社説
東通原発に活断層/安全性の土台がぐらついた
東北電力東通原発(青森県東通村、110万キロワット)の敷地内を走る2本の断層(F−3、F−9)を調査していた原子力規制委員会が20日、いずれも活断層である可能性が高いとの見解を示した。 活断層の存在が指摘された原発は、日本原子力発電の敦賀(福井県)に続き2例目。原子炉建屋の直下だった敦賀と異なり、東通は離れているが、それでも数百メートルでしかない。 原発の耐震性に影響を与えないかどうかを詳細に調べることはもちろん、敷地内の地質を検証し直すことが不可欠になっている。規制委も関与して徹底した安全性の再確認を進め、運転の是非を最終判断すべきだ。 東通原発が立地する青森県の下北半島には、使用済み核燃料再処理工場などの原子力施設が集中している。その潜在的な危険性を考えれば、原発にとどまらず、広範囲に地質を調べ直すことも迫られている。 東通の敷地内に変形した地層があるのは以前から分かっていたが、東北電は「粘土質の古い地層が乾燥後に水を吸って膨張し、より新しい地層に断層を形成した」と説明し、活断層の存在を否定してきた。 この「膨潤作用説」に対しては、規制委側の専門家から「聞いたことがない」などと疑問の声が上がっていた。規制委は今回、膨潤作用説を一蹴したことになる。 東京電力東通(建設停止中)と電源開発大間(建設中)の2原発も、地層の変形を同じように膨潤作用で説明している。いずれも下北半島にあるが、活断層を否定する理由としては受け入れ難く、再調査が避けられないだろう。 原発に関する国の安全審査指針によると、活断層の真上に原子炉などの重要施設は設置できない。敦賀のように原子炉真下なら廃炉の可能性が浮上することになる。 今回の活断層は真下ではないが、それでも到底安心できない。原子炉建屋の真下にも短い断層(f−2)が存在するからだ。活断層と指摘されたF−3などは原子炉の西側だが、連動の可能性がないかどうかは安全性に決定的な影響を及ぼす。 東北電はf−2を「活動性がない」と見なしているが、活断層が近くにあると指摘された以上、連動についてさらに検証すべきだ。 そもそも活断層に対する国の考え方は甘すぎる。原子炉などの真下でなくても、敷地内に活断層があるだけで既に相当危険な状態ではないか。直下型地震の可能性が出てくるからだ。 周辺住民の安全を最優先にするなら、敷地全域を対象に活断層の存在を認めない方がよほど理にかなっている。 二つの原発で立て続けに活断層の存在が指摘されたのは、過去の調査や審査がいかにずさんだったかの証左でもある。活断層の有無について、全国の原発で徹底的に調査すべきだ。そうしない限り、原発の耐震安全性への信頼は取り戻せない。
2012年12月21日金曜日
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