いつ、どんな場所でどんなナメクジを見たのか。白地図には詳細な目撃情報が記入されている(一部画像処理しています)
で、生息分布マップから分かったのは、チャコウラがじゅうたん爆撃のように列島を侵略し、フタスジを蹴散らしているかというと、そうではない。フタスジもなかなかしぶとく、庭木がうっそうと茂り、ジメジメしているような場所を死守。チャコウラは丘陵を開発した建売住宅街のような乾燥地帯に進出。双方がうまくすみ分けをしているもようなのだ。
なお、消えたキイロについては、これまで目撃情報が1件も寄せられていない。
外来種の侵入の歴史を整理すると、第1波が明治維新のキイロ、第2波が太平洋戦争後のチャコウラ。実は第3波が2000年代に押し寄せていることが、寄せられた目撃情報から明らかになっている。
■北海道から宅配便で届いた新顔
国立科学博物館動物研究部の長谷川和範さんによれば、2006年の8月、茨城県土浦市内で新顔のマダラコウラナメクジが見つかり、生息域をじわじわと広げている。マダラは原産地がヨーロッパの西部と南部。乳白色で背中に灰褐色のヒョウ柄模様がある。体長は15センチと大柄だ。
北海道の阿寒湖畔でアイヌ民芸品店「熊の家」を営む藤戸茂子さんから、やはり新顔のベージュイロコウラナメクジが宅配便で送られてきたのは、06年の9月。ベージュイロは原産地がスウェーデン。文字通りベージュ色で体長は2~3センチと小柄だ。
第3波の外来種は、園芸ブームを背景に、園芸店ルートで上陸したとみられる。マダラやベージュイロがチャコウラに取って代わるのかどうかは、しばらく様子を観察しないと分からない。
こうしたナメクジの外来種の動向を眺めていると、庭先でも暮らしのグローバル化による「文明の衝突」がおきていることがよく分かる。
(ジャーナリスト 足立則夫)
足立則夫(あだち・のりお) 1947年東京都青梅市生まれ。日本経済新聞の生活情報部の記者、特別編集委員などを務める。記者としては珍しく行動がのんびりしている。41年間勤め上げ、2011年10月末退職。著書に「遅咲きのひと」「ナメクジの言い分」など。
※「定年世代 奮闘記」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「ようこそ定年」(社会面)と連動し、筆者の感想や意見を盛り込んで定年世代の奮闘ぶりを紹介します。
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