放送法で規制されるテレビやラジオと違って、本来、自由な表現が許されるのが新聞の特徴。それでも支持政党を明確にするのは難しい?
画像提供/AP/アフロ
米大統領選や衆院選など、ここ最近の選挙報道で驚かされたのが、日米の新聞の違いだ。大統領選では『ニューヨーク・タイムズ』がオバマ氏を支持するなど、米主要紙の多くが支持候補を表明。一方、日本では、全国紙が支持政党や候補を表明することはまずない。世界的にはどちらが一般的?
「政治的立場を明確に打ち出す点では、欧州各紙もアメリカ型といえます。もっとも欧州の場合は、新聞によって保守、左派などの色分けが鮮明で、あえて支持政党や候補を表明するまでもない場合も多いですが」とは、ジャーナリズム研究を専門とする立教大学社会学部メディア社会学科の橋本晃教授。でも、特定の政治的立場を支持する新聞って、公平性の面で問題は?
「中立性と客観報道は歴史的に出自が異なりますし、立場を明確にしたうえでの言論は、率直な民主主義の表現ともいえます。むしろ立場を明かさずに世論を誘導したとしたらアンフェアですよね」
橋本氏いわく、世界的に見て、日本の新聞は“風変わり”。その理由のひとつに発行規模があるそう。
「発行部数で見ると、読売、朝日、毎日は世界の1位、2位、4位。日本の全国紙は世界でも突出した“巨人”です。そもそも新聞に“中立”や“不偏不党”という考えがもたらされたのは、立場を明確にしないことでより多くの読者に対応するという商業的な要請が大きい。日本の全国紙は、現在の巨大な規模を維持するためにも、政治的立場を鮮明にしにくいのです」
また、メディアの論調は各国の世論や国民性にも左右されるとか。
「米国では草の根の民主主義や言論活動が盛んで、新聞もそれに対応しています。一方、日本の新聞が旗幟鮮明にしないのは、政治的立場の表明を敬遠する国民意識との相互作用の結果でもあります」
新聞にもお国柄があるが、いわばそれは国民性の映し鏡ということ。たしかに旗幟鮮明にしないのは、僕ら自身なのかも。
(吉原 徹)
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