≪ 注 ≫ この対談は週刊少年ジャンプ(H15.13号)に掲載されたものです。
個人で細々と楽しむだけの為にUPしました。関係者の方々、ご了承頂けると幸いです。



――BUMP OF CHICKENのみなさんは、『ONE PIECE』の大ファンなんですよね?
藤原:昔から毎週『ジャンプ』を買って読んでるんですけど、『ワンピ』は読切(『ROMANCE DAWN』)の時から注目してたんですよ。だから連載が始まったときはうれしくて。そうだ、連載ではルフィに麦わら帽子をあげたのはシャンクスだけど、読切ではおじいちゃんでしたよね?
尾田:シャンクスは連載で出そうと思ってたので、読切では隠してたんです。
増川:わっ、すげぇうれしい、そういう情報(笑)!俺ら毎週『ワンピ』読んでみんなで語ってますからねー。
升:移動の時もみんな並んで『ジャンプ』読んでるもんな(笑)。『ワンピ』は世界が広いから次の展開が全然わからなくて、毎週ドキドキなんですよ。空島にはびっくりしましたよ!「これは思いつかなかった〜!!」って。
直井:別にお前は思いつかなくていいって(笑)!!でもルフィがクロコダイルに水分を吸いとられた時は驚きましたよ。「これで『ワンピ』終わっちゃうよー!!次は誰が主役だ!?」って。
――どれだけファンか伝わりますね(笑)。みなさんそれぞれ、作品の中でお気に入りのキャラクターっていますか?
藤原:僕らは男だから、やっぱりヒロインに気持ちがいっちゃいますね。
升:そう。ナミ(笑)!かわいい感じを時々しか出さないのがいい!!
直井:うん。ナミと結婚してぇ(笑)。
尾田:でも、そうするとサンジと戦わなきゃいけなくなるぞー!?(笑)
直井:俺も今そう思った(笑)。あといいのはウソップ!俺、ウソップが仲間に入った時は本当にびっくりした。唯一あのメンバーの中では普通じゃないですか。でも完全にダメじゃなくて、絵がうまかったり。いいヤツなんだ!!
藤原:ゾロなんかがちゃんとウソップのことを認めてるのがいいよね。それで「こいつは本当にいいヤツだ、ただものじゃねぇんだな」って思う。
直井:あの二人、いいんだよ。ドラム島でドルトンをおんぶして雪山を登ろうとしたウソップがゾロに助けられると、「これから本気パワーを出すとこだったんだから!!」って。そうするとゾロが、「わかってるよ…」。(JC17巻)
尾田:あっ、あれいいでしょ!?あのシーンは見せ場なんですよ〜。あそこは僕的にとても見せ場だったんです!
増川:ドーンとくる見せ場もいいですけど、1コマのはしっこにああいうセリフがあるのも泣けますよね。
尾田:1回の話の中で読者に対してのど真ん中の見せ場はもちろん、僕的なちょっとした見せ場っていうのもあるんですよ。そこに反応してもらえるとうれしいですね。最初『ワンピース』を始める前に思ったのが、「何回も読めるマンガを描きたい!」ってことだった。だから、ちょっとしたところやギャグシーンにもこだわってるんですよ。
藤原:わかります。俺らの曲作りも同じですね。普遍性のあるスタンダードを作るっていう感覚だと思うんです。
直井:マンガも音楽も一緒で、どの部分がいいとかじゃなくて、やっぱり全体なんですよね。好きなキャラもあえて名前をあげればナミやウソップになるけど、全員いなきゃ意味がない。それは俺らみたいなバンドも同じで、藤君のボーカルや俺のベースなんかがあって、全部でBUMP OF CHICKENだから…。
尾田:そう。僕としてもルフィの一味や敵の全員を含めて『ワンピース』なんですよ。僕がこの作品の中で描きたいものは「人間関係」で、テーマは「仲間」なんですけど、仲間と呼ばれる人たちの雰囲気を描きたいんです。それで読者が、「ルフィ一味に加わって仲間の会話の雰囲気の中に入りたい」と思ってもらえたらうれしいなって。
増川:仲間が集まるところ好きです。
升:仲間関係がまだ解決してないっていうのがまた楽しみなんですよね。
直井:えーっと、これはギャグとして聞いて欲しいんですけど、みんなで言ってたんだよね、「まだ音楽家が仲間に入ってねぇじゃん!」って…。
尾田:???
直井:楽隊さがしてません?ちょうど俺らもバンドやってるんですけど…。
――そう言えばルフィは海賊団に音楽家を入れようとしてましたよね(笑)。
藤原:そうなんですよ。ギャグ半分、本気半分の注文なんですが(笑)。
尾田:そうくるか〜(笑)。
――今後の展開に期待ですね(笑)。ところで、尾田さんも以前からBUMP OF CHICKENの曲を聴いていたとうかがったんですが?
尾田:聴いてますよ〜。でも僕、実はBUMPのCDは1枚も買ったことないんです。と言うのも、共通のファンが多いみたいで、みんな送ってくれて。テーマが似てるんでしょうね。
藤原:俺らもさすがに単行本は送られてこないけど、ファンからよく『ワンピ』のグッズをもらったりします。
尾田:ファンの人からよくCDが送られてくるんですけど、その中でたまたま何枚も送られてきたCDがあったんですよ。その時期にちょうどラジオでBUMPの『ダイヤモンド』を聴いて「いいな〜」と思ってたんですけど、「『ダイヤモンド』?なんか見たことあるなぁ」と。それでCDを見てみたら何枚も送られてきてたのがその曲で(笑)。それ以来BUMPのことは気にしてて、アルバムが出るって聞くと買おうと思うんですけど、サッと送られてきちゃうんです(笑)。
直井:うれしいなぁ。実は俺、単行本のイラスト募集(『ウソップギャラリー海賊団』)にイラスト描いたことがあるんです。ちゃんとトーンも張って…(藤原君に)俺、見せたよね?
藤原:うん。見た見た。
直井:ルフィたちがバンドやってて、海岸でたたずんでる絵を描いて。でも恥ずかしくて送れなかった(笑)。
尾田:おっ、おれはぜひ送ってくださいよ!ただ審査はキビしいですけどね(笑)。そうか、みなさん絵を描くんですよね?CDのジャケットを描いたりしてるのは…藤原さん?
藤原:そうです。絵を本業にしている人には申し訳ない話なんですけど、メンバーみんな描くのは好きですね。
――じゃあみなさんやっぱり小さいころはマンガ家をめざしたことも?
藤原:ありましたね(笑)。
増川:4人ともめざしてたよな(笑)。
尾田:(笑)。歌聞いてても歌詞に絵とか絵描きがよく出てきますよね。そう言えば、黒猫と絵描きの歌があるじゃないですか(アルバム『THE LIVING DEAD』収録の『K』という曲)。仕事中にあの曲を聴いてたらうちのスタッフが「ヤバイですよ〜」って泣き出しちゃって、仕事にならなかったことがあったんですよ(笑)。
藤原:それは申しわけないです(笑)。
尾田:本当、いい曲多いですよね。好きですよ。歌詞や曲調もカッコいいし。仕事中はずっと鼻歌を歌ってるんですけど、BUMPの曲も歌ってますね。
――そして今度の映画『ONE PIECE THE MUVIE デッドエンドの冒険』ではBUMPのみなさんが主題歌を担当しているんですよね。
尾田:主題歌『saling day』くり返し聴いてますよ。今日もみなさんに会う前に聴いてきました。
直井:ありがとうございます!昔から4人ともアニメもすごい好きで、アニメの主題歌を担当することはバンドをやる前から夢だったんですよ。尾田さんに気に入ってもらえたっていうのは相当うれしいですね〜。
藤原:正直今回、俺らなりのポリシーを曲げて映画の主題歌を書かないといけないんだとしたら、この話はお断りしようと思ってたんですよ。そうしないと作品にも失礼になると思ったんで…。それで脚本を読ませてもらったら、「これは素で書いても全然大丈夫だ」って。『ワンピ』ってただの夢物語じゃなくて、夢見ることの愚かしい部分も描かれてて、俺はそこがリアルで共感できるなって思ってたんです。マンガの世界観は僕らの住んでる日本からしたら非日常なんですけど、作品の中で流れてるいろんな生きざまや感動は現実にも応用できる。今回の脚本もそういうものになってたし、俺らの曲もそうありたいと思ってるし、そういうものを書いてきたとも思うんで、今回やらせていただいたんです。
尾田:うん、やっぱりBUMP OF CHICKENと『ワンピース』は芯が似てるんですよね。
藤原:しかもちょうど俺らも「元気いい曲をやりたい」っていうのがあったんですよ。最近はずっと聴かせる方向にいってたんですけど、もともと衝動的な早い曲も好きで。そんな時にこのお話があって、本当にタイミングですよね。詞にしても『ワンピ』ならではの、今でしか使えない言葉があるんじゃないかって思えたんですよ。きっとマンガで言うと、「今しか出せないキャラがいる!普通に海賊団の中にい入ってたらあざというかもしれないけど、脇役としていい出しかたができるキャラがいるぞ!!」っていう感覚で…。
尾田:なるほど(笑)。わかりますよ。
藤原:いつもだったら詞を書いても「舵を取れ」みたいな力強い方向に頭をもっていかないし、「灯台」なんて言葉は出てこないと思うんですよ。でも今回は素でそれが浮かんできて。これは本当『ワンピ』だからこそ出てきた言葉で、俺らもこういう曲に出会えると思ってなかったからびっくりしてるんです。
尾田:今回の映画は初めての95分の長編で、監督もTVアニメの総監督をやってくださってる宇田鋼之助さんで、今まで以上の力の入れかたなんですよ。そういう時に、作品的にわかりあえるBUMPに主題歌やってもらえて僕もうれしいですね。
――では最後に、みなさんから尾田さんにひと言ずつお願いします!
直井:作品を見て自分たちと共通する部分を感じてたから、会えて本当にうれしかったです。また会いたい(笑)!
藤原:『ワンピース』は作品自体とても繊細で、繊細だからこそ力強さが際立ってくる優しい作品だから、尾田さんもきっと優しい人なんだろうなって思ってたんですよ。そうしたらやっぱりそのとおりの人で。あと当然そうだろうって思ってたんですけど、ものすごく頭のいい方で話してておもしろかったです。
升:やっぱり結構考えてることは似てるんだなと思ったんですけど、僕らはもうあまりにファン的でしょうもない感じで(笑)。立派な大人の人と話して、すごい勉強になった気分ですね。この職業をやっててよかったなぁ的な(笑)。
直井:よかったなぁ的でシメかよ(笑)!!
増川:尾田さんは自分自身に対しても作品に対しても冷静な目をもってて、すごいなと思いましたね。これからも頑張ってください!
尾田:ありがとうございます!!BUMPのみなさんは会った瞬間から同士のオーラが感じられて、俺も楽しかったですよ。ンー、でもこれからは頭がいいっていうイメージを守らなきゃいけなくなりそうで大変だな(笑)。






升くんの最後の言葉がすべてな対談ですね(笑)。対談の意図と商売性を理解した尾田に軽くあしらわれてるなーという感じです。なんとか対抗できてるのが、藤君くらいですけど、でもまぁ、その藤君の独特の観点が垣間見れて、とても楽しい対談でした。そして、尾田のエネルっぷりにある種の感動ですか(笑)。