社説:安倍外交とアジア 地域安定を日本主導で

毎日新聞 2012年12月22日 東京朝刊

 安倍外交がさっそく始動した。まずは日韓関係の立て直しだ。

 安倍晋三自民党総裁は朴槿恵(パククネ)氏が韓国の次期大統領に選出されたのを受けて、日韓議員連盟幹事長の額賀福志郎元財務相を特使としてソウルに派遣する考えを示した。自民党の衆院選政策集にある竹島の日(2月22日)の政府主催式典開催はとりやめる方針だ。さっそく関係改善のメッセージを出したのである。

 李明博(イミョンバク)大統領の竹島上陸で悪化した日韓関係の修復には、双方の指導者が交代する今が最大のチャンスである。安倍氏は来年2月25日の朴大統領就任式に出席する方向で調整しているが、竹島の日はその3日前にあたる。政府主催の式典は日韓両国の新体制が出だしから対立構図を抱え込むことになりかねない。見送りは賢明な判断である。額賀氏の特使派遣も政治家同士のパイプ強化につなげたい姿勢の表れだろう。

 竹島を実効支配している韓国が李大統領の上陸のようにことさらそれを誇示すれば、日本の対韓感情を再び悪化させ、日本側は厳しく対応せざるを得ない。安倍次期政権は韓国側の出方を注視しつつ、日本からことを荒立てない静かな外交を展開していく構えとみられる。こうしたサインに韓国も応えてほしい。

 北朝鮮の事実上の長距離弾道ミサイル発射を受け、朴氏は「しっかりした安保と信頼の外交」が重要だと語っている。それには米国を軸にした日米韓の連携が不可欠である。安倍氏が日韓関係の改善に道筋をつけた上で年明けに訪米すれば、3国の結束強化にも役立つはずだ。

 日本は竹島以外にも中国と尖閣諸島、ロシアと北方四島の問題を抱えている。日中対立が長期化するとみられている中、韓国、ロシアとも厳しく対峙(たいじ)する二正面、三正面外交は日本の国家としての体力を大きく損なう。日韓、日露関係を良い方向に転換させることは腰を据えた対中外交のためにも必須の条件だ。

 むろん、竹島が歴史的にも国際法上も日本固有の領土であることは今後も国際社会に向かって主張し続けるべきである。旧日本軍の元従軍慰安婦問題でも日本のこれまでの取り組みを説明していく努力がいる。日韓の認識の違いは容易には埋まらないが、これらの問題で日韓関係全体が壊れることのないよう双方の新指導者の大局的な外交判断を望みたい。

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