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社説

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「東通」活断層 下北の総点検が必要だ(12月22日)

 直下ではなくてもすぐ近くに活断層があるのなら、再稼働など考えられないのではないか。

 むしろ、原発がそこに存在すること自体が問われていると言えよう。

 原子力規制委員会の専門家調査団は、東北電力東通原発(青森県東通村)敷地内にある2本の断層を「活断層の可能性が高い」と判断した。

 他にも複数の活断層が原子炉周辺にある疑いが強いという。建屋から約50メートルの至近距離を走る活断層の存在も指摘されている。

 粘土が水を吸って膨張したことによる「膨潤(ぼうじゅん)」が地層変形の原因と主張する東北電力は、「計画段階から詳細な地質調査を行い、活動性はなく耐震設計上、考慮する必要がない」とコメントした。

 調査団の判断に耳を貸そうとしない東北電力の姿勢は、安全より経営を重視しているとしか思えない。

 断層については、経済産業省の旧原子力安全・保安院ですら「活断層ではないとするにはデータが不十分」と指摘していた。

 「万全」を科学的に証明できない限り、再稼働はあり得ない。現在の技術で「万全」が可能かどうかにも疑問がある。東北電力は、活断層が何本もある場所に原発を造った責任を自覚すべきだ。

 青森県の下北半島では、東北電力の「東通」に加え、そのすぐ北側で東京電力が原発2基の建設を計画。大間町では電源開発が、対岸の函館市などの強い反対にもかかわらず、大間原発の建設を強行している。

 さらに、六ケ所村では日本原燃が使用済み核燃料再処理工場、核燃料用ウラン濃縮工場など、核燃料サイクル関連の施設を整備。むつ市でも東京電力などの子会社が使用済み核燃料の中間貯蔵施設を建設中だ。

 これだけ原子力関連の施設が集中している以上、半島全体の断層の状況をあらためて綿密に調べなければならない。

 東北電力「東通」を調査した原子力規制委の島崎邦彦委員長代理は、「東京電力の原発建設敷地内にも延びる一連の活断層が存在する」と話している。

 また、半島の東にはマグニチュード8級の地震を起こすとされる「大陸棚外縁断層」があり、大間の南西側海域でも活断層の存在が指摘されている。

 原子力規制委に徹底的な調査を求めたい。結果によっては「立地不適」もあり得るだろう。

 経済界には、自民党の政権復帰で原発再稼働への期待感も生じているようだが、規制委に期待されるのは、科学的な知見にのみ基づく、冷静で公正な判断だ。

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