下記は、法務省の法務総合研究所研究部が作成した資料である。触法精神障害者の再犯について記載されている。
HP資料「法務総合研究所研究部報告23」(気になった部分を抜粋)
http://www.moj.go.jp/content/000074109.pdf
●鑑定人等の再犯可能性等に関する言及の有無
①再犯可能性の有無については、判断が難しいとの見解もあるが、現実に重大犯罪について再犯を犯している事犯の中にはあえて再犯可能性について記載している例も全体の30%と少なからずあり、特に殺人、放火群などにより重大な犯罪において高い率(殺人42%)(放火32%)で言及がなされている。
②治療の限界を論じ、治療体制の強化や法制の不備についてまで言及している例もあった。
③精神医学的な治療による再犯の防止は困難。
(注)法務省の総合研究所が治療の限界を述べているのに、医療観察病棟では、1人当たり年間2,200万円の税金をかけてどんな治療をしているのだろうか?
●処理関係(起訴・不起訴の別)
殺人では心神喪失による不起訴が7割を超える高率。傷害致死では50%。放火58.8%、強わい47.4%、強盗54.5%。
(注)触法精神障害者の犯罪は、親族に対してが8割ほど(岡江前室長が説明会時に説明)
地域から孤立し、密室な状況の中、犯行に及んでいる。こうしたことを起こさせないためにも、社会的な環境要因を見つめ、原因追及をする必要があるのだが、不起訴で終わってしまったら、原因を突き止めることもできない。
ましてや、莫大なお金をつぎこんだ特殊な病棟で罪を償うこともせず社会復帰ともなれば、国民に嫌悪感をもたらし、偏見を植え付けるだけになる。そして、精神障害者や家族はますます孤立する。普通に日常生活を送っている精神障害者も、精神的に追いつめられる。まさに、悪循環である。
また、社会復帰も受け皿不足と不透明な復帰状況では、国民へ理解を強引に求めたところで、感情的に難しいのは明白である。国や県(政治家や行政)は、市井の人たちの気持ちを汲み取らないから、至るところで綻びだらけである。
●退院後再入院の病院の異同
病院で治療を受けて退院した後に再犯を犯している場合に、病院での治療が十分ではなかったのではないかと見るか、あるいは治療を拒否するなどして被疑者自身が自ら招いた被疑者に帰責事由があるのではないかと人的要因と見るかは、具体的事例の事情によるので、統計だけでは分からないし難しい面がある。
●発病年齢
発病時期は20歳代が最も多く、約41%を占め、ついで30%代、未成年者が続く。
●初診年齢
①初診年齢では20歳代が最も多い。殺人、強盗では、発病年齢と初診年齢のピークが一致。
②傷害・致死では、発病年齢のピークより初診年齢のピークが高年齢層にずれている。
③初診年齢は、29歳以下が圧倒的に多い。
●初診時期(前科歴との前後関係)
①精神障害の診療を受けて、治療を受ける機会がありながら、その後に、直近重大前科歴1、再犯と2つの重大犯罪を犯している割合が85%前後を占めている。
②殺人、強盗群、強わい・強姦群で、初診後にも2回以上重大犯罪を犯した者の割合が高く、傷害・致死群で比較的低いのは、前者の群では、早期に発病して診察を受け、継続して治療を受ける機会がありながら、①治療が困難なほど症状が重かった、②その後症状は進行した、あるいは、③被疑者及び保護者に治療の必要性についての意識が乏しかった、等何らかの理由でその機会を生かし切ることができなかったか、一時的に生かしてもこれを継続することができなかったこと等が理由となっているのでないだろうか。
③傷害・致死では、①発病が比較的遅いか、②症状が軽く異常行動の程度が甚だしくなかったため、診察を受けるのが遅くなった、という理由が考えられよう。
(注)法務省の総合研究所では、深く追跡調査もせず推測で理由づけしているが、要は、初診後の早い時期に治療を受けた人が重大犯罪を犯し、傷害・致死などでは初診が遅かったという事実に目を向けるべきであろう。原因が何かを深く追及するのが研究所の役割と思うが、推測だけの記述で、何らの具体的な改善策を提示していない。
●精神病院入院回数
殺人、強盗群では、他の群に比して全体的に入院回数が多く、平均入院回数も5.5回(殺人)、4.4回(強盗)と多い。半数以上が、精神病院への入院を経ていながらも、重大犯罪を繰り返していることを見ると、医療による症状改善が十分でないことがうかがわれる。
●再犯前の前歴後入院回数
退院後に重大犯罪の再犯に及んでいる者の割合が無視できないほど大きいこと、特に、殺人行為に及んでいる殺人群において、その割合が過半数を超えているのは、入院治療が何らかの理由で不十分であるが、退院後の治療等アフターケアが不十分であるかなどといった、現在の制度の限界を示唆しているものと思われる。
●再犯時治療状況
「5年内治療なし」が最も割合が高く、次いで「通退院後5年内」、「退院後通院中」が続く。「退院後通院中」「その他通院中」を合わせると約33%となり、再犯者の場合、通院治療中でも再犯に及んでいる場合が相当高いことがわかる。さらに、「通退院後5年内」の再犯は約30%上っており、通院中と治療後の十分なケアが必要であることがうかがえる。
(注)「5年内治療なし」が54人であるが、「入院中、通院中、その他通院中、通退院後5年以内」の合計は105人で2倍。治療受けた人のほうが再犯が高い驚くべき事実。
●再犯者を取り巻く環境等
保護協力者は、ほとんどが自宅内の父母であって、自宅外に保護について相談協力してもらえる者が存在した者はごく少数である。病院以外では、父母による保護にもっぱら頼っている状態であろうと推測される。
病院関係者以外の公的機関、あるいは地域に住民や民間の援助組織による適切かつ十分な保護協力の場があれば、再犯にいたらなかった場合もあるのではないかと思われるところである。
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