「鳴り響け自由の鐘」

京都大学にみる暴力の実態=京都民報社刊（1976年3月発行）

　熊野神社の南西、丸太町通りに面した熊野寮は鉄筋四階建、三棟の近代的な建物。

「明るく住みよい寮を」との京大生の期待をになって一九六三年に完成しました。

突然数名の男が・・・

  この寮で暴力学生が、彼らに反対する寮生を暴力的に追い出しにかかったのは、一九七一年から。

　法学部のN君(当時二回生)は、一九七二年秋、この被害者となりました。

　九月二十六日の朝七時前のことです。まだ寝ていたN君の部屋のドアをはげしくたたく者がいます。

　不審に思いつつN君はシャツ一枚で出て行くと、突然数名が殴りかかってきたのです。

　その前日、暴力学生(寮生)の八島久男(当時文学部四回生)が、学内の暴力事件で告訴され、逮捕されていました。

　N君への暴力は、日ごろから暴力に反対し、告訴を支持してきたN君が「寮自治を破壊し、寮友を権力に売り渡す」ことに「同調」したからというのです。

　N君は全く突然のことに抗議しましたが、うむを言わさずシャツ一枚のまま放送室に連れ去られ、全寮放送のマイクを突きつけられて「自己批判」を要求されたのです。

　それから延々三時間、暴力学生の罵声と「ガツン」という顔を殴る音、そして途切れ途切れに聞こえるN君の抗議の声が、全寮放送で流されたのです。

　当時工学部1回生のBさんは、「身の毛のよだつ思い」でこれを聞いたといいます。
　「自己批判」を拒否したN君はその後、寮自治会代議員会、寮生大会の場で繰り返し残虐な暴力を受け、「顔の形が変わった」ほどです。

　寮生大会には一般の寮生の多くが、「血だらけになった顔を何時間も殴り続けるなんて、気持ち悪くて見れない」「やめろといって止まるものでもない」といってほとんど参加せず、悲惨な「暴力大会」となったのです。

　こうしだ事態の中でN君は退寮し、「人間の住むところでなくなった」Lとして幾人かの寮生も退寮しました。