東日本大震災:福島第1原発事故 被ばく調査、乳歯保存「拒否」 「子供守る責任放棄」 歯科医、県の対応批判
毎日新聞 2012年12月19日 東京朝刊
◇「脱原発」方針と矛盾
原発事故後の福島県の子供たちの内部被ばくを調べるため乳歯の保存を呼びかけた県議会での提案に対し、福島県が「反原発命(いのち)の主張」とレッテルを貼り、拒否のための情報収集をしていた実態が明らかになった。復興に向け「脱原発」を掲げる中での県の言動とあって、提案した県議は「事故で被害を受けた県としてあってはならない」と憤った。【日野行介】
同県郡山市選出で自民党の柳沼(やぎぬま)純子県議(66)は昨年夏、広島市立大広島平和研究所の高橋博子講師が内部被ばくの証拠を残すため乳歯の保存を呼びかけているのを新聞記事などで知った。高橋講師に連絡を取り、その意義に賛同して昨年秋の県議会で取り上げるのを決めたという。
柳沼議員は「内部被ばくがあったか(の証拠を)残せる方法。どんなささいなことでも原発事故後の全てのデータは残しておくべきで、県がやるべきことだと思った」と振り返る。しかし、期待に反して、県から前向きな答弁はなかった。
県は昨年8月、「『脱原発』という考え方の下、原子力に依存しない社会を目指す」とする「復興ビジョン」を決定。柳沼議員は「原発はいらないと言っている県が『反原発だから』という理由で(乳歯保存を)嫌がるのはおかしい。前向きな答弁が当然のはずなのに」と怒りをあらわにした。