地方国立大学から大都市圏にUターン就職できるのか

2012/12/17 Mon (No.930)

 地方国立大学に進学すると地元で就職できないのではないかと心配される大都市圏の保護者の方が多いと思いますが、実際には結構Uターン就職は多いのです。昨日紹介した滋賀大学経済学部のデータがありますのでご紹介します。(出典 「滋賀大学ホームページ」http://www.econ.shiga-u.ac.jp/9/res.0/shozaichi2012.pdf)
 
 それによると大阪府出身者の大阪での就職割合は17/38、京都府では20/51、兵庫県では17/40、滋賀県では36/75となっています。

 一番就職者が多いのは、出身の都道府県だということがおわかりになると思います。滋賀大学経済学部は地方国立大学のうちでも中堅上位大学に入ります。ですから就職先にも大企業が多く見られます。地方国立大学であれば、たとえ難易度が高くなくても、中堅以下の私立大学より就職面で門前払いされることは少ないといえます。

新しい大学教育の試み

2012/11/25 Sun (No.908)

 新しい大学の試みとして、先の甲南大学のように早くから特定の分野の専門教育を重視する方法と、はじめは専門教育にとらわれずさまざまな領域の学問分野をのぞいた上で学部や学科を決定する方法、とがあると思います。

 学問領域の深化によって、専門教育も時間がかかるものとなってきています。おそらく学部4年間では一般教養も履修すると、専門知識の修得には時間が足らないのだろうと思います。しかし、私立大学では経済的負担もあり、できるだけ4年間でスペシャリストを養成しなければならないのでしょう。それが、甲南大学が専門教育重視のカリキュラムを採用する学部を設立したことともつながるのでしょうか。実際に見学したところ、異なる電子顕微鏡3台や磁気共鳴装置、多くの実験装置などの優れた設備、学生と教師のあいだが近い研究室など教育環境は整っています。

 一方で、最近の国公立大学では、専門分野にとらわれず学際的な教育を重視するところが増えてきています。たとえば金沢大学や大阪府立大学で行われている学域・学類制度は、従来の学部・学科を越えた幅広い知識の修得を可能にしています。また北海道大学の総合入試の形態は、そもそも学部選択は教養課程を修了してからとなります。国公立大学では、大学院進学率が高く、大学院進学を前提に6年間で専門教育をおこなうことができます。

 私立大学理系に6年間在籍すると授業料だけで900万円、国公立大学では320万円と学費の差も大学院進学率の差となります。

定員超過大学への補助金

2012/11/09 Fri (No.891)

 昨日は、定員を充足できない学部に対しての財政面のペナルティを述べましたが、定員超過の大学・学部に対しても財政的ペナルティが課せられます。定員が超過すると、必要な大学施設も不足するようになり、また教員一人あたりの学生数も増加して教育の質が低下します。下の図をご覧下さい。(出典 昨日と同じ)

定員超え

 大学全体の収容定員に対して在籍学生数が40%以上(大学規模8000人以上)超過すると「一般補助」は不交付になります。また、学部に対しても、医歯学部以外では、入学定員に対して入学者数が 25%以上(大学規模8000人以上)超過すると不交付となります。

定員割れの大学への補助金

2012/11/08 Thu (No.890)

 文部科学相によって不認可と判断された3大学の新設が、急遽方針変更されて認可されました。審議会で認可が答申されていた大学なので、当然のことだと思います。ここ20年ほどの間に、大学設置基準が緩和され、定員を充足できない大学が増加するとともに大学生の質も低下しました。大学設置基準を見直すことは必要だとは思います。

 定員を充足できない大学に対しては、現在でも財政面でペナルティが与えられていることはご存じでしょうか。日本私立学校振興・共済事業団は、国から補助金の交付を受け、それを私立大学等経常費補助金として私立大学に交付しています。補助金は経常的財政基盤に必要な「一般補助」と大学の特色ある取り組みを支援する「特別補助」に分かれます。

 「一般補助」は教職員数、学生数を基準に、定員の充足率に応じて調整されており、定員割れの大学では、学部(医歯学部をのぞく)の定員充足率(在籍学生数/収容定員)に応じて次のように減額されます。下の図をご覧下さい。(出典 「私立大学等経常費補助金配分基準」平成24年2月 私学振興事業本部)

大学定員割れ

 5月1日現在で定員充足率が50%以下の学部に対しては、「一般補助」は原則不交付となります。

北陸地方の大学の底力

2012/11/05 Mon (No.887)

 今日、「大学通信11月1日号」がファックスで送られてきました。大学通信の調査によると、全国を10地域にわけた地域別就職率のトップが「北陸」で82.7%の高い数字となっているとのことです。昨日、高校の就職率が高いのも北陸とのデータをお示ししましたが、大学でも北陸が最も高い就職率となっています。

 北陸地方の大学の就職率がなぜ高いのかについて、大学通信は、「従来の伝統産業・地場産業やアルミ精製などに加えて、最新の電子・コンピュータ産業も他地方から流入してくるなど、都市の規模に比べて産業活動が活発」であり、「地元での就職以外を選ぶ場合、東京・名古屋・大阪がほぼ同じような距離で、各地から就職情報が集まる」ほか、「共稼ぎ率が高いことに象徴されるように、勤労に対する価値観も労働意欲も高い県民性」があると述べています。また「個々の大学がお互いに切磋琢磨試しあい、適切な就職支援活動を何年も前から実施していること」を「何よりも大きな要因」として挙げています。

 北陸地方というと、面倒見がよく、高い教育力を誇る「金沢工業大学」がわたしたち進路関係者の間では、高い評価を得ています。それ以外にも多くの大学が競い合っていることも承知しています。そこで本当に北陸の大学がそんなに就職実績がよいのか、わたしなりに『大学の真の実力』のデータにあたってみました。その結果、就職先についてはもう少し調べてみる必要があるにせよ、驚くことに近畿の関関同立をしのぐ就職率を上げている私立大学が数多く存在します。下の表をご覧下さい。

北陸進路決定率

 わたしの以前のデータと比較できるように、工学部と経済学部のみの表です。この表にある私立大学は、難易度でいうと産近甲龍よりも易しい大学です。しかし就職率・進路決定率とも近隣の国立大学に引けをとりません。くわえて北陸の国立大学もよく宣伝活動を行っています。11月11日に金沢大学・富山大学・福井大学・石川県立大学が京都で合同進学説明会を行います。

<追記>北陸星稜大学の名前が間違っているとのコメントをいただきました。ここに訂正させていただきます。コメントどうもありがとうございました。

国際系学部の進路決定率

2012/10/22 Mon (No.873)

 大学ごとの進路決定率を紹介してきましたが、今日は国際系の学部の進路決定率を見てみましょう。表は『大学の真の実力』のデータをもとに作成しています。カッコのなかは学部名をあらわします。現在、同志社大学にグローバルコミュニケーション学部、関西学院大学に国際学部、関西大学に外国語学部がありますが、まだ卒業生は出ていません。

国際系

 大学入試の難易度や就職率が、必ずしも大学の優劣をあらわすものとは思いませんが、大学入試の難易度と就職率との間にはどうやら相関関係があるようです。

女子大学の進路決定率

2012/10/20 Sat (No.870)

 昨日お話ししたとおり、関西の女子大学と外国語大学の進路決定率について述べてみます。下の表をご覧下さい。出典は昨日と同じです。

12進路決定率1

 これを見ると、女子大学の進路決定率(就職率)もいいことがお分かりいただけると思います。女子大学でもキャリアセンターの努力で、産近甲龍なみの就職率となっています。ただ女子大学の場合は、一般職への就職も多くなります。小さい大学ながら、神戸女学院大学の就職率も非常にいいです。わたしの友人の配偶者が勤めていますので、少しゴマをすっておきます。

 これに対して2つの外国語大学の就職率は、際だってよい、というわけではありません。英語などを使って活躍するなら、関関同立の外語系の学部の方が有利のような気がします。

 とはいえ就職率だけが、大学の価値を表す指標ではありません。自分の生き方を大学で見つけて、既成の職業や職場にとらわれない創造的な卒業生も存在することを忘れてはいけません。

定員割れの私立大学の特徴

2012/09/29 Sat (No.848)

 文部科学省によると、平成23年度入試で定員割れを起こしている私立大学は、全大学の42%となる239大学あります。そのうち定員の50%を満たせなかった大学が24大学、50-75%の大学が81大学、75-100%の大学が134大学となります。私立大学は歩留まり率を考慮しながら、合格者数を決定するので、実際の合否を決定する実質志願倍率は、志願者数を募集人員で除した名目志願倍率よりかなり低いことが多いです。それにもかかわらず、前記の定員充足率50%未満の大学では名目志願倍率でも0.9倍、50-75%の大学では1.3倍となっています。ですから、昨年度の募集要項で名目志願倍率が1.5倍以下の大学は最終的に定員を充足していない可能性もあります。

 定員を充足できなかった大学の特徴として、推薦入試とAO入試での入学者数の割合が高いことが上げられます。たとえば定員充足率50%未満の大学では推薦入試とAO入試での入学者数が全入学者数に占める割合は76.7%、50-75%の大学では67.3%となっています。それゆえ一般入試での入学者の割合が高いほど人気のある大学だといえるでしょう。

 ただ、これらの数値は、それぞれの区分での定員充足率に該当する大学の平均値ですので、志願倍率が低いけれども人気のある大学、推薦入試の割合が高いけれど人気のある大学は存在します。とくに関西では、公募制推薦入試の割合が高く、学力試験もあるので、推薦入試入学者の割合が5割程度の大学の中にも優秀な大学が多数存在します。

大学選びの情報入手先

2012/07/29 Sun (No.785)

 大学新聞社が、3月から6月にかけて開催した「大学入試・入学説明会」の会場で来場した高校生を対象にした意識調査のなかで、「学校選びの情報入手先」としてあげられたものの第1位は「大学のウェブサイト」で、次に「担任の教員」「進路指導室」と続きます。わたしの高校での同様の調査でもっとも多いのは「オープンキャンパスの雰囲気」なので、この調査結果には、少し意外な気がしました。下のグラフをご覧ください。(出典 「大學新聞」7月10日号)

大学選び

 ただ大學新聞では、オープンキャンパスにおける注目点についての質問もあるようなので、回答項目の中に「オープンキャンパスへの参加」が含まれてなかった可能性もあります。東京や大阪など大都市圏では、大学の数も多く、簡単にオープンキャンパスに参加できますが、地方の高校ではそうはいかないのかも知れません。

 大學新聞(同上)によると、オープンキャンパスで高校生が重視する点は大学の「施設(21.2%)」や「雰囲気(14.1%)」で、「大学教員との相談(5.8%)」や「在学生との相談(6.6%)」はあまり重視されていないとのことです。

行きたい大学を探そう

2012/07/26 Thu (No.782)

 進路について高校生は深く考えていません。たとえ高校3年生でもです。進学校であれば周りが進学するから進学し、就職校であれば周りが就職するから就職する、という風潮があります。4年制大学に進学する場合でも、地元の大学、名前の知っている大学だけが進学先の候補になることも多いです。

 夏休みになっても、夏期講習の合間に生徒が進路指導室を訪れます。まずわたしが聞くことは、「どこか考えている大学はあるの」「どうしてその大学に行きたいの」ということです。その大学・学部で、自分のやりたいことが明確になっており、他の大学との比較がきちんとできておれば、難易度にかかわらず志望校としてふさわしいと思います。ただその大学1校しか見ておらず、志望動機も曖昧であるなら、もっと視野を広くもつことが必要です。生徒には結構思いこみがあって、少し視点をずらしてあげることによって柔軟な選択ができることもあります。同じような分野の勉強ができる大学の何校かを一緒に探し、大学案内を調べ、オープンキャンパスに行くように勧めます。自分で大学を調べる手始めには、「逆引き大学辞典」が役に立つ情報源です。志望校の決定はおそくともはこの夏休みがリミットです。

 早く受験から解放されたいと思って、生徒が安易な選択をしている場合もあります。そのような場合は、もし自分がその大学に通っているとして、周りの学生があまり勉強しないような環境でも大丈夫かとか、就職の時には苦労するかも知れないよ、といった話をします。

 就職に関しては、「関関同立」とそれ以外では有意に差があるように感じています。大学院への進学では、「国公立大学」と「私立大学」で有意に差があります。ですから、自分にとってどうしてもこの大学でなければならないという明確な理由がない場合は、できるだけ学生の質の高い、すなわち難易度の高い大学を目指した方が、将来の自分にとって有用です。まだ、時間は十分あります。「行ける大学」ではなく「行きたい大学」を目指して頑張っていきましょう。
 

プロフィール

Author: 進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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E-Mail: shinroroom@gmail.com

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