算委で、自民党の西田昌司氏が献金の事実関係を質問したのに対し、前原氏は「中学2年生の時に(京都市の)山科に引っ越した。(献金者は)近くで焼き肉屋の経営をする在日(韓国人)の方だ。返金し、(政治資金)収支報告書を訂正したい」と認めた。
 予算委終了後、前原氏は首相官邸で首相と会談し、献金の経緯を説明。その後、外務省で記者会見を開き、「大変申し訳なく思っている。全体をしっかり調べた上で、どのように判断するか決めたい」と語った。
 京都市内にある前原氏の政治団体の報告書には、2005年以降、この女性から4年間で毎年5万円ずつ計20万円の献金を受けたことが記載されている。前原氏は会見で「献金をいただいているという認識はなかった」とした。
 この女性は朝日新聞の取材に「前原さんの家庭は貧しく、苦労して議員になったので応援したかった。在日の献金がダメだとは知らず迷惑をかけた。私が日本国籍を得ていると思ったのではないか」と話した。
 自民党の谷垣禎一総裁が外相の責任論について「場合によってはそういうことが必要かもしれない」と指摘。公明党の山口那津男代表は「裏付け事実がはっきりすれば出処進退、自浄作用が問われる。外相としての責任は重い。首相の任命責任も問われる」と批判している。野党側は前原氏が辞任しない場合、参院に外相問責決議案の提出も検討している。
 政権側でも進退の取りざたを始めた。参院民主党の幹部が「故意ならば議員辞職に値するが、故意でなくとも大臣は辞めざるを得ないのではないか」と指摘。菅首相は同日夜、記者団に「全体像が必ずしもはっきりしていないので、まずはきちんと調べて、説明することになる」とだけ語った。

(2)前原氏は、同議員がこの問題を詳細に説明する前に、自ら積極的に説明し、その後も、記者会見で、調査の結果として、2005〜2008年と2010年に各5万円、計25万円を受け取っていたことを明らかにしたのである。

(3)同月(3月)6日の夜、時事通信社の記者から電話がかかってきた。
それは、前原氏が「在日外国人献金問題で大臣を辞める」ようなので、コメントが欲しいというものだった。

私は、前述の他人名義による政治資金パーティー券購入事件問題で大臣を辞任するなら、まだ理解できるが、在日外国人の寄付問題で辞任するのは、容易に理解できなかったので、記者に対し「本当に?」と聞き返したほどである。

その直後の記者会見で、前原大臣は、寄付した在日韓国人女性とは中学2年生の頃から知り合いであって、公私共に親しく付き合ってきており、政治家になってからも支援を受けていたことを認めたものの、同女性から寄付を受けていたことを知らなかったと弁明し、にもかかわらず、「外国人から献金をもらっていた事実は重く受け止めざるを得ない」と外相を辞任すると表明し、辞任したのである。

(4)以下は「時事通信社」の配信記事である。
3月6日、前原氏は大臣を辞任する旨、記者会見した。
時事通信社(2011/03/07-00:23)
前原外相が辞任=外国人献金で引責−菅政権に深刻な打撃

 前原誠司外相は6日夜、首相公邸で菅直人首相と会い、政治資金規正法が禁止する外国人からの政治献金を受け取っていた責任を取り、辞任の意向を伝えた。首相は慰留したが、前原氏の辞意は固く、首相も最終的に了承した。「政治とカネ」の不祥事による主要閣僚の辞任は、逆風下の首相にとって深刻な打撃となる。後任に関しては、2011年度予算案の審議中であることを踏まえ、首相や閣僚による一時的な兼務や松本剛明外務副大臣の昇格などが取り沙汰されている。
 首相が掲げてきた「クリーンな政治」にも傷がつき、政権維持が一段と困難になるのは必至だ。「ポスト菅」の有力候補だった前原氏の辞任で、民主党に対する世論の不信が強まることも避けられない。
 首相は前原氏と約1時間45分会談。会談後、前原氏は外務省で記者会見し、「政治とカネの問題で不信を招いてしまったことを国民におわびする」と陳謝。辞任の理由について「事実認識はなくても、外相が外国人から献金を受けた事実は重く受け止めざるを得ない。けじめをつける」と説明し、「職にとどまることで内外の国政の課題が滞ることは避けなければならない」と述べ、国会審議への影響も考慮したことを明らかにした。
 前原氏は、4日の参院予算委員会で、京都市内の在日韓国人の女性から、4年間で計20万円の献金を受けたと指摘された。前原氏は会見で、調査の結果、2005〜08年と10年に各5万円、計25万円を受け取っていたことを明らかにした。 
 政治資金規正法は、外国からの政治的な影響力行使を避けるため、外国人や外国法人による献金を禁止している。前原氏がこの規定に抵触する献金を受けていたことに対し、野党は「外相として不適格」として辞任を要求。民主党内にも「閣僚は辞めざるを得ない」と進退を問う声が上がっていた。
 前原氏をめぐっては、外国人からの献金のほかにも、同氏の政治団体のパーティー券を、脱税で起訴された人物の関係企業が購入していたことなどが判明している。
 菅内閣の閣僚交代は、昨年6月の亀井静香金融・郵政改革担当相、同11月の柳田稔法相に続き3人目で、今年1月に発足した再改造内閣では初めて。

時事通信社(2011/03/06-22:42)
外相辞任・識者談話

◇辞任不要、献金自体禁止を
 漫画家の風間やんわりさんの話 政治家が献金をしてくれた人について、どのような素性であるかを逐一チェックするのは難しい。前原氏が辞めることで、今後意図的に違法献金をするやからも出てくるだろう。多くの政治家がはめられることになる恐れがあるので、辞任は不要だ。ただ、献金をする側はそれなりの意図をもっているのだろうから、外国人からであれ日本人からであれ、受け取り自体を禁止するのが筋。政治活動は政党交付金でやればいい。
◇規正法の議論不十分
 上脇博之神戸学院大法科大学院教授(憲法学)の話 政治資金規正法は、2006年の改正で外国資本の出資比率が50%以上の法人の献金を認めたが、外国人個人からの献金は禁止したままだ。国家の独立を守るという趣旨からすると、影響力が大きい外資系企業の献金を認める一方で、個人献金だけを全面禁止とするのは整合性がとれず、問題を放置したままと言える。外国人参政権の問題や、外国人と知らず献金を受ける可能性もあり、まだ十分に議論が尽くされていない。

(5)すでに「その1」で紹介したように、政治資金規正法は、外国人の寄付とその受領を禁止し、罰則も規定しており(第22条の5、第26条の2)、それは「国家の独立」(国家主権)を脅かしかねないとして定められている規定だが、この点でいえば、従来外資50%超の企業が政治献金することも解釈を通じて禁止されてきたにもかかわらず、2006年末に自民党等がこれを解禁すると法律「改正」(改悪)していた。

国家主権の侵害という点では、個人の寄付よりも企業の献金の方が重大である(これについては、後の投稿でもう少し説明する)。
それなのに、重大な献金の方を許容しておいて、必ずしも重大とはいえない個人寄付の受領を理由に大臣を辞任に追い込んでしまうのは、バランスを欠いている。

(6)また、外国人の寄付の受領は違法であり、罰則が予定されているが、受領者が「寄付者は外国人」と認識していない場合には、違法性の認識があるとは言えず、違法な寄付を受ける「故意」があるとは断言し得ない。

この寄付を受け取ったのは、前原大臣が代表を務める政党支部や資金管理団体ではなく、前原大臣が代表を務めない「その他の政治団体」であり、寄付した女性は、韓国名ではなく「通名(日本名)」で寄付をし、政治団体もその「通名」を記載していたということである。

(なお、在日外国人の選挙権問題は、後の投稿で述べる。)

しかし、果たして受け取った政治団体あるいは前原氏が実際に、外国人からの違法な寄付と認識していたのか、きちんと解明されないまま、前原氏は大臣を辞任してしまった。

その結果、私が重要視した他人名義の政治資金パーティー券購入事件については、前原氏は説明責任を果たさないまま、かつ、真相は解明されないままになってしまったのである。


4.外国人による違法献金悪用の危険性

(1)前原氏は「大日外国人からの寄付」との認識があった「はず」であるとの意見もあるだろうし、「外務大臣だから結果責任で大臣辞任は当然」という意見もあるだろう。
しかし、これは危険性を孕んでいる。

(2)もちろん、外国人の献金は違法献金なので、自己の政治団体がそれを受け取った政治家には、違法献金の認識の有無等について、国民に説明する責任がある。

(3)だが、寄付者である在日外国人には、「その1」で説明したように、罰則は予定されていない。
受け取ってた者が違法性の認識があったという証拠がないのに、大臣を簡単に辞任に追い込めるということになるようであれば、将来これに乗じて、その違法献金が悪用されかねない。

例えば、何処かの国の外国人が、日本に一定期間滞在し、気に食わない政治家達に近づき、その政治団体等に対し日本人名でそれぞれ少額の寄付を行い、当該政治家の大臣就任後に、外国からその違法献金をマスコミにリークし、マスコミがそれを大きく報じれば、大臣を簡単に辞任に追い込むことができるようになる危険性が生じるのではなかろうか。

この場合、報告されている住所に外国人が居住していなければ、「悪用」とわかるから、そのような危険はないと思う方もあるかもしれないが、寄付の時期とリークの時期がズレるので報告されている住所に居住していなくても単に引っ越しただけである場合もあるから、それが悪用されたケースだとは、すぐにはわからないだろう。

つまり、国家主権(国家の独立)の侵害の恐れをなくすための条項が悪用され、大臣が辞任に追い込まれ事実上国家主権(国家の独立)侵害が簡単になされるような事態が将来生まれる危険性が生じるのではなかろうか。

(4)これまでの在日外国人の寄付は、政治家を個人的に支援するために、あるいは、お付き合いで、行われたものなのだろう。

だが、在日外国人の個人献金でマスコミが加熱報道し、大臣が辞任するようなことが続けば、今後、前述の例のようなことが起こる可能性が絶対ない、とは断言できないだろう。

(5)「外国人は通名使用を禁止すべきである」とか、「寄付した外国人にも罰則を設けるべきである」等として、それらを私の指摘する危険性に対する「歯止め」になると主張する立場もあるかもしれないが、それについては、後の投稿で述べることにする。


5.菅首相(当時)の資金管理団体の在日外国人献金問題

(1)前原氏が大臣を辞任して数日後の同月(3月)11日に、菅直人首相(当時)が代表を務める資金管理団体「草志会」が06年と09年に、在日韓国人系金融機関「旧横浜商銀信用組合」(現中央商銀信用組合)の元非常勤理事でパチンコ店経営者から計104万円(06年9月に100万円、09年3月に2万円、同8月に1万円、同11月に1万円)の寄付を受けていたことがマスコミで報じられた。
朝日新聞2011年3月11日3時0分
菅首相に違法献金の疑い 在日韓国人から 首相側未回答

 菅直人首相の資金管理団体が、2006年と09年に、在日韓国人系金融機関の元理事から計104万円の献金を受けていたことが、朝日新聞の調べでわかった。元理事の親族や複数の関係者は元理事について在日韓国人と説明している。政治資金規正法は外国人からの寄付を禁じている。
 複数の関係者を通じて10日夜に首相側にコメントを求めたが、11日午前1時現在、回答はない。元理事には経営する会社を通じて取材を申し入れたが連絡はない。
 献金を受けていたのは菅首相の資金管理団体「草志会」(東京都武蔵野市)。同団体の政治資金収支報告書によると、旧横浜商銀信用組合(現中央商銀信用組合)の元理事の横浜市内の男性(58)から民主党代表代行だった06年9月に100万円、09年3月に2万円、同8月に1万円、政権交代後の副総理兼国家戦略担当相だった同11月に1万円の計104万円の献金を受け取っていた。
 いずれも、献金者名の欄には「通名」である日本名が記載され、職業は「会社役員」とされている。
 この男性は07年6月まで旧横浜商銀信組の非常勤理事を長年務めた。商業登記簿などによると、東京都内のパチンコ店などを経営する会社の代表取締役を務めている。
 朝日新聞の取材に、複数の商銀関係者や親族は、元理事が韓国籍だと話している。
 政治資金規正法は、日本の政治や選挙への外国の関与や影響を未然に防ぐため、外国人の政治献金を禁じている。故意や重い過失があった場合は、3年以下の禁錮か50万円以下の罰金の罰則がある。
 外国人からの献金をめぐっては、前原誠司前外相の政治団体に対して京都市内の在日韓国人女性から献金があったことが4日の参院予算委員会で判明。この女性も日本名での献金だった。前原氏は6日、「金額の多寡にかかわらず、外国人から献金を受けていたことは重い」と話し、外相を辞任した。その後、政治資金規正法の改正に言及する声もあがっている。
 朝日新聞は首相側に、元理事が韓国籍だと認識していたかなどを質問したが、回答はなく、故意や過失があったかは確認できていない。

菅氏の場合は、前原宇治の場合と異なる点がある。
それは、在日外国人からの寄付を受け取った政治団体が自ら代表を務める資金管理団体であり、かつ、金額が比較的多いということである。

(2)菅首相は、同日午前の参議院決算委員会で、献金者について「私が仲人をした知人から数年前に『中学、高校の同期生で不動産関係の仕事をしている人』と紹介された。釣りに誘われて知人と3人で出かけたこともあり、数回会食したこともある」と説明し、献金受領を認めたうえで、「日本名の方で日本国籍の方だと思っていた。外国籍の方とは全く承知していなかった」と釈明し、献金者の国籍、献金額や受領日時を調査中であるとし、「外国籍であることが確認された時には全額を返金したい」と語った。
毎日新聞 2011年3月11日 10時42分(最終更新 3月11日 12時25分)
菅首相:在日韓国人から献金…「外国籍知らず」辞任は否定

 菅直人首相の資金管理団体が、在日韓国人の男性から06年と09年に計104万円の献金を受け取っていたことが11日、わかった。首相は同日午前の参院決算委員会で、献金受領を認めたうえで、「日本名の方で日本国籍の方だと思っていた。外国籍の方とは全く承知していなかった」と釈明した。これに先立つ閣議後の閣僚懇談会では「これからも精いっぱい頑張っていきたい」と辞任しない考えを示した。
 首相は決算委で、献金者について「私が仲人をした知人から数年前に『中学、高校の同期生で不動産関係の仕事をしている人』と紹介された。釣りに誘われて知人と3人で出かけたこともあり、数回会食したこともある」と説明した。首相は献金者の国籍、献金額や受領日時を調査中であるとし、「外国籍であることが確認された時には全額を返金したい」と語った。
 外国人からの政治献金を巡っては、前原誠司前外相の関連政治団体が京都府内の在日韓国人の焼き肉店経営者から05年から昨年にかけ、計25万円の献金を受けていたことが発覚。前原氏は6日に「外国人から献金をもらっていた事実は重く受け止めざるを得ない」と外相を辞任した。政治資金規正法は、外国人や外国政府などの外国勢力が日本の政治や選挙に影響を与えることを未然に防ぐため、外国人からの献金を禁止している。
 菅首相の資金管理団体「草志会」(東京都武蔵野市)の政治資金収支報告書によると、首相は、横浜市内に住む会社役員の男性から、▽民主党代表代行だった06年9月6日に100万円▽09年3月に2万円▽同8月に1万円▽鳩山政権で副総理兼国家戦略担当相を務めていた同11月に1万円−−の4回で計104万円の献金を受け取っていた。
 男性の名義は「通名(日本名)」だった。男性は89年5月から08年6月まで、中央商銀信用組合(旧横浜商銀信用組合)の非常勤理事を務めた。民間信用調査機関によると58歳で、パチンコ店を経営している。
 男性の横浜市内の自宅にいた家族は11日朝、報道陣に「(男性は)ここにはいない」と話した。【中山裕司、曽田拓】

毎日新聞 2011年3月11日 東京夕刊
菅首相:外国人献金 上脇博之・神戸学院大法科大学院教授の話
 ◇認識なし追及は…−−上脇博之・神戸学院大法科大学院教授(憲法学)の話

06年の法改正で外国系企業からの献金は解禁されたが、個人献金が違法のままという現状はバランスを欠いており再考の余地がある。菅首相の場合は金額が大きく、代表者を務める資金管理団体なので外国籍と認識していたら前原前外相より問題は大きいが認識がなければ故意は認められない。故意がないのに責任追及する風潮が良いのか考える必要がある。

(3)同日午後3時前の東日本大震災と東京電力の福島原発事故でマスコミは東日本大震災の報道に集中してきた。

それからほぼ1ヵ月後の4月8日、「菅首相側は元理事が韓国籍であることを公的な書面で確認し3月14日に元理事側へ返金していた」旨、報じた。
朝日新聞2011年4月8日3時2分
菅首相側、外国人献金104万円返金 韓国籍と確認

 菅直人首相の資金管理団体が在日韓国人系金融機関の元理事から献金を受けていた問題で、菅首相側が、この元理事が韓国籍であることを確認し、献金計104万円を返していたことが分かった。首相側代理人が7日、朝日新聞の取材に回答した。
 この問題は先月、朝日新聞が報じて明らかになった。菅首相の資金管理団体「草志会」は、旧横浜商銀信用組合(現中央商銀信用組合)元理事の男性から、2006年9月に100万円、09年に計4万円の献金を受け取っていた。政治資金規正法は、日本の政治や選挙への外国の関与や影響を防ぐため、政治団体が外国人から献金を受けることを禁じている。
 代理人の弁護士が回答した文書によると、元理事側への返金は先月14日。元理事が韓国籍であることを公的な書面で確認したため、としている。また、「返却の事実は政治資金収支報告書に反映させる予定」としている。
 首相は問題発覚後の参院決算委員会で、元理事とは数年前に知り合い、釣りや会食に行く関係とし、「外国籍の方とはまったく承知していなかった」と答弁していた。
 外国人からの献金をめぐっては先月4日、前原誠司前外相の政治団体が京都市内の在日韓国人女性から献金を受けていたことが判明。その後、前原氏は辞任した。

※以上の主要な部分については、私が連載執筆している雑誌『ねっとわーく京都』269号(2011年6月号)で取り上げた(「政治とカネ 連載20 他人名義でのパーティー券購入と在日外国人の寄付」66−68頁)が、このブログでは書く気になれず、取り上げてこなかった。

(続く)