「ブラック企業」を読んでいて、「転勤を強要する」みたいな一節があって驚きました。転勤強要。いやな言葉ですねー。
転勤を拒否すればクビ
ちょうど関連するQ&Aを見つけたので転載。以下が質問。
お世話になります。
弊社の社員に転勤を打診したところ、家族の同意が得られないとして拒否されました。
家族(奥さん)が転勤となれば離婚するとまで言っているということです。
就業規則には「異動に関して正当な理由がない限り、異動を拒むことができない」と明記してますが、家族の反対というのは正当な理由になるのでしょうか。
これが前例となれば既婚者は全員拒否できることになるため何か対策を考える必要が出てきます。
また、拒否したことに対して懲戒処分を行うことは可能でしょうか。
こちらがアンサー。
転勤につきましては、会社の人事裁量が広く認められている事項になりますので、御社就業規則の通り正当な理由が無い限り従業員は転勤命令に従わなければなりません。
家族の反対、それも単に離婚されるからなどというのは明らかに正当な理由とはいえませんね‥(中略)
転勤拒否であれば、現実問題としまして本人の主張を認めない限り雇用の継続は不可能といえますね‥
勿論、本人とも拒否の理由等について十分に話し合うことは必要ですが、その上で配慮すべき特別の事情もなく態度も頑なであれば解雇とするしか方策はないものといえるでしょう。
過去の判例でも、こうした特別な事情の無い転勤拒否に対する解雇処分は有効と認められています。
なんというか、フリーランスになった僕からすると、SFのような世界です。「家族が反対している、離婚することになる」という理由で転勤拒否すると解雇って。会社至上主義というか、人を人として見ない、奴隷労働時代のような価値観です。日本社会ではこういう常識がまかり通っているんですね…。
たしかに、思い返すと、大企業時代には「持ち家を買うと地方の工場に単身赴任で飛ばされる」という法則が機能していました。色々目をかけてくれた先輩社員も、数千万円でローンを組んで家を買った3ヶ月後ぐらいに、地方に飛ばされていました。
せっかく家族と住むための広い家なのに、お父さんが返ってくるのは土日だけ。しかも拒否したらクビ。これに加えて、最近は共働きだったり、親の介護なんかもあるので、八方ふさがりです。これは悲劇的じゃないでしょうか。
「転勤を拒否するとクビ」というのは、会社が社員を「駒」として見ていない、前時代的な常識だと感じます(流石に理解のある企業も増えてきているとは思いますが)。50年後の公民の教科書とかに「昭和から平成にかけて、労働者は雇用主の転勤命令を拒否することができない時代が続いた」とか書かれてそうなレベル。
当面この常識は変わりませんから、転勤が絶対に嫌だ、家族の事情で転勤が難しい、という方は、いざとなったら転職・独立できるだけのスキルを磨いておくべきなのでしょう。
個人の事情を無視した転勤命令がまかり通っているのは、「社員は会社の柵から出ないだろう」と会社が高を括っているからです。ということは、非常にマッチョな道ですが、「は?転勤しなきゃいけないなら会社辞めますよ。私が抜けていいんですか?」といえるぐらいになっておけば、不条理を跳ね返すこともできるはずです。
「転勤 離婚」「転勤 うつ病」と検索すると、なんとも悲劇的なストーリーがたくさんヒットします。在宅勤務の許可もそうですが、転勤命令の拒否権の拡大は、日本の会社員が幸せに働いていくために必要なことだと思います。せめて、子どもが幼いうちぐらいは、拒否権が与えられるべきでしょう…。
念のため補足しておくと、転勤自体を問題視しているのでも、家族は一緒にすむ「べき」だと考えているわけでもなく、「拒否するとクビ」という点に問題意識を抱いています。
当たり前ですが、行きたい人は行けばいいと思います。僕も独身なら海外赴任とかやりたいですし。人間なんですから、この程度の拒否権はオプションとして提供されるべきでしょう。仕事より家族が大切な人はごまんといるはずですし。