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「典型事例」指摘次々 東通、活断層で専門家全員一致
 | 東北電力東通原発の敷地内断層を「活断層」と断定する指摘が相次いだ原子力規制委員会の評価会合 |
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 | 敷地内断層が活断層の可能性が高まり、運転停止の長期化が必至となった東通原発 |
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「典型的な活断層だ」。20日に原子力規制委員会が東京都内で開いた東北電力東通原発(青森県東通村)の敷地内断層に関する評価会合では、出席した専門家全員がそろって「敷地内に活断層がある」との見方を示した。規制委の島崎邦彦委員長代理は「『活断層ではない』という主張はとうてい受け入れがたい」と断定し、東北電のこれまでの主張を一蹴した。
会合には13、14日に現地を調査した島崎委員長代理ら専門家5人が出席。会場中央のスクリーンには約2時間、各専門家が用意した「活断層」との根拠を示す調査資料が次々と映し出された。 熊木洋太専修大教授は「過去の地震の起きた断層と非常によく似ている」と指摘。地層のずれについて「粘土層が水を吸って膨張する『膨潤作用』が原因」とする東北電の説明を「そうした痕跡はなく、非常に疑問」と否定した。 千葉大大学院の金田平太郎准教授は「(断層の)変状に膨張がかかわっている可能性はある」としながら「全ての変状を膨潤で説明するのは難しく、一部は活断層と考えられる」と強調した。 産業技術総合研究所の粟田泰夫主任研究員は「敷地内に広い範囲で断層による変異がある。活断層の可能性を否定するのは、ほとんど不可能」と言い切り、独自に作った活断層分布図を示した。 東大地震研究所の佐藤比呂志教授も活断層と判断。さらに「下北半島には複数の原子力施設があり、沖合から陸上まで地下構造を調査すべきだ」と指摘した。 島崎委員長代理は終了後、報道陣の取材に「活断層の揺れの規模などを推定するのは、事業者の役割。その調査結果が適正か判断する」として、東北電が再稼働を目指す場合は、あらためて耐震性の評価が必要になるとの見解を示した。 東北電は事前に会合での発言機会を求めたものの認められず、幹部や担当者が一般傍聴席で専門家の主張を聞くだけとなった。 終了後、報道陣の取材に応じた千釜章土木建築部長は「詳細な調査を行って評価しており、断層に活動性はないと考えている」と強調。意見を述べる26日の会合に触れ「会社の考えをきちんと説明したい」と、ややこわばった表情で話した。 一方、東通村の越善靖夫村長は村役場で記者会見し、「活断層ではないと思っている。東北電が26日に調査団に説明することになっており、現段階で軽々しくは言えない」と述べた。
◎安全性の再評価重要 さらに詳細な調査を 東北・専門家の見方
東北電力東通原発の敷地内の断層が活断層の可能性が高まったことを受け、東北の研究者は、施設全体の安全性を高める対策や、下北半島全体のより詳細な断層調査の必要性を指摘している。 東北電力と、隣接地に原発建設を予定する東京電力は耐震性の再評価を迫られるのは必至だ。 原発の耐震設計などに詳しい東北大災害科学国際研究所の源栄正人教授(地震工学)は「活断層と判断されたなら安全性を再確認するのは当然だ」と強調。「活断層で想定される揺れに対して施設の耐震性の余裕がどれほどあるかがポイント。配管や付帯設備も含めプラント全体で安全性を再評価することが重要だ」と訴える。 同研究所の遠田晋次教授(地震地質学)は、旧原子力安全・保安院の専門家会合で東北電の「膨潤」説に疑問を提示し、より詳しい調査の必要性を指摘していた。 遠田教授は「敷地内の地層は東西から圧縮されるように変形していた。粘土層の膨張で圧縮力が生じるとは考えにくい」と当時を振り返る。 ただ、活断層説には慎重な見方を示し、有識者会合が13、14の両日調べた4本の断層について「ずれの量は大きくなく、地震を起こす断層とは感じられなかった。別の断層が動いた影響で一緒にずれた可能性がある」と分析する。 東通原発がある下北半島には使用済み核燃料再処理施設(六ケ所村)や建設中の大間原発(大間町)など原子力施設が集中する一方、周辺には複数の活断層がある。 「断層の活動性の評価は難しい」と話すのは、弘前大地震火山観測所の小菅正裕准教授(地震学)。直下型地震は数千年から数万年の間隔で起きるとされ、データが不足しているためだ。「下北半島付近の地震活動は今は活発ではないが、将来は分からない」として、継続した調査の必要性を説く。
2012年12月21日金曜日
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