「スカイプやViberを使っているのはITリテラシーが高いユーザー層。スタンプ機能はインスタントコミュニケーションの極みであり、幅広い層に受け入れられた。台湾から取材に訪れた記者は『スカイプやViberにはないスタンプが一番いい。これがクールなんだ!』と、興奮しながら話していました」
舛田はこう説明する。香港では「LINEのスタンプを顔マネ」するテレビ番組が放映されたこともある。ちなみに当初は中国語圏での利用を想定しておらず、中国語の規約がなかったことから、一時期、中国語圏のアップストアからLINEが消える事態となった。この時、香港の一般紙が1面でこの事件を報じるほど、LINE人気は過熱しているという。もう1つのヒット要因は「フェイスブック疲れ」だと舛田は話す。
■「日本からフェイスブックが生まれるかもしれない」
「フェイスブックは実名制に意味があるという一石を投じた一方、1つの顔じゃないといけないというプレッシャーを与えた。多面的な顔を出せない場になりつつあり、そこに潜在的な不満が生まれた。対してLINEは、『そうじゃないんだよ。人にはいろんな顔があるのは当然』という考え方。例えば中学ではオタクだったけど、大学ではチャラ男になった場合、それぞれのグループは絶対に交わってはいけない。数百人の友達と平均的につきあうのは無理がある」
LINEは電話帳の電話番号、つまり既存の関係性をベースに友達関係を構築していく。その中で、さらにプライベートで閉じたグループを作り、グループ内の全員で音声通話やチャットを楽しむこともできる。よそ行きの1つの顔に疲れたユーザーに、「グループによって違う顔を使い分けてください」というメッセージが受けたという分析だ。
アップストアのレビュー欄などに自分のIDをさらし「絡んで」などと投稿する一部ユーザーがいることから、LINEは「出会い系」と言われることもあった。だが舛田は「LINEの設計は『出会わない系』。出会い目的の利用は著しく少ない。電話帳に埋もれていた高校の先生と再会することはあっても、IDをさらさなければ見ず知らずの人とつながることはない」とする。
スマホブームの機を逃さず、スマホに最適化した設計と閉じたコミュニケーションで海外約850万人を含む1500万人を獲得したLINE。今では「12年末まで、世界で1億ユーザー」という意欲的な目標を掲げる。「グーグルやフェイスブックのようにユーザーを大量に獲得すれば、ビジネスモデルは後からついてくる」。そうもくろむLINEの開発陣は、広告の実装や有料でユーザーに販売する「キャラクタースタンプ」など、いくつかの収益化策の検討に入った。
「日本発のアプリで世界が変わるかもしれない。日本からフェイスブックが生まれるかもしれない」。その舛田の言葉が絵空事とは思えないほど、LINEはスマホが日本のネット企業にかつてないチャンスをもたらしていることを証明したといえる。
■和製「手書き文字入力アプリ」、世界123カ国へ販路拡大
スマホやタブレット端末向けのアプリ市場は、流通経路がアップストア、アンドロイドマーケットという強力な市場に限られる。「そこでのランキングさえ上がれば、海外でも波及も早い」と舛田も言う。海外への販路が一気に拓(ひら)ける「スマホ・タブレット」の普及は、長年IT業界に身を置き、パソコンの日本語入力文化を支えた人間にも活力を与えた。
ワープロソフトの「一太郎」や日本語変換ソフトの「ATOK」で有名なジャストシステム。その創業者である浮川和宣は、2度目の創業となるベンチャーでスマホ・タブレット端末向けの新たなソフトを開発。世界市場の開拓をもくろんでいる。
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