「もともとアジア新興市場への興味があり、スタートアップアジアの案内を見た瞬間に、反射的に応募していた」と青木は言う。もう1つ、今年新たに提供を始めるパノプラザの新機能の存在も大きかった。
カディンチェは、iPhoneやiPadなどiOS向けの書籍販売プラットフォーム「iBooks」のコンテンツにパノプラザを利用したバーチャル画像を組み込めるよう改良、すでに試作版が完成していた。これを、アジアのIT関係者を前に披露したかったのだ。
パノプラザは現時点でもスマホ・タブレット端末のブラウザ上で動く。ただ、青木は「今後、iBooks上でカタログやパンフレットなどを配布する動きが強まる」と踏んでいる。そのカタログやパンフレット内にバーチャルショップを組み込み、さらに購買まで消費者を誘導できれば強力なマーケティングツールに成り得る。
サービスにより磨きをかけるため、バーチャルショップのフロアや売り場ごとの音声情報を入れ、より臨場感あふれるサイトを提供できる技術も開発。3月から本格的に提供を始める。
ネット通販の導線はパソコンからスマホ・タブレット端末へと大きく移行する――。そのうねりが来る前に「すでにここまでできるんだ」という技術力を、青木はいち早く、アジアにアピールしておきたかった。電子教科書やガイドブックなどにもパノプラザの需要は見込める。
「プレゼンでは、iPadを利用して視覚に訴えたので、大きなインパクトを与えることができた。高級デパートや観光地案内にも使えると現地投資家から声がかかった。端末の普及や通信インフラが進む日本で技術力を蓄え、アジアで一気に広げていきたい」。青木はこう振り返る。
■試される日本のネット企業の底力
カディンチェのターゲットは、LINEや7notesなどの「BtoC」市場とは違い、企業を相手とした「BtoB」市場。しかし、スマホ・タブレット端末上でのBtoCが盛り上がるほど、その裏を支えるBtoBにも大きなビジネスチャンスが広がる。カディンチェにとっての海外展開はまだこれからだが、青木は「3年以内にシンガポールやインドネシア、マレーシア、中国などで20社との契約を取りたい」と期待を込める。シンガポールでの経験は、その大きな一歩となった。
スマホやタブレット端末向けのアプリやコンテンツは、アップストアやアンドロイドマーケットという世界共通の基盤で流通している。審査がアンドロイドよりも厳しいとされるアップルのiOSでは、アプリやコンテンツの審査が下りないといったリスクもつきまとう。
しかし、そのリスクを補って余りあるチャンスが、その向こうの何億台というスマホやタブレット端末に広がっているのも事実。今度こそ、この大波に乗って大海原へとこぎ出せるか。日本のネット企業にとっての剣が峰となる1年が始まった。
(電子報道部 井上理、杉原梓)
人気記事をまとめてチェック >>設定はこちら
スカイプ、エバーノート、7notes、LINE、フェイスブック、VoIP、ネイバージャパン、ツイッター、NHN Japan、mixi、mobage、ジャストシステム、ソニー、MetaMoji、アップル、iPhone、iPad、iOS、Android、アンドロイド
各種サービスの説明をご覧ください。
・100%国産 ファナック
・アズジェント、サイトへの不正文字列入力を監視する米社製機器発売
・KYB、市販向け車用緩衝器販売数75%増 海外に専用ライン
・カシオ、Gショック出荷、北米で3割増
・大成建設、地方にエンジニア 生産装置の設計・改修…続き