安倍氏が政治、経済全般について信頼しているのは保守派の論客として知られる八木秀次・高崎経済大教授(憲法学)。氏によると安倍総裁は、「まずは経済」という考えであり、3年3カ月の民主党政権を経験した国民に、安倍政権になった良さを実感してもらうことに全力を投じる構えとのことです。
八木氏の提言ももちろん、「国民の気持ちを前向きにするためにも大胆な経済、金融政策が必要」ということであり、組閣についても「閣僚経験者を並べるなど重厚な布陣にし、国民に安心感を持ってもらえるようにすべきだ」になります。安倍総裁もそれを受け入れると見て間違いないでしょう。
マスコミは当然、憲法改正に興味を持ち、「右傾化」などを問題視するでしょうが、憲法改正が具体的に俎上に上げるには参院で3分の2の議席を確保してからのこと。八木氏は急がないよう提言したと思われます(これは私の予測です)。この点から言えることは、憲法問題については当面触れず、来年の参院選を第一に考えた政策運営を行う。こうなります。
その結果はやはり経済面で成果を上げることであり、具体策としては、すでに安倍総裁が選挙前にぶち上げた「脱デフレ策」として、インフレターゲットを2%に設定、公共投資の拡大などは必ず実行するでしょう。この点についてブレーンとなっているのは、小泉政権時代に大蔵省理財局資金企画室長であるとともに内閣府参事官、つまり小泉政権の政府側経済ブレーンであった高橋洋一氏です。
同氏は現在嘉悦大学教授、かつて安倍政権が誕生した時、ブレーンとして残るよう依頼された人物で、その後は08年から在野、そして現職にありますが、維新の会の経済ブレーンでもあり、政治家からの信頼の厚い経済学者として知られています。理論の根幹は財務官僚だった体験、実績に基づくもので、日本には650兆円もの国民資産があり、それを財務省は隠していると暴いたことでもよく知られています。それだけに財政拡大主義者であり、
(1)日銀による直接国債の引き受け
(2)インフレ目標2%の設定を
(3)増税なき復興を
(4)天下り法人全廃を
(5)歳入庁を作れ
このような主張をしているのです。安倍新政権がどこまでこれを受け入れるか未見ながら、すでにインフレ目標2%の設定は実現方向にあり、今後も高橋氏の意見が受けられる可能性が高いといえます。それにいまはまだ漠然とした予想の範囲ではありますが、麻生元首相を財務相にとの見方があります。正直、個人的には大丈夫なの? と言いたくなりますが、麻生氏にも当然ブレーンがいて、その一人に三橋貴明氏がいるのです。
三橋氏は在野にあってネットなどで経済について情報を発信し続けていて、その人気は驚異的といえるほどです。そんな三橋氏と麻生氏は懇意ですが、三橋氏の考え方も高橋氏と非常に似通っているのです。そして麻生氏は安倍総裁のお友達。こうなるともう安倍新政権の経済政策がどんなものになるか明らかです。
積極財政への転換、それにより社会インフラを整備(=公共投資)、日銀にはさらなる緩和を要請から、要求に転じるさらに白川総裁の任期が切れる4月からは政府寄りの新総裁を選ぶ。こうなるでしょう。株式市場はそれらをある程度読み取って動いている最中ながら、いまは底流に変化が生じはじめたところであり、年明け以降、来年はそれがさらに強化され、本格化していくと見てよいでしょう。
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▓ 北浜 流一郎
株式評論家。週刊誌記者、作家業を経て株式アドバイザーへ転身。20年以上にわたって儲かる個人投資家を育て続ける。
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