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北朝鮮の携帯電話加入数は、2008年12月にサービスが始まって以来、右肩上がりの上昇を続けている。サービス開始から3年余が経過した2012年2月には、ついに100万加入突破が伝えられた(ブルームバーグ(2012年2月2日))。これまで謎のベールに包まれてきた同国の携帯電話市場の実態が、サービス開始以降、時間の経過そして加入数の拡大に伴い徐々に明らかになりつつある。
北朝鮮における携帯電話サービスは、同国国営企業の朝鮮逓信会社及びエジプトの大富豪サウィリス一族が手掛ける大手財閥オラスコム・テレコム(注1)が設立した共同出資会社(出資比率:朝鮮逓信会社=25%、オラスコム・テレコム=75%)、コリョリンク(koryolink)(注2)によって2008年12月より提供が開始された。同社は、当局より当初4年間の事業独占権付きの25年間の免許を付与された北朝鮮で唯一の携帯電話事業者である。ネットワークには3G(W-CDMA)(注3)方式を採用しており、契約形態はプリペイド式のみ。コリョリンクのロゴマークには、1日に千里(約4,000km)を走るという、北朝鮮のシンボルでもある翼を持った伝説の馬「千里馬」が描かれている(図1)。
▼図1:千里馬が描かれたコリョリンクのロゴマーク
出典:オラスコム・テレコムのホームページ
なお、北朝鮮における携帯電話サービスはコリョリンクによる3Gサービスが初めてのことではない。これに先立つ2002年11月には、コリョリンクの北朝鮮側の出資者である朝鮮逓信会社とタイ企業ロックスレー・パシフィックによる合弁会社、北東アジア電話通信会社が2G(GSM)方式でサービスを開始しており、加入数は2003年末時点で約2万件に達していた模様である。しかしながら当局は、2004年5月に突如として携帯電話使用禁止令を発布、これにより公には同国での携帯電話使用が全面的に禁止されるまでに至った。この1カ月前の4月に中国国境付近の龍川駅で起こった列車爆発事故に、携帯電話が何らかの関与をしたとする疑惑を発端として、同禁止令が出されたとも言われている。2008年12月にエジプトの協力の下で実現した3Gサービスは、約4年半に及ぶ携帯電話サービスの空白期間を経て、新たに開始されたものだ。
松本 祐一(まつもと・ゆういち)
情報通信総合研究所副主任研究員。日本国際通信(現ソフトバンクテレコム)及びNTTコミュニケーションズで、在日外国人市場における国際電話サービス販売促進業務に携わる。2008年4月より現職。海外のモバイル市場に関わる調査業務に取り組むとともに、会員向け情報提供サービス「InfoCom モバイル通信T&S」の編集・執筆を担当。
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