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ライフ
【産経抄】12月24日
2012.12.24 03:17
[産経抄]
全身の血管が炎症を起こす川崎病は、主に4歳以下の乳幼児がかかる。うかつなことに長い間、神奈川県川崎市に関係する病気だと思い込んでいた。正しくは、昭和42年に世界で初めて存在を報告した、川崎富作医師に由来する名前だ。
▼今、全国で猛威をふるっている感染性胃腸炎の原因となるノロウイルスは、逆に地名から名付けられた。最初に確認された米国中西部の町「ノーウォーク」の最初の3文字「Nor」にラテン語の連結形「o」を補って学名となったという。
▼実はこの名前のせいで、迷惑を被っている人たちがいる。全国で約2万人いるとみられる「野呂」さんたちだ。特に小学生の子供を持つ一部の親たちは、ノロウイルスが流行するたびに、子供たちが学校でからかいの対象になるのではないかと、心配している。
▼改称を訴える会も結成され、厚生労働省や学会、メディアに対して働きかけを続けている。「野呂」さんたちの悩みを知った国際ウイルス分類委員会は昨年9月、「ノーウォークウイルス」と呼ぶべきだ、との見解を発表した。もっとも世間に広く認知されているとは言い難い。
▼病気の名前については、「痴呆」から言い換えられた「認知症」のように成功例がある一方で、患者が望む改称がなかなか進まない場合もある。いずれにしても、論議によって、病気に対する偏見が改まる効果はあったようだ。
▼ノロウイルスの改称運動によって、病気への理解が進み、感染拡大の防止と早期の終息につながるなら結構なことだ。ただ前回大流行した平成18年には、別の深刻な問題が起こった。同じように特定の食品への風評被害が広がっていないか、小欄は、そちらも心配でならない。
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