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「薬の町」に歴史の証人 「杏雨書屋」が移転へ

大正初期の道修町。右側が武田長兵衛商店(「道修町資料保存会」提供)
杏雨書屋が移転する武田薬品工業の旧本社ビル(右、大阪市中央区道修町で)

 「薬の町」として知られる大阪市中央区道修町(どしょうまち)に、薬に関する資料館「杏雨書屋(きょううしょおく)」(大阪市淀川区)が来秋、移転することになった。

 これまでは研究者が中心に利用する施設だったが、移転後は一般向け展示も予定。製薬各社の転出が続いて様変わりする道修町の歴史に触れる場になりそうだ。

 資料館は、1923年の関東大震災で貴重な文献が失われたと聞き、武田薬品工業の創業家・武田家が、医薬の資料を集め始めたのが始まり。武田家から文献3万点12万冊の寄贈を受けた「武田科学振興財団」が78年、淀川区の同社大阪工場の一角に杏雨書屋(3階建て、約1000平方メートル)を整備した。

 収蔵品には、平安時代に中国の医学の古典を再編集した「黄帝内経太素(こうていないけいたいそ)」(国の重要文化財)や、江戸期に刷られた日本初の本格的西洋医学の翻訳書「解体新書」など貴重なものが含まれる。近年、資料の寄贈が相次ぎ、計4万点15万冊を所蔵し、手狭になっていた。

 同財団が来秋、設立50周年を迎えることもあり、同社の前身・武田長兵衛商店があった地に立つ同社旧本社ビル(5階建て)に資料館を移転することに。新資料館は約1400平方メートルで、これまで一般公開は年2回だったが、常設展示も行う。淀川区の杏雨書屋は移転準備のため、来年1~9月はいったん休館とする。

 道修町周辺に集まっていた製薬、医療関係の企業は90年代後半頃から、本社機能を東京に移転させる所が増加。東京と道修町の2本社体制を維持する武田薬品工業も2007年4月、広報・IR部門を東京に集約した。同財団の横山巖理事長は「育ててもらった創業の地に杏雨書屋が移るのは感慨深い。みなさんに広く知ってもらいたい」と話す。

 大阪の歴史や文化に親しむ「船場大阪を語る会」会長で、道修町で生まれ育った三島佑一・四天王寺大名誉教授(84)は「製薬各社が東京に移転するのをさみしい思いで見てきた。研究成果も新資料館で公開すれば、道修町の歴史を学ぶ人が増えるだろう」と期待している。(山村英隆)

 <道修町> 江戸時代に薬専門の株仲間が集まり、第1次世界大戦前後に西洋の薬を扱う店が増えた。武田薬品工業、塩野義製薬、田辺製薬(現・田辺三菱製薬)が道修町御三家と呼ばれ、町内には薬の神様をまつる少彦名(すくなひこな)神社もある。同神社に併設されている「くすりの道修町資料館」によると、周辺の製薬、医療関係の企業は80年代には300社近くあったが、現在は200社を切るほどだという。

2012年12月21日 読売新聞)

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