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王都大侵攻編
第十三章 エロ猿
 目が覚めると腕と右半身に重さを感じた。その正体を確認すると、
「……ああ、そうだった。一緒に寝たんだった」
 毛布は掛けられているので見えはしないが生まれたままの姿のイリスがオレの腕を枕にしてこちらに体にしっかり抱き着きながら眠っていた。寝顔は幸せそうに微笑んでいるようにさえ見える。
「ん……あぜる……」
 一瞬起きたのかと思ったが寝言らしい。そこまで愛されていると知っても気恥ずかしさはなくむしろより愛おしさが湧いてくる。こんなに早くイリスとこういう関係になったことでヘルメスさんに対して申し訳ない気持ちはあるものの、この幸せそうな顔を見ているとそれ以上のもの手に入れたという気持ちになってしまうので自分のことながら始末に負えないと思った。または節操ないとも言うが。
 可愛い寝顔を見ながら頭を撫でているとイリスが目を覚ます。
「悪い、起こしちまったか?」
「ううん、大丈夫。ふぁ……よし、起きた」
 欠伸一つで目が覚めるとは何ともうらやましかった。
「でも、アゼルがこんな風に起きるのなんて意外だね。村では全然起きなかったのに」
「いつもはそうなんだが今日は何故かすっきり目が覚めた。あれだけ激しくしたからかもな」
「もう!」
 殴られた。痛くなかったが。
「何が優しくする、よ。あんな獣みたいに激しくして」
「最初の方は優しくしたし、それにイリスだってなんだかんだ最終的にはノリノリだっだじゃん」
「うるさい! 変なこと言わないで!」
また殴られた。今度はちょっと痛い。
「しかし、不味いことになったな」
「何が?」
「イリスとこうなったからにはヘルメスさんに言わないわけにはいかないけど、あんだけ大見得きって預かった手前言い出しにくいしどうしたもんかなー」
「……後悔してるの?」
 イリスは心配そうに聞いてくる。
「まさか、どっちかって言うと何人子供作ろうかってことの方が心配」
 このジョークにイリスはなにも言わなかった。顔が真っ赤である。
「言っとくけど後半は冗談だぞ」
「わ、わかってるよ。いきなりだったからびっくりしただけ」
「今は、な」
 口をパクパクさせて何も言えないイリス、面白いものが見れた。
「それはそうとして、こうなったら一回挨拶に言った方がいいよな。ちゃんとしときたいし」
「それなら大丈夫だよ」
 予想外の言葉だった。
「大丈夫? 何が?」
「前もって言われてあるから。アゼルとこういう風になっても挨拶とかいらないから好きにしていいって。ま、孫ができた時にはさすがに帰ってくるように言ってたけど」
「まったく、あの人は……ってことはなにか、イリスとオレがそうなるってわかってて預けたってことか?」
「うん、ガンガン攻めろって言われてたし」
 とんだ仰天発言である。まさか、そんなことになっていようとは。
「私がアゼルの事好きになってたのバレバレだったみたい。うまく隠してたつもりなんだけどな」
「オレは全然気づかなかった。で、いつからオレの事好きだったわけ?」
 言いたくないと強情張っていたけど、キスして黙らせた。
「気付いたら好きになってたの! でも、最初にあった時から良いなとは思ってた! これで満足!?」
「おお、超満足」
「……アゼルって普段は温厚で優しいくせに戦いだったりこういう時だったりだと肉食って言うか獣性丸出しになるよね。体の中に何か別の生き物を飼ってるんじゃない?」
「たぶん狩猟生活がオレに眠ってた獣の本能を呼び起こしたんだろうなあ。こういうのは嫌いか?」
「……別に嫌いじゃないよ」
「ならよかった。さてと、そろそろ起きてようか。風呂入ったりしたいし」
「それは良いけど朝ご飯は食べないでね、今日こそアゼルには私の出来立ての料理を食べてもらうんだから。それと」
 先程のお返しとばかりにキスされた。
「もう娼館になんて行かないでよね。もし、したくなったら私がいつでも……ね?」
 こんな可愛いことを言われてしまっては男として張り切ってしまうではないか。オレ達がベッドから出るのは結局これからしばらく経ってのことだった。


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