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2012年12月22日(土)付

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原発と活断層―科学者の仕事つらぬけ

青森県にある東北電力東通(ひがしどおり)原発の敷地内にある断層について原子力規制委員会は「活断層の可能性が高い」と判断した。全員一致の見方だという。[記事全文]

日本郵政―このまま上場は心配だ

日本郵政のトップ人事が波紋を広げている。斎藤次郎社長が任期半ばで退任し、坂篤郎副社長が昇格した。旧大蔵省(現財務省)の元「大物次官」から、同じ役所の後輩への交代である。[記事全文]

原発と活断層―科学者の仕事つらぬけ

 青森県にある東北電力東通(ひがしどおり)原発の敷地内にある断層について原子力規制委員会は「活断層の可能性が高い」と判断した。

 全員一致の見方だという。

 同じ地層を見ながら、なぜ原発建設前やその後の調査で確認できなかったのだろうか。

 これまでの国の審査がいかにずさんで、検査が電力会社まかせだったか、改めて考えさせられる。

 活断層の調査は、関西電力大飯原発(福井県)、日本原子力発電の敦賀原発(同)に続く3例目だ。電力会社にはいずれも厳しい評価が続いている。なかには「委員や専門家が反原発派で占められている」との恨み節さえ聞こえる。

 だが、評価にあたった専門家たちは、日本活断層学会などが推薦する候補のなかから、電力会社との利害関係を調べたうえで選ばれた中立な人たちだ。

 現地での調査や評価会合もすべて公開し、透明な手続きを経ての判断である。政府も民間も重く受けとめるべきだ。

 電力会社や原発立地県の知事は「科学的根拠はどこにあるのか」と反発している。経営難に陥りかねないことや、地域の経済への心配が背景にある。

 それはそれで考えるべき重要な課題だが、安全への判断をまげる理由にはならない。

 経済的利害をおもんぱかって科学側が遠慮すれば、規制行政への信頼は崩壊する。3・11の大震災と原発事故を経験した私たちが、これから決して見失ってはいけない反省だ。

 今後、電力会社や地元からの反論が出れば、規制委は公開の場で立証を求めればよい。

 どちらの見方がより合理的なのか、科学的な議論を尽くすことが基本だ。

 問題は、規制委人事が政争や総選挙のあおりで、今なお国会の同意を得ていないことだ。

 自民党の一部には、規制委の人選を「正式承認を得ていない民主党人事」とみなして、政権交代を機にやり直すべきだとの声があるという。

 しかし、政党の思惑で委員を入れ替えていいはずもない。

 独立性の高い国家行政組織法3条に基づく委員会にするよう求めたのは自民党だ。不当な政治介入は許されない。

 規制委は、重大な事故がおきた場合の放射性物質の拡散予測で訂正をくり返した。そんな未熟さもある。とはいえ、交代を考えるほどではない。

 与野党が協力して、次の国会で規制委人事への同意手続きを速やかに済ませるべきだ。安全判断の仕事は山積している。

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日本郵政―このまま上場は心配だ

 日本郵政のトップ人事が波紋を広げている。

 斎藤次郎社長が任期半ばで退任し、坂篤郎副社長が昇格した。旧大蔵省(現財務省)の元「大物次官」から、同じ役所の後輩への交代である。

 元民主党代表の小沢一郎氏に近い斎藤氏は、自民党との関係がよくない。第1次安倍内閣で官房副長官補を務めた坂氏にスイッチして、政権交代を無難に乗り切り、2015年秋に予定される株式上場の準備を急ぐ算段のようだ。

 しかし、新政権発足前の「政治の空白」を突いたかのような交代劇に、さっそく自民党幹部から批判があがっている。

 日本郵政は政府が100%の株式を持つ。しかも、上場という民営化の本番に向けた大切な人事であり、7兆円と見こまれている上場益は復興財源に回される。

 政権交代後に、政府とも協議し、民間人も含めた候補から人選するのが筋だ。元大蔵官僚によるたらい回しでは、民営化の趣旨にも沿わない。

 懸念される点は、ほかにもある。子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命の新規業務をどう認めていくかという問題だ。

 上場に向け収益性を高める必要はあるが、民間とくに中小金融機関との公正な競争をはかる必要がある。

 今年4月の郵政民営化法の改正で、お目付け役の民営化委員会も一新された結果、新規業務への参入が弾力的に認められるようになった。学資保険の新商品に続き、住宅ローンなど融資業務への条件付き参入も容認され、あとは金融庁が銀行法などに基づく認可を出すだけだ。

 だが、かんぽ生命への検査で10万件に及ぶ保険金不払いが見つかるなど、日本郵政の管理体制に問題が浮上している。

 管理レベルが低いまま新規業務を拡大し、株式上場へとなだれ込むことは、のちのち大きな問題を招きかねない。

 金融庁は、日本郵政の金融機関としての実力を厳正に見極めてほしい。

 株式上場による財源確保を優先して、収益力の強化に配慮しすぎれば、政府による業績テコ入れと疑われる。郵政がいくら「暗黙の政府保証」はないと否定しても、民間の懸念は深まるだろう。

 その点で、子会社2社の株式を完全売却する期限が、民営化法改正で消えたままなのも問題だ。政府の影響力が温存されることは不信を招く。2社の上場スケジュールも早く明らかにすべきだ。

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