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東通原発の断層 正式評価の会議へ
12月20日 5時8分

東通原発の断層 正式評価の会議へ
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青森県の東通原子力発電所の断層を評価する、国の原子力規制委員会の専門家会議が、20日に開かれます。
「断層が活断層の可能性がある」と判断されると、福井県の敦賀原発に次いで2例目となり、東通原発は当面運転が再開できなくなる可能性があります。

原子力規制委員会の島崎邦彦委員と専門家の合わせて5人は、東通原発で今月13日から2日間調査を行い、敷地を南北に貫く「F-3」という断層など4本の断層を中心に調べました。
調査後の会見では、断層が活断層の可能性が高いという見解や、断層周辺にある地層の『ずれ』については、東北電力の「地層の一部が水を吸って膨らんだ影響で出来たものだ」という説明に、否定的な見方が示されました。
20日の会議では、専門家4人がそれぞれの見解を説明することになっていて、「断層が活断層の可能性がある」と判断されると、今月10日の敦賀原発に次いで2例目となります。
東通原発では、敦賀原発と異なり、今回調査した断層はいずれも真上に原子炉などの重要施設はないとされていて、「活断層」と判断されても廃炉になる可能性はありませんが、東北電力は、敷地に活断層があることを想定して、耐震対策を根本的に見直すことが必要になり、当面運転が再開できなくなる可能性があります。
規制委員会の専門家会議は、大飯原発については活断層かどうかの結論に至らず、関西電力に追加調査を指示した一方で、敦賀原発については、「原子炉の真下を走る断層が活断層の可能性がある」と判断し、2号機は運転再開できずに廃炉になる可能性も出てきています。
規制委員会の現地調査は、来月以降に福井県の美浜原発や、石川県の志賀原発など3か所でも予定されています。

東北電力主体の調査内容に疑問

東北電力の東通原発が運転を開始したのは、国内で3番目に新しい平成17年12月でした。
建設が許可された平成10年の段階では、東北電力は、「敷地内には活断層はない」と評価し、国もこの内容を認めてきました。
しかし、おととし行われた国の審議会の部会で、専門家から「活断層ではないと判断するにはデータが足りない」、「東北電力の説明には考えにくい点がある」といった指摘が相次ぎました。
このため、東日本大震災後の去年11月、当時の国の原子力安全・保安院は追加の調査を指示し、東北電力は地面を掘って断面を見るトレンチ調査などを新たに行い、ことし3月、改めて「活断層ではない」とする見解をまとめました。
ところが、原子力規制委員会が先月、現地調査に参加する専門家を集めて開いた会議では、「東北電力が説明する内容は似たようなケースがほかになく、矛盾が多い」、「地層の断面のスケッチや年代が分かる資料が必要だ」といった指摘が相次ぎ、東北電力が主体になって行われてきた、これまでの断層の調査に疑問が投げかけられました。

“断層は活断層か”焦点に

東通原発の断層を評価する20日の専門家会議の焦点は、現地調査で注目された断層が活断層と判断されるかどうかです。
原子力規制委員会の島崎邦彦委員と専門家の合わせて5人は、今月13日から行われた現地調査で敷地を走る断層4本を調べました。
このうち「s-14」という断層の周辺では、断層を境におよそ90センチにわたって「地層のずれ」が確認されました。
断層の周辺で見つかった地層の「ずれ」について、島崎委員は調査のあと、「敷地を南北方向に走るF-3断層やF-9断層が動いた影響だ」と述べ、断層が活断層の可能性が高いという見解を示したほか、専門家も活断層の可能性を相次いで指摘しました。
また、東北電力が「ずれ」について「地層の一部が水を吸って膨らんだ結果、出来たものだ」と主張していることに対し、専門家は「説明に無理がある」、「つじつまが合わない」など否定的な見解を示しました。
20日の専門家会議では、こうした指摘を踏まえて、東通原発の断層が活断層と判断されるかどうかが焦点です。

活断層なら耐震対策見直し必要

断層が活断層だと判断されると、東通原発では、福井県の敦賀原発とは異なり廃炉の可能性はありませんが、東北電力は今後、耐震対策を根本的に見直すことが必要になります。
国の指針では、活断層の真上に原発の重要な施設を設置することを認めておらず、敦賀原発では2号機の真下を通っている断層が活断層の可能性があると判断されたため、運転再開ができず、廃炉になる可能性が出てきました。
これに対し、東通原発では、東北電力が「F-3」断層が敷地を南北に貫いていることや、「F-9」断層が原子炉建屋の南西およそ200メートルまで延びていることを確認していますが、原子炉や重要な施設の真下を通っていないと説明しています。
このため、断層が活断層だと判断された場合でも廃炉の可能性はありませんが、東北電力は今後、敷地に活断層があることを想定して、耐震対策を根本的に見直すことが必要になり、当面運転が再開できなくなる可能性があります。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、19日の記者会見で、「東通原発は敦賀原発のように重要な施設の下に断層があるわけではなく、一度に結論が出る話ではない」と述べたうえで、規制委員会の対応について、「新しい安全基準が出ないと判断の根拠がないので、基準が出てから判断する」と述べ、東通原発について専門家会議が判断をしても、その後の規制委員会としての最終的な判断は、来年7月に原発の安全基準が出来てから決める考えを示しています。

問われる規制委員会の対応

東通原発では、沖合の断層も調査の必要性が指摘されているほか、活断層と判断した場合、電力会社の反発なども予想され、規制委員会の対応が問われています。
東通原発では、敷地の断層のほかにも沖合7キロにある長さおよそ84キロの海底断層、「大陸棚外縁断層」に注目が集まっています。
20日の会議に参加する、東京大学地震研究所の佐藤比呂志教授は、現地調査のあと、「核関係の施設がある下北半島周辺で、地震を起こす断層の調査がもっと行われるべきだ」と述べています。
青森県の下北半島には、東通原発のほかにも使用済み核燃料の再処理工場や建設中の大間原発などもあり、敷地外の調査の必要性は規制委員会も認めています。
また、敦賀原発では、断層が活断層の可能性があるという判断に対し、事業者の日本原子力発電が、「十分な説明がなされておらず、理解に苦しむ」として、規制委員会に公開質問状を提出したほか、地元自治体から「科学的根拠を示してほしい」という意見が出ました。
これについて、規制委員会の田中委員長は、「敦賀原発は厳しい判断になるかもしれない。
公開質問状については科学的にデータに基づいて議論を尽くせば、どちらが正しいかはある程度明らかになる」と述べ、科学的な根拠で判断する姿勢を強調しました。
また、田中委員長は、「地元の要求は科学ではないので、そこは考慮しない。
基本は政治や地元の意見からの独立で、そういうものに左右されていては『安全規制』は成り立たない」と述べて、独立した判断をする考えを示しました。
東通原発でも、今後規制委員会の専門家会議の判断によっては、東北電力の反発なども予想され、規制委員会の対応が問われています。

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