再生の原風景 渡良瀬
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【社会】天国の母から3兄妹へ 1000日後に届いたタイムレター
昨年三月、東日本大震災の津波で亡くなった母親の思いが、絵本に生まれ変わった。宮城県亘理(わたり)町の小野由美子さん=当時(47)=が、生前に三人の子ども宛てに書いた「タイムレター」が被災後に届いたのがきっかけ。愛と感謝にあふれた手紙は絵本「かあさんのこもりうた」(金の星社)となり、悲しみに沈んだ家族に光を届けている。 (杉戸祐子) 「♪だいすき だいすき だいすきよ がんばりやのおねえちゃん いつもいつでも みているよ」。絵本で「かあさんぐま」は子守歌を歌う。「おねえちゃん」のモデルとなったのは、由美子さんの高校一年の長女、好美(このみ)さん(16)だ。 「反抗期で毎日けんかばかり。本当はほめてほしかった。仲良くなれそうな時に逝かれちゃった」。母の代わりに台所に立ち、外で物音がするたびに「お母さん、帰ってきたかな」。そんな日々が続いていた昨年九月、手紙が届いた。由美子さんからだった。 由美子さんは、現在小学四年の次女、望美さん(9つ)の入学時に、ランドセル会社が実施したタイムレター事業に、家族に内緒で応募していた。わが子への手紙が千日後に届けられる仕組み。好美さんと高校三年の長男、勝利さん(18)への手紙も同封していた。 好美さん宛ての便せんには丸文字で「口ごたえをしながらもいっぱい手伝ってくれて、お母さんはとても、とても、とても感謝していました」。好美さんは「気持ちを理解してくれていた。この手紙は宝物だな」。 望美さんへは「げんきに学校にいってくれるだけで、おかあさんはとてもあんしんしていました」。震災後、学校を休んだり、授業中に泣いたりしていた望美さんは「お母さんの字が見られてびっくりした」。勝利さんへは「妹達にやさしいお兄ちゃんになっているように」と願いが込められていた。 夫の好信さん(52)は「親子ともに精神的に追い込まれていた。女房の気持ちが分かって救われた」。 母の思いは連鎖する。金の星社の伊藤美季さん(41)は自身も二児の母で「母と子の結びつきを伝えたい」と絵本化を考えた。同じく二児の母の絵本作家こんのひとみさんは「由美子さんの気持ちを空からたぐり寄せて」ペンを握った。「母の愛情は時間も場所も超える。どんな子どもたちにも、あなたを大切に思う気持ちが必ずあると伝えたい」 絵本では、小野家と同じ五人家族のクマの一家が嵐に遭い、かあさんぐまが行方不明に。残された四匹に、夜空からかあさんぐまのいつもの子守歌「♪だいすき だいすき…」が−。読んだ好美さんは「強くて優しい母だったと誇りに思う。一番の形見は私たちだと思うとうれしい」と笑顔を見せた。 PR情報
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