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2011年12月の金日正総書記の死去を受け、北朝鮮は現在、金正恩氏を国家の新たなトップとする後継体制を固めつつある。こうした中、英テレグラフは2012年1月26日、過去の唐突な携帯電話使用禁止令の再来を彷彿させるニュースを伝えた。韓国のNGOで北朝鮮住民を支援しているGood Friendsの情報によれば、100日間の喪に服している期間中、朝鮮労働党が携帯電話の使用を禁止し、利用した者に対しては戦犯に相当する刑を科すとの警告を発した、とのことだ(テレグラフ(2012年1月26日))。一方でOTMTは、North Korea Techによるインタビューに対し、こうした事実はないとして、これを否定している(North Korea Tech(2012年2月15日))。
相反する情報が交錯しており、禁止の実態は不明確だが、後継体制を整える過渡期にある現在の北朝鮮にとって、国内外の情報流出入の温床になりかねない携帯電話の使用に、これまで以上に警戒心を強めているのは確かなことだと思われる。
但し、今後、2004年5月に発せられたような正式な携帯電話禁止令が再び公布されることはまずないと考えてよいだろう。一時的な使用禁止を伝える同報道が流れた翌月2月にもナジブ・サウィリス氏は北朝鮮を訪問し政府高官と交流しており、新体制下でも引き続き良好な関係が保たれていると想定される。
サウィルス一族にとっても、今まさに成長途上にある北朝鮮の携帯電話ビジネスが、万が一にも停止に追い込まれれば、これまでの莫大な投資が水の泡となってしまうことになり、こうした事態だけは断じて回避しなければならない。携帯電話事業のみならず様々な分野でエジプト頼みになりつつある北朝鮮が、両国関係に大きな亀裂を入れるような行動に出ることも考えにくい。
松本 祐一(まつもと・ゆういち)
情報通信総合研究所副主任研究員。日本国際通信(現ソフトバンクテレコム)及びNTTコミュニケーションズで、在日外国人市場における国際電話サービス販売促進業務に携わる。2008年4月より現職。海外のモバイル市場に関わる調査業務に取り組むとともに、会員向け情報提供サービス「InfoCom モバイル通信T&S」の編集・執筆を担当。
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