【動画】「金曜官邸前」、それでも声あげる=山本壮一郎撮影 |
首相官邸前で続く「脱原発」の抗議行動が21日夜もあった。この夏の大きなうねりは衆院選の結果につながらず、脱原発に慎重な自民が圧勝した。民主政権下の「動かぬ政治」へのいらだちから始まった街頭での行動に、参加者らは新たな意味を見いだそうとしている。
最も短い昼が暮れた冬至の夜、官邸前は冷え込んだ。午後6時、ドラムに合わせて「再稼働反対!」の連呼が始まった。主催する首都圏反原発連合によると、今回が36回目になる。
「『脱原発』を進めるなら一人一人が考え、地道に声をあげるしかない」。東京都内に住むアルバイト橋沢達也さん(20)は初めての選挙で、脱原発を訴えた候補と政党に票を投じた。だが自民が圧勝したため、半年ぶりに参加した。
「双葉を返せ」のプラカードを掲げた女性(68)は福島県双葉町から都内に避難中。ほぼ毎週参加してきたといい、「原発を進めたのは自民。私たちは誰に頼ればいいのか。自民をテングにさせないためにも抗議を続けていかないと」と語った。
野田政権が関西電力大飯原発の再稼働を決めたのは6月。直後に万単位の人波ができ、抗議行動は全国数十カ所に広がった。異例の首相との面会も実現。野田政権は「2030年代の原発ゼロ」を打ち出した。
主催団体スタッフの古閑康さん(29)は世間の関心を集めた点は満足しつつ、「感情的に訴えるだけでなく、原発の影響について論理的に訴えていくべきだったのではないか」との思いを明かした。
「再稼働した責任は一生忘れない」「次の政権に『原発ゼロ』を引き継げ」――。参加者たちがマイクを握って叫んだ抗議行動は午後8時に終了。警察関係者によると、参加者数は1千人近くだった。主催団体は「来年も官邸前抗議を続けていく」としている。
呼応した抗議行動は、関西電力本店前(大阪市)や九州電力本店前(福岡市)でも。関電前抗議の主催者の一人は「僕らの権利は選挙だけではない。ここに来て声をあげることに意味がある」と言った。