1776年7月4日、アメリカ独立宣言が発せられた。独立当時の13州は、連合規約を結んではいるものの、緩やかな結びつきの諸邦連合を作った。中央政府である連合会議には課税権・通商規制権限・常備軍保持がなく、政治経済的に弱体で、治安も混乱した。このために、強力な中央政府を作ることになり、1787年5月、フィラデルフィアで憲法制定会議が開催され、アメリカの憲法が1788年6月に9州の承認を得て発効した。
その憲法での税金に関する記述のあるところを拾い出してみると次のようなものだ。なお、訳文はアメリカ大使館のホームページから借用させていただいた。
第3節:
〈下院議員および直接税は、この連邦に加入する各州の人口に比例して、各州の間で配分される。各州の人口は、年期契約奉公人を含み課税されないインディアンを除外した自由人の総数に、自由人以外のすべての人数の五分の三を加えたものとする〉。実際の人口の算定は、合衆国連邦議会の最初の集会から3年以内に、そしてそれ以後十年ごとに、議会が法律で定める方法に従って行う。下院議員の定数は、人口3万人に対し一人の割合を超えてはならない。ただし、各州は少なくとも一人の下院議員を持つものとする。以下略。〔〈 〉内は修正第14条第2節で改正〕
第8節
(1)連邦議会は次の権限を有する。合衆国の国債を支払い、共同の防衛および一般の福祉に備えるために、租税、関税、付加金、消費税を賦課徴収すること。ただし、すべての関税、付加金、消費税は、合衆国全土で同一でなければならない。
下院議員及び直接税は各州の人口に比例して配分されるという。ここにおける租税は何を意味するかは、何も触れていないが、直接税は関税を除くあらゆる税金だと言う。関税の管轄は連邦政府にあり、直接税は州が課している税、連邦政府も平行して課す税と言うものであった。
第9節
(1)現存の諸州のいずれかが、入国を適当と認める人々の移住および輸入に対しては、連邦議会は1808年以前においてこれを禁止することはできない。しかし、そのような輸入に対して、一人当たり10ドルを超えない租税または入国税を課すことができる。
(4)人頭税〈その他の直接税〉は、前に規定した国勢調査または算定に基づく割合によらなければ、これを賦課してはならない。〔〈 〉内は修正第16条で改正〕
ここで見られるように、連邦政府は連邦所得税を課すことは触れられていない。関税により連邦政府の平時の税収は確保されていたと言う。実にこの規定により連邦所得税が合憲か違憲かという議論になる。そのために1913年の第16次修正憲法により連邦所得税が初めて合憲となり、個人所得税が徴収されるようになる。
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