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世界のモバイル事情

外貨獲得にも携帯電話ビジネスを活用 ─ 100万加入を超えた北朝鮮携帯電話市場の実態(前編)

2012.04.27

人口カバレッジは9割超に達し各種VASも導入済み。但し、利用上の制約が存在

コリョリンクは2011年9月末時点で、453基の基地局を設置済みであり、サービス提供地域も首都平壌のほか、14の主要都市と86の小都市にまで拡大している。面積カバレッジは14%だが、人口カバレッジは既に94%となっており、先進国と遜色のないレベルにまで達している。

同社は通常の音声通話に加え、SMSやMMS、ボイス・メール、ビデオ通話など様々な各種VASも導入済みだ。2011年6月からは顧客間で利用できる残高移行サービスも投入された。さらに、モバイル・インターネット・サービスも始まっている。なお、チャージ用のプリペイド・カード販売店は、平壌を中心に約50店舗にまで拡大している。

このようにサービスのラインナップが増え、利便性も高まる一方で、当局はモバイル・インターネット・サービスの利用を一部の層に限定したり、また通話は国内のみに限るなど、様々な利用上の制約を課している。それゆえ北朝鮮では、携帯電話を所有できたとしても大半の者は、情報ツール、生活インフラとしての活用はおろか、自由なコミュニケーションさえもままならず、本来、携帯電話が持っている多くのメリットを十分に享受できていない状況にある。

また、携帯電話は国内外の情報流出入を促すものであり、情報統制が国家体制維持の要となっている北朝鮮において、携帯電話は危険因子であると言える。それ故、同国では、当局が承認した監視・盗聴可能な端末のみが利用許可されている模様だ。当局の管理下に置かれていない外国人入国者による携帯電話の持ち込みも禁じられている。2011年11月にワールドカップ・アジア3次予選が北朝鮮で行われた際も、日本代表選手や日本からのサポーターらは、携帯電話を持ち込むことができなかった。

外貨獲得の手段に携帯電話ビジネスを活用

自国通貨の信用性が低い北朝鮮にとって外貨獲得は重要な国策であり、携帯電話ビジネスもまた、そのための一手段として活用されている。コリョリンクは2011年2月より、従来の北朝鮮ウォン建ての料金プランに加え、ユーロ建ての「ユーロ・パック」と銘打った特別料金プランの販売を開始している。これは、ユーロで料金を支払うことを条件に、オフピーク時の音声とVASを無料で利用できる特典が付くというもの。外貨獲得に躍起となっている北朝鮮は、携帯電話ビジネスでも、ユーロ払いを促進するこうした方策を採ることによって、外貨稼ぎを積極推進しているようだ。

(後編に続く)


松本 祐一(まつもと・ゆういち)
情報通信総合研究所副主任研究員。日本国際通信(現ソフトバンクテレコム)及びNTTコミュニケーションズで、在日外国人市場における国際電話サービス販売促進業務に携わる。2008年4月より現職。海外のモバイル市場に関わる調査業務に取り組むとともに、会員向け情報提供サービス「InfoCom モバイル通信T&S」の編集・執筆を担当。

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