特集ワイド:西新宿から4キロ2時間、「素人の乱」デモに参加した 「再稼働反対、再稼働反対!」鳴りやまないシュプレヒコール
毎日新聞 2012年07月04日 東京夕刊
◇自然発生だから広がる
◇言葉も交わさず醸される共感、楽しい感じに集う人々 視線の6割は好奇か好感
関西電力が大飯原発3号機の原子炉を再起動した1日、東京・新宿で催された「原発やめろ野田やめろ」デモに参加した。日曜日の夕方、あいにくの雨だったが、西新宿から歌舞伎町まで約4キロを2時間かけて歩くと、予想外の「発見」があった。【藤原章生】
「再稼働反対、再稼働反対!」。気に入った曲のフレーズのように、原稿を書いている今も、耳の奥でシュプレヒコールが鳴りやまない。ドイツ語辞典で調べると、シュプレヒコールとは演劇用語で大人数が朗読、朗唱することを指す。思想家の柄谷行人(からたにこうじん)さん(70)はデモを「動く集会」と解釈したが、「歩く合唱」と言った方が似合いそうだ。
主催は松本哉(はじめ)さん(37)。自身が営む東京・高円寺の雑貨店の名を使い「素人の乱」と名乗り、東日本大震災のあと5回呼びかけてきた。柄谷さんや社会学者の大沢真幸さん、法政大教授の田中優子さんら9人が賛同人に名を連ねる。私も趣旨に共鳴したので、取材だが家族で参加することにした。
午後4時、集会場の新宿中央公園に行くと、雨のせいか人は2000人ほどだ(主催者発表は8000人)。松本さんがマイクを握る。「世の中全体は『原発なくせ』なのに、6月8日の会見で野田(佳彦首相)は『原発は国民生活に重要な電源』と元に戻した。人のこと何も聞いてないんじゃないか? あんな態度されたら怒るでしょ? 今回は反原発だけでなく、変なこと言うヤツを引きずり下ろすため、『ふざけんじゃねえ』と民衆の怖さを見せつけてやりましょう!」