自民党が政策集に掲げた政府主催の「竹島の日」式典、見送りも
自民党の安倍総裁は、韓国の大統領選での朴槿恵(パク・クネ)氏の当選を受け、額賀元財務相を韓国に特使として派遣することを明らかにした。
これにあわせて、自民党が政策集に掲げた政府主催の「竹島の日」の式典については、見送る可能性を示唆した。
ぎくしゃくした日韓関係は、双方の新しい政権の下で「リセット」となるのか。
21日夕方、地元・山口県で会見に臨んだ自民党の安倍総裁は「竹島がわが国の領土であるというのは、これは不動の日本の考えであります」と述べ、竹島は日本固有の領土であるとあらためて主張した。
安倍総裁は「この日(2月22日)にですね、島根県においては式典がございます。別途、国として、式典を行うべきかどうかということについては、それは今後、総合的によく検討していきたいと」と述べた。
2005年、島根県が制定し、式典を開催してきた竹島の日。
この日は、2月22日で、朴槿恵氏の大統領就任式の3日前にあたる。
自民党の政策集には、「2月22日に政府主催で竹島の日を祝う式典を開催する」と明記されている。
自民党の石破幹事長は「いつやるか、どのような状況でやるかということは、いろんな判断要素がございます」と述べた。
政府主催の式典の開催は、見送られる可能性が高まっている。
日本政府が式典を開催した場合、韓国政府関係者からは、安倍総裁を就任式に招待するのが難しくなるとの見方も出ていた。
島根県民からは「見送った方がいいかもしれないね。慌てて片方がいきり立ってやるのも、これはきっとよろしくないですよ」、「今、開かない方がいいんじゃないですか。かわったばかりで、ちょっと都合が悪いんじゃないですか」といった声が聞かれた。
島根県の溝口 善兵衛知事は「新政権におかれて、早期の領土権確立に向けてしっかり対応をしていただきたいと。日本の新政権、韓国の新政権、双方、努力をされるということを私どもとして、期待をしておると」と述べた。
時を同じくして、まもなくスタートする日韓の新政権。
安倍総裁の友好的な関係を目指す気の早い思いが、空振りする事態が起きた。
安倍総裁は21日朝、額賀元財務相を特使として、21日中に韓国に派遣し、朴氏に親書を渡す考えを示した。
安倍総裁は「額賀さんに、韓国を訪問してもらおうと、その際、わたしの親書も持っていっていただきたい」と述べた。
しかし、結局、日程の都合で、派遣は来週以降に先送りされることになった。
日本の外交関係者からは「接戦の大統領選挙が終わったばかりで、日韓関係は一つ間違えると怖いし、会うなら準備もあるでしょう」といった声が聞かれた。
20日の会見で、竹島問題やいわゆる従軍慰安婦問題を念頭に、日本をけん制したとみられる発言を行った朴次期大統領。
朴次期大統領は「正しい歴史認識を土台に、北東アジアの和解・協力と平和が拡大するよう努力する」と述べた。
韓国国防省が21日に発表した国防白書では、島根県の竹島について、「地理的、歴史的、国際法的に明白な大韓民国の領土である独島に対して、軍は強力な守護の意志と、準備体制を確立している」との記述を初めて明記したうえで、これまで1枚だった写真を3枚に増やすなど、領土や歴史認識をめぐる日韓の溝は、なかなか埋まらない状況となっている。
韓国国防省は会見で「独島(竹島)に対して、わが軍の独島(竹島)守備意識と、確固たる対備態勢維持を明確にする表現と写真を追加掲載した」と述べた。
しかし専門家は、「ともにリーダーが変わる今こそ、ぎくしゃくする日韓関係を立て直すチャンスだ」と話している。
キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦研究主幹は「彼(李明博大統領)が竹島に上陸をしたわけですから、その意味で、彼がいる間、なかなか話をしにくいわけですけど、彼に代わって、今度は朴槿恵さんが大統領になる。ここが一つのきっかけになると思うんですね」と話した。
オバマ大統領との間で、首脳会談の早期開催に向け、調整することで合意するなど、政権発足を前に、早くも進められる安倍外交。
宮家研究主幹は、アメリカ・韓国と連携を進めることが、尖閣諸島をめぐって対立する中国との関係を改善する糸口となる可能性があるという。
宮家研究主幹は「アメリカとしっかりと安保・同盟関係を確認をする、そして韓国ともちゃんと話ができるんだよと、こういう日米韓の連携が整うような形で、中国側と話をしていけば、それは中国に対する非常に強いメッセージになり得る」と話した。
ぎくしゃくした外交関係のリセットを急ぐ一方、新政権の閣僚人事も着々と進める安倍総裁。
21日、新たに、川口元外相、小渕元少子化担当相、稲田朋美氏の3人の女性議員の入閣を検討していることがわかった。
閣僚人事をめぐっては、谷垣前総裁の入閣が固まり、法相などを軸に検討されている。
さらに、石原前幹事長、林元防衛相、茂木前政調会長、そして下村元官房副長官と山本一太元外務副大臣の入閣が固まり、また、副総理兼財務相に内定した麻生元首相が、金融担当相を兼務することも固まった。