モジモジ先生事件は「表現の自由」の危機――憲法研究者67人が共同声明
オルタナ 12月21日(金)13時3分配信
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8月、大阪市で行われた住民説明会で質疑する下地准教授 |
阪南大学経済学部下地真樹准教授(40)が大阪府警に威力業務妨害などの容疑で他1人とともに逮捕された事件を受け、大学教授ら憲法学者67人がこのほど、「今回の逮捕は憲法に定められた表現の自由を不当に侵害する」とした共同声明を出した。
呼びかけ人は、聖学院大学政治経済学科の石川裕一郎准教授や龍谷大学法務研究科法務専攻の石埼学教授ら5人だ。
下地准教授らは10月17日夕方、JR大阪駅構内で拡声器を使い、大阪市の震災がれきを受け入れる施策について、「がれき反対」とデモを行った。駅構内250メートルを約40人で、ビラを配布しながら行進した。
下地准教授は、「震災がれきに含まれる放射性物質やアスベストなど、本来焼却してはいけない有害物質を全国で焼却し埋め立てようとしている」と主張し、大阪市が来年から開始する震災がれきを受け入れる施策について反対した。
大阪府警は12月9日、この行為に対して無断でのデモ行為と、駅員の呼びかけに応じなかったとして、威力業務妨害と不退去の容疑で逮捕した。
共同声明では「本件宣伝活動は、ハンドマイクなどを用いて、駅頭で、大阪市のがれき処理に関する自らの政治的見解を通行人に伝えるものであって、憲法上強く保護されるべき表現活動だ」とした。
続いて、「仮にデモがJR大阪駅構内であったとしても、駅の改札口付近など通行人の妨げになるような場所ではない。せいぜい同駅の敷地内であるにすぎず、公道との区別も判然としない場所。伝統的に表現活動の場として用いられてきたパブリック・フォーラムに該当すると考えられ、施設管理者の管理権は、憲法21条1項の『表現の自由』の前に、強く制約される」と主張した。
下地准教授は、「モジモジ先生」の愛称で知られ、大阪市のがれき受け入れ問題に関して反対運動を起こしていた中心的人物だ。
8月に開催された住民説明会で、橋下徹市長らに向けて、政府や環境省、大阪府市の広域がれき処理の対応について厳しく追及した様子がネット上で話題となった。
12月5日に出演したラジオ番組では、「がれき処理に関する環境省の検討会の議事録が隠されている。行政は東電原発事故で大量に拡散した放射性物質を閉じ込めて管理するという発想が基本的に欠けている」とも述べている。
共同声明は「市民の正当な言論活動に対し、刑罰権が恣意的に発動されるならば、一般市民は萎縮し、政治的な活動を差し控える。そうなると、民主的な議論の結果も歪められる」とも指摘している。
大阪市では12月5日、試験焼却した焼却灰の放射性セシウム濃度が安全基準を満たしたとして、此花区の人工島「夢洲(ゆめしま)」の最終処分場「北港処分地」で埋め立てを始めた。2013年2月から本格処理を始め、2014年3月までに最大3万6千トンを処理する計画だ。(オルタナS副編集長=池田真隆)
最終更新:12月21日(金)13時3分
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