ゆく大河あれば、来る大河あり−。今年のＮＨＫ大河ドラマ「平清盛」が２３日の放送（午後８時〜）で最終回を迎える。２０日に東京都渋谷区のＮＨＫ放送センターで開かれた大河の主演バトンタッチセレモニーでは、清盛を演じた松山ケンイチ（２７）と来年の「八重の桜」で新島八重を演じる綾瀬はるか（２７）がそろい踏み。笑顔を絶やさない綾瀬と、あくまで演技に“ど真面目”な松山が対照的だった。
実際に髪をそって清盛役を熱演してきた松山は登場早々、「（撮影終了から）２カ月たって、少し髪の毛が生えてきたので安心しました」と笑顔で報告。最終回について「清盛が生きてきた積み重ねがすべて集約されていて、客観的に見れずに（涙で）目がかすんだ」と語り、満足げな表情を浮かべた。
一方の綾瀬は、「５２年目（の大河）ということで、すごく重みを感じる」と語った。松山は「日本一のスタッフ、キャストと仕事をするので、すべてを任せられる存在が周りにたくさんいる。できるだけ周りに頼って、甘えるのもいい」とアドバイスした。
バトンタッチを記念し、松山と綾瀬はそれぞれの舞台の名産品を交換。松山は神戸ビーフを、綾瀬は福島県会津地方に伝わる人形「起き上がり小法師（こぼし）」をそれぞれ贈った。綾瀬は「昨日の午前３時くらいまでかけて絵を描かせていただきました」と明かし、松山は「綾瀬さんの気持ちが込められている」と感動した様子だった。
質疑応答では、報道陣から松山に、「綾瀬さんに、継承したいことと継承してほしくないことは？」と質問が飛んだ。歴代大河で過去最低の視聴率を記録するなど、作品の内容より視聴率の話題で注目を集めがちだった「平清盛」。恐らく、多くの報道陣が「視聴率」という言葉を期待しただろう。しかし、松山はそれを見事に裏切り、こう回答した。
「僕は大河の主演でものすごく緊張してしまった。緊張しすぎると、役に固執して、自分で表現の幅をそぎ落としてしまう。そこから抜け出すのに時間がかかった。（綾瀬には）力みすぎずにやってほしい」
大役を終えても、演技への自己分析を怠らない。１年間、清盛と真正面から向き合ってきた松山に、徹底した“役者魂”を感じた。（三品貴志）