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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第7回】 2012年12月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
みわよしこ [フリーランス・ライター]

自民圧勝で生活保護受給者は絶望の淵に
元公務員ワーキングプアが語る貧困世帯の悲惨な現場
――政策ウォッチ編・第7回

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 問題を抱えた児童・生徒の家庭は、人間関係が「めちゃくちゃ」であることが多い。その背景には、親世代、あるいはその前の世代からの貧困の連鎖がある。児童・生徒だけを指導すれば、問題が解決するわけではない。さまざまな意味での支援が必要だ。支援の内容は、福祉・子育て支援・不登校問題に対する支援・学力向上……など多岐にわたる。しかし、多くの自治体で、それらの支援は、いわゆる「縦割り」になっている。連携して機能する仕組みにはなっていない。

 平田さんが現在住む町では、自治体も町も小さいために、連携が「ある程度できている」という。自治体が小さいので、「横のつながりがしっかりしている」のだそうだ。困窮家庭の子どもの支援では、保健・福祉・不登校など教育面での支援・虐待の可能性があれば児童相談所などを含めた支援体制が必要だが、現在住む町の役場では、それらの窓口が同じフロアにある。必要があれば、すぐ、近くにいる担当者につなぐことができる。

 一方、平田さんが指導員の仕事をしていた北海道の中都市では、子育て支援はその市の教育委員会が行なっていたが、児童相談所は札幌市にあり、連携を取ろうにも取れない体制だったそうだ。

今は人生の休憩時間
「つなぐ」人になりたい

 平田さんは今後について、

 「組織の中で仕事をするのは、自分には厳しいと思います」

 という。精神疾患のこと、年齢のこと、職歴のブランクのこと。生活保護を利用した時期があることも、再度の就労に対して、決して有利には働かないだろう。

 今は、仕事というより、「つなげる」役割を担う人間になりたいと思っている。報酬を得る仕事にすることは、今のところは考えていない。困っている人と支援を「つなげる」。支援と支援を「つなげる」。グチや悩みに黙って耳を傾ける。「そういうことができたらいいのかなあ」と、なんとなく考えている。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル みわよしこ

急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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